セクシー女優、そして作家として唯一無二の存在感を放つ紗倉まなさん。最新作『あの子のかわり』で紗倉さんが挑んだのは「妊娠・出産」というテーマでした。


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 30代を迎え、周囲の変化や自身の職業観と向き合う中で芽生えた葛藤、そして母親との関係性から見えてきたものとは。インタビュー前編では、作品に込めた想いと、女性たちの間に横たわる、見えない「分断」について聞いていきます。

「産む」ということが非現実的だった

紗倉まな、30代の出産ラッシュで感じた“不安”明かす「産まなかったらこの家でひとりで…」
紗倉まなさん
――新刊『あの子のかわり』で「妊娠・出産」というテーマを選んだ動機をあらためてお聞かせください。

紗倉
:もともと妊娠や出産って、積極的に書きたいテーマではなかったんです。小説って、どうしても自分と重ねて読まれてしまう可能性が高くなるので、作品として読んでもらいやすくするには、限りなく自分から離れたキャラクターのほうがいい、と考えていた時期もありました。

『あの子のかわり』は、最初は短編の形でスタートしたのですが、担当編集者さんから、「もっと読んでみたいです。内容を膨らませてみてください」と背中を押されたことが、長編として深く掘り下げるきっかけになりました。

──長年一緒に仕事をしてきたマネージャーさんがご出産されるなど、身の回りにも出産ラッシュがあったそうですね。

紗倉
: そうなんです。30代に入って、親友やマネージャーさんなど、身近な人たちが相次いで出産したり、すぐに産まなくても卵子凍結を検討する人もいたりして、「やはり女性として生きていく上では、避けられないテーマなのかな」と思うようになったのも大きかったですね。

ただ、これはちょっと暗い話なんですが、私個人の話でいえば、AVの仕事をしていると「産む」ということが、どこか非現実的で、産んだ後に投げかけられる言葉を想像しただけでも、その気概すら削がれてしまうこともあって。

「もし産んだら自分はどんなことを思うのかな」「子どもを産まなかったら、私はこの家でひとりで死んでいくのかな」とか、そういうことをぐるぐる考え始めたら、もう朝方になっていた……やばい寝よう……ってなったこともあります(苦笑)。

「きれいな傷だな」母の帝王切開の跡と、驚愕の本音

紗倉まな、30代の出産ラッシュで感じた“不安”明かす「産まなかったらこの家でひとりで…」
紗倉まなさん
紗倉:妊娠・出産をテーマにする上では「母親」という存在も切り離せませんでした。うちの母親、私を帝王切開で生んでくれたんですが、手術の途中で麻酔が切れたらしくて、お腹の皮膚がびよ~んと広がっている光景を目にしたらしいんです。


「お医者さんに『麻酔切れました~!』と言ったら、すぐに麻酔打たれて、あなたが生まれたのよ」なんて話を昔からしてくれていたので、母のお腹の傷を見るたびに「きれいな傷だな」と思っていました。私がこの世に出た証、意味のある傷なんだなって……。そういった、母を介して思うこともこの作品を書く大きな原動力になっていましたね。

──紗倉さんといえば、お母様もテレビに一緒に出演されたり、AVの仕事を公認されていたり、「何でも話せる仲良し親子」といった印象があります。

紗倉
:そう思ってもらえたらホッとするんですが、私、自分でも「母に対して手厳しいな~」と思うことが多いんです。

うちの母はお酒が大好きで、よく酔っ払いながら話すんですけど、「子どもを産んでよかったなって思う。あなたと会いたかったし、なによりも子育ても楽しかったから!」と最初は「いい話だな~」と思いながら聞いていたんです。

でもその後、「あなたは私にとって、もう親みたいな存在なのよね。いざ私の身になにかあっても、面倒見てくれるしありがたいわ」といった、ひどく利己的な発言が飛び出して、その場でひっくり返ってしまいましたね(苦笑)。

当の本人は酔っ払っているので、まさかそんなことを言ったなんて覚えていないと思いますが、それを聞いて、「自分が母になったらこうなるのではないか」「自分のように親を厳しく見る娘が生まれたら、同じように思われるのではないか」と考えると、余計複雑な気持ちになってしまって……。

私自身、これまで母の理想通りの娘を突き通し続けてあげられなかったし、一抹のうしろめたさみたいなものを感じて生きてきました。しかし、年齢を重ねる中で、かつて「面倒を見てもらう側」だった自分が、少しずつ「面倒を見る側」に関係性が逆転しつつある。


子どもを産むって、「出産したら終わり」じゃなくて、こういった親子関係性の変化まで含めたものなんだな、とあらためて感じています。

犬は「子どものかわり」になるのか?

紗倉まな、30代の出産ラッシュで感じた“不安”明かす「産まなかったらこの家でひとりで…」
紗倉まなさん
──主人公の由良は、まるで我が子のように愛犬を育てていますよね。今や子どもの数より、犬や猫の飼育頭数のほうが多い時代ですが、ペットを育てることは、「子どものかわり」にはならないのでしょうか?

紗倉
:私もこの数年、犬と暮らしていますし、深い愛情を持って世話をしているので、「育てる」という点では、本質は同じなんじゃないかなと感じています。

ただ、現実問題としては、出産を経験した人たちの間には、その経験をした人しか入れない「組合」みたいなものがあるように思えるんです。出産特有の肉体的な痛みや苦しみ、そして産後の「身体の変化あるある」といった共通体験によって結ばれた、目に見えない強い連帯、みたいに、勝手に眩しく見つめているだけなんですが……。

──この本にも、産休から復帰したばかりの女性が、出産後の体型の変化を男性から揶揄される場面がありますね。見るにみかねた主人公たちが、男性をたしなめようとしたものの、体型を揶揄された当の本人は「なんせこっちは子ども産んだんだからね!」と、「ダイエットや美容を気にするような未産婦とは違う」と、いわばマウントとも感じられる切り返しをする場面は、痛烈でした。

紗倉
:もちろん、こういった壁は産んだ側からだけじゃなくて、産んでいない側が過剰に作り出してしまう面もあるように思えます。

「自分たちは産んでないから」と変に意地を張ってしまったり、産む人との差をみずから自虐的に強調してしまったり。そうなると結果的により強い拒絶感や分断を生んでしまいかねませんよね。女性は、どうしてもライフステージによって、関係性が変化していくことがあると思います。それも長い人生では「仕方ない」と思う反面、なんとも言えない寂しさを感じるのも事実。


ただ年上の方からは、「いずれ子育てが落ち着けば、鮭が川に戻るようにまた元に戻るよ!」なんて話も聞いたりするので、今は疎遠になってしまっても、いつかまた関係性を再構築できる日が来ると、今は信じて待っています。

紗倉まな、30代の出産ラッシュで感じた“不安”明かす「産まなかったらこの家でひとりで…」
紗倉まなさん


紗倉まな、30代の出産ラッシュで感じた“不安”明かす「産まなかったらこの家でひとりで…」
紗倉まなさん


<取材・文/アケミン 撮影/星亘>

【アケミン】
週刊SPA!をはじめエンタメからビジネスまで執筆。Twitter :@AkeMin_desu
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