フィリピン経済の現場から、緊迫する物価高騰の実態を報じる。ミンダナオ地方の経済中心地であるダバオ市トリル地区のペトロン給油所で観測された燃料価格の推移は、この国の市民生活がいかに過酷な状況に置かれているかを鮮明に物語っている。


その他の写真:ダバオ市ペトロン 給油所、2026年5月28日撮影

 わずか10日間で軽油価格が大幅上昇 ガソリンとの歪な価格差

 ダバオ市トリル地区の同一ペトロン給油所において、5月18日と5月28日の燃料価格を比較すると、現在のフィリピンが直面するエネルギー市場の不安定さが浮き彫りになる。ガソリン価格がわずかに値を下げた一方で、物流と公共交通の命綱である軽油が異常な上昇を見せている。

 5月18日と5月28日の価格比較データ

 軽油(Diesel MAX)
 5月18日:75.40ペソ
 5月28日:83.20ペソ
 変動:+7.80ペソ(大幅上昇)

 ガソリン(XTRA Advance)
 5月18日:79.00ペソ
 5月28日:77.60ペソ
 変動:-1.40ペソ(微減)

 プレミアムガソリン(XCS)
 5月18日:80.00ペソ
 5月28日:78.60ペソ
 変動:-1.40ペソ(微減)

 ※価格はすべて1リットルあたりのフィリピンペソ。

 注目すべきは、わずか10日間で軽油価格が1リットルあたり7.80ペソも上昇した点である。ジプニーや食料品を運ぶ大型トラックのほとんどは軽油を燃料としており、この急激なコスト増は即座に社会全体の物価高へ直結する。

 最高値からは下落も 2026年1月年初との比較に見る異常性

 世界的なエネルギー危機を背景に、フィリピン国内の軽油価格は一時120ペソから160ペソという驚異的な歴史的高値を記録した。その最悪期に比べれば、現在の83.20ペソという水準は一見すると落ち着きを取り戻したかのように錯覚されやすい。

 しかし、危機本格化前の2026年1月の年初価格と比較すると、その切迫度が浮き彫りになる。

 軽油価格の推移

 2026年1月(年初):50~60ペソ台前半(平穏な水準)

 2026年4月頃(ピーク):120~160ペソ(歴史的最高値)

 2026年5月28日(現在):83.20ペソ(最高値から下落も年初比+20ペソ以上)

 つまり、最高値から下がったとはいえ、年初比で依然20ペソ以上高止まりしている。

 生活基盤を直撃するインフレ 終わりの見えない庶民の耐乏生活

 給油所では今日もタンクローリーが燃料を補給し、女性従業員らが忙しく給油作業を続けている。しかしその日常の裏で、市民の経済状況は限界に達している。軽油価格の高止まりは、ミンダナオ地方の農場からダバオ中心部へ運ばれる野菜や米などの輸送コストに直結し、庶民の食費を激しく圧迫している。


 ジプニードライバーは一日の売上の大部分を83.20ペソの軽油代に奪われ、家族を養う生活費が残らないと悲鳴を上げる。政府による燃料補助金など一時的な支援策も、乱高下と高止まりの前では焼け石に水であり、フィリピン社会の現場は出口の見えない慢性的な物価ショックに引きずられ続けている。
【編集:Eula】
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