スマホ決済の普及で大流行している「ポイ活」。買い物のたびにポイントが貯まり、まとまった数になるとほしいものと交換できる。
■個人データの行方は誰も知らない
「ポイントとは、企業から見れば顧客をつなぎ止めるための“販促費”に過ぎません。企業は利益を確保するためには、経費を削って当たり前。要は販促費がポイントに化けたんです。あまり、そんな不確かなものに依存しないほうがいいと思いますけどね」
ファイナンシャルプランナーとして、長く家計管理や個人投資に携わってきた深野康彦氏は、現在のポイント市場の過熱ぶりを、企業の財務的な視点からそう一喝した。
前編で本誌は、ポイ活にハマるサラリーマンたちが、最終的に徒労感しか残らなかったことを紹介した。この「経費削減」のマクロな変動に、ミクロな個人という存在が翻弄された結果にすぎない。逆に企業は、かつて投じていた莫大な広告費をポイントに変換し、いまのところはみごとな効果を上げてきたともいえよう。
そして、深野氏がまず目を向けるのは、楽天経済圏を筆頭とする「巨大経済圏」のルールの書き換えだ。
「かつてのポイント経済は、潤沢な販促予算を投じた会員獲得フェーズにありました。しかし、近年の楽天のSPU(スーパーポイントアッププログラム)条件の変更に見られるように、明らかに利益回収のフェーズへと移行しています。モバイルユーザー対象ですが、楽天はすでに、楽天市場内で特典を受けるためのエントリー制を設けています。そういった制限がどんどん増えていくでしょう」
サービス側がルールを厳格化すれば、ユーザーが以前と同じ恩恵を得るためには、より多くの時間や複雑な工程が必要になる。
「ポイントという『目に見える端数』に執着するあまり、ポイ活が目的化してしまっています。本来、家計管理とは支出の総額を把握し、無駄を削るためにあります。ポイントのためにカードを何枚も保有するなんて、本末転倒です。また、ポイントというのはあくまで疑似通貨に過ぎないのに、対価として企業に個人データを提供しなければならない。それがいったい、どのように利用されるのか、誰も知らないんです」
そう警告する深野氏は、ポイ活ゲームやPayPayポイント運用にも厳しい視線を向ける。
「副業を意識しての『小遣い稼ぎ』という以上、時給に換算すれば数十円が実態なら、極めて安価な労働力の提供にほかなりません。企業はポイントをばらまくように見せかけ、ユーザーの個人情報や、もっとも貴重な資産である時間を安く買いたたいているんです。さらに、それをPayPayのポイント運用に回し、年間20万円以上の利益が得られたなら、給与所得者の場合、本来は雑所得として確定申告が必要になるでしょうね」
いずれにせよ、資産形成と呼ぶには、あまりに不安定な方法だろう。
■生活が企業の販売戦略に取り込まれる
そして、ポイ活経験者が感じた「徒労感」の正体を、深野氏は「コスト感覚の麻痺」だとあっさり断じる。
「コンビニでポイントを貯めるために、スーパーで安く買えるものをわざわざコンビニで買う。そんな馬鹿げたことが横行していますよね。わずか数ポイントのために、数十円の損失を許容しているわけです。ビッグデータからユーザー心理を読み解き、企業側はじつに適切なタイミングで、クーポンやポイントアップを提示してきます。後藤さんがTikTok Liteのログインを日課にするように、日常の些細なすき間時間を、企業のアルゴリズムに差し出すことが習慣化してしまっている。生活そのものが、企業の販促戦略に取り込まれているんですよ」
こうしたヒートアップ状況に対し、前編では、ポイ活アナリストの菊地崇仁氏が防衛策として「50%・70%のパワーセーブ」を提唱している。これに、深野氏も同意する。
「菊地さんが言うように、あふれかえる情報の100%を追おうとすれば、どこかでほころびが出る。まとまったポイントほしさに、周囲に入会を勧めるなんて言語道断で、人間関係すらおかしくしてしまう。まずは情報の半分を捨て、管理をシンプルにしたほうが賢明です。ポイント付与条件が厳しくなったなら、そこでそのサービスはいさぎよく、あきらめる。
企業の経営判断でルールが変わった際、それに追従して自分の生活をさらに複雑化させるのは、愚の骨頂だ。自分なりの“引き際”を設けてポイントとつき合わなければ、その奴隷になってしまう。最後に深野氏は、こう言い切った。
「ポイントは、あくまで“おまけ”。それが生活の目的になった瞬間、じつは必要以上の支出を迫られている。ユーザーががんばればがんばるほど、企業側は販促費を抑えながら、効率よくデータを吸い上げられる。そういうカラクリのなかに、消費者は取り込まれているんです」
3兆円という巨大なポイント市場を支えるのは、少しでも得をしたい個人の執着をたくみにすくい上げる、企業側が策定したアルゴリズムだ。だが、この仕組みが生活の隅々にまで浸透している以上、もはや誰も無関係ではいられないのだ。
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