ワールドカップ開幕を目前に控え、まるで壮大な"番宣"を見せられているかのような試合だった。

 日本代表は、ワールドカップ前最後の親善試合を行ない、アイスランド代表に1-0で勝利した。

 壮行試合と位置づけられた一戦は、試合前には人気アーティストによるプレショーが行なわれ、スタンドにはコレオグラフィー(人文字)が浮かび上がり、試合途中には吉田麻也の功労を称えるセレモニーが行なわれ、試合が終わると、森保一監督と遠藤航キャプテンがスピーチし......といった具合で、とにもかくにもさまざまな企画が盛りだくさんだった。

 史上最強の呼び声とともに、ワールドカップでの躍進を期待される日本代表にふさわしい門出、なのだろう、きっと。

 そのこと自体に、とりたててケチをつけるつもりはない。サッカー人気を上げることは日本代表の重要な任務であり、ワールドカップを多くの人に見てもらえるに越したことはないからだ。

 試合のほうも、ルール上限(11人まで選手交代が可能)の22人の選手が順繰りに顔を見せたうえで、勝利という結果で終えることができたのだから、ワールドカップへ向けた機運を高めるという意味で言えば、大成功のイベントだったのかもしれない。

 だがしかし、森保監督は試合前日、「一緒に世界に挑もうと思ってくれる人が増えるように、内容にこだわりたい」と話していたが、肝心の試合内容はどうだったのか。そんな視点で振り返ってみると、かなり低調で退屈なものだったというしかない。

「こういう試合もある。崩れず最後に得点を奪って勝ちに持っていく。ワールドカップ前のいい予行演習になったのかなと思う」

 森保監督自身、そんな表現を用い、直截的なダメ出しこそしなかったが、満足できる試合内容でなかったことは、会見中の言葉の端々にうかがわせた。

 それなりのプレー強度を保ち、アイスランドを圧倒することができたのは、試合開始から吉田のセレモニーが行なわれるまでのわずか10分あまり。その後は、まだシーズンが終わったばかりの海外組がお疲れモードなのか、ケガをしたくないという気持ちが強かったのか、なんにせよ緩慢な対応が目立った。

 結果、ボールは両チームの間を行ったり来たりで、それなりにチャンスもピンチもあったという意味では、ハラハラする展開になったのかもしれないが、率直に言って、試合はかなり緩かった。

「ワールドカップに向けて、チーム全体のコンディションを上げることを狙いのひとつと考えている」

 アイスランド戦前日、森保監督はそう語り、所属クラブで出場時間が短かった、あるいはケガが多かった選手をより多く起用することを明言していたが、その点についても、多くの収穫は得られなかった。

ワールドカップに挑むサッカー日本代表の壮大な「番宣」の裏で....の画像はこちら >>
 なかでも足首のケガから復帰したばかりの遠藤は、本調子に程遠く、まだまだ復調途上の冨安健洋にしても、往時を知ればこそ、強く物足りなさを感じさせるプレーに終始した。

 南野拓実、三笘薫をケガで失ったことで生じた左シャドーの後釜探しも、これといった解決策は見つかっていない。

 もちろん、他のポジションから選手を移してやりくりすることは可能だろうが、左シャドーに伊東純也を使えば、右サイドの攻撃バリエーションが減ってしまうし、中村敬斗を使えば、左ウイングバックはどうするのか、という問題が生じてくる。

 また、ともにアイスランド戦で本職とは異なるポジションで起用された、後藤啓介と瀬古歩夢にしても、ソツなく役割をこなしてはいたが、裏を返せば、彼らをあえて本職外で使うことのメリットも特段感じられなかった。

 たとえば、かつてのオリンピックのように、登録メンバー18人で最大6試合を戦わなければならないとなれば、多少のポジションの融通は利かせなければならないだろう。しかし、現行のワールドカップでの登録メンバーは26人。単純計算でひとつのポジションにふたりずつ(GKのみ3人)を配置したうえで、さらに3人を加えられる数である。

 にもかかわらず、大会が始まる前からスクランブル的な選手起用を見せられると、そもそも適正なメンバー選考が行なわれたのだろうか、と心配になってしまう。

 過去のワールドカップを振り返ると、日本代表は大会前の下馬評が高いときほど結果が悪く(グループリーグ敗退)、むしろ批判にさらされているくらいのときのほうが好結果(決勝トーナメント進出)を残している、というのは、よく知られたジンクスである。

 と同時に、下馬評が高いときには、たいていその陰で敗因の芽が膨らんでいるものだとは、のちに指摘されてきたことである。

 言うまでもなく、日本代表は強くなっている。今の日本代表にとって、目標はグループリーグ突破ではない。選手たちが公言する優勝はともかく、客観的に見てもベスト8進出は妥当、かつ現実的な目標だろう。

 だとすれば、日本が弱かった時代のジンクスを持ち出すこと自体がナンセンス。もはや時代は変わった。これほどヨーロッパで活躍する選手が数多くそろった日本代表は例がなく、過去のチームとはレベルが違うのだ。

 そう言ってしまえば、そうなのかもしれないし、そうであってくれればいい。

 だが、連日鈴なりのファンが取り囲む落ちつかない環境で練習をし、企画盛りだくさんの壮行試合をしている日本代表を見ていると、どうも不安が頭をもたげてくるのである。

 そこに漂う空気は、2006年や2014年に感じたものとよく似ている。

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