「Paradi Show(パラディショー)」は、日本人の悠子さんとアメリカ人のビルさんの国際結婚カップルと、3人の息子さんたちの日常を発信する人気YouTubeチャンネルです。

アメリカ育ちの長男があえて「日本の大学」を選んだワケ。日本人...の画像はこちら >>
 長男のカイくんが「日本の高校に通いたい」と希望したことから、2021年に悠子さんと3人の息子さんたちは日本に移住。
ビルさんは仕事の都合でアメリカに残ることになりました。

 2025年のインタビューでは、長男のカイくん、次男コビくんが日本の高校受験に挑戦した経緯が、大きな反響を呼びました。
 そして今年、カイくんは日本の大学に合格を果たしました。しかし、その道のりは決して平坦ではなかったといいます。カイくんは帰国生入試制度を使うことができず、日本の高校生たちと同じ土俵で受験に臨むことになったからです。

 昨今、「これからは海外大学を目指せ」という声も聞かれるなか、アメリカ育ちのカイくんが、なぜ日本の大学進学を選んだのか。元小学校教諭でもある悠子さんに、大学受験の舞台裏を聞きました。

アメリカ育ちの長男が、日本の大学に行きたかった理由

アメリカ育ちの長男があえて「日本の大学」を選んだワケ。日本人の母が明かした当時の心境「正直ショックでした」
アメリカ在住時代。大好きな石をコレクションしていたカイくん
――カイくんが、日本の大学を志望したのはなぜだったのでしょうか。

悠子さん(以下、悠子):高3の夏頃までは、アメリカの大学への進学を考えていました。アメリカの大学受験は、日本とは違い、高校の成績や、継続的なボランティアやスポーツの実績、複数の指導者からの推薦状が重要です。カイがその準備をしているうちに、通っている高校で受験対策の夏期講習が始まりました。周りのみんなが受験モードになっていくなかで、カイは『自分はこれで本当にいいのかな』と感じるようになったのだと思います。

――日本の大学とアメリカの大学では、入学後の生活も大きく違うといいますね。


悠子:カイが日本の大学を選んだ理由は、そこが1番大きいかもしれません。アメリカは高校まではラクですが、大学は別物。成績が悪ければ容赦なく留年させられるので、常に必死に勉強しなければ卒業できません。

一方で、日本の大学生には自由な時間がたくさんあるイメージですよね。カイも高校の先生から「日本の大学は楽しいぞ」と聞いたみたいなんです。その言葉が、頭の片隅にあったのだと思います。

カイは、中学3年生で日本に移住してから、慣れない環境で高校受験に挑戦し、入学してからは授業についていくために格闘する毎日でした。あっという間に今度は大学受験。本人も「俺、勉強ばっかりで日本の生活全然楽しめてないじゃん」と言っていました(笑)。だから、大学4年間はもう少し日本の生活を楽しみたかったんじゃないかな。物理が大好きで、将来は研究をしたいと言っているので、博士課程はアメリカの大学を目指すつもりでいるようです。

――カイくんが日本の大学を受験することを決めたとき、悠子さんはどう思いましたか?

悠子:正直にいうとショックでした。
というのも、カイがアメリカの大学へ進学したら、家族全員でアメリカにいる夫の元に戻って暮らすというプランが何となくあったからです。でも、カイが日本に残ったら海を隔てて離れ離れになってしまいます。

ただ、本人の決めたことは応援したいし、もっと日本の素晴らしさを味わってほしいという気持ちもありました。大学についても、知名度や偏差値よりも、物理を勉強するのに特化した大学で、同じものを好きな人達に囲まれて過ごしてほしいと思っていました。だから、日本で希望に合う志望校が見つかったのはよかったと思います。

帰国生の受験はラク?

アメリカ育ちの長男があえて「日本の大学」を選んだワケ。日本人の母が明かした当時の心境「正直ショックでした」
アメリカで暮らしていたときの自宅。子どもたちには日本語の勉強もさせていたそう
――カイくんが、大学受験で帰国生入試(海外経験を生かす入試制度)を利用しなかったのはなぜですか?

悠子:大学によって条件は違うのですが、カイの志望校は、アメリカの高校に2年以上在籍し、3年生までの課程を修了していないと帰国生入試が利用できなかったんです。カイは中学3年生から日本に移住したので、条件に当てはまりませんでした。

その点は、YouTubeのコメント欄でも、「アメリカの高校を修了してから日本に来たら、帰国生入試が使えたのに」「子どものことを考えてない」と指摘する声がありました。

私自身、帰国生入試で大学受験することを想定していなかったので、「制度のことをもっと調べていたら良かったのかな」と落ち込みました。日本に移住したときは、息子たちが子ども時代を日本で過ごせるように、「なるべく幼いうちに連れてきてあげたい」という思いが強かったんです。

――カイくん自身は、どう感じていたのでしょうか。

悠子:本人は、帰国生入試は使いたくないと思っていたみたいです。高校受験は帰国生入試だったので、「みんなが5教科を勉強していたのに、自分は3教科で入学した」という後ろめたさがあったようなんです。
だから、大学受験はみんなと同じように受けたいと言っていました。

――帰国生入試といっても、中3までアメリカで生活していたカイくんには大変だったのではないでしょうか。

悠子:日本語は日常会話ができる程度だったので、語彙力も少なく、読み書きに相当苦労していました。

さらに、入学した高校が進学校だったので、日本の優秀な子たちについていくために努力が必要でした。高2の終わりまでにすべての範囲を履修するので授業の進度が早く、古典なども苦戦していたようです。理系なのですが、カイは試行錯誤するのが好きで暗記が不得意なので、公式を覚えるのも苦手。見ていて歯痒くなるくらい、苦労しながら勉強していました。

親世代の「大学受験」との違い

アメリカ育ちの長男があえて「日本の大学」を選んだワケ。日本人の母が明かした当時の心境「正直ショックでした」
カイくん高校の卒業式にて。左から、ビルさん、カイくん、悠子さん
――カイくんは総合型選抜を受けたそうですが、いかがでしたか?

悠子:私の高校時代の推薦や選抜型の年内入試は、成績のいい子が選ばれて、小論文を書いたり、面接の練習をして合格みたいなイメージでした。でも今は全然違っていて「こんなにも勉強しないといけないのか」と驚きました。

カイの志望校の場合は、評定や志望理由はもちろん重要なのですが、面接だけでなく、筆記試験や、口頭試問(対話型試験)が行われました。対策をするために、高3の9月から総合型選抜に特化した塾に通い始めました。

――他にも、大学入試の変化を感じたことはありましたか?

悠子:昔は、募集枠の少ない年内入試は席の取り合いのようなギスギスした雰囲気があった気がするんです。どこの大学の推薦をもらったのか秘密にしないといけないような。


でも、カイが総合型選抜を受けることを同級生の子たちはすごく応援してくれていました。「カイには受かってほしい」と言ってくれて、本人も少し驚いたようです。これは、年内入試が増えた今の時代だからなのか、カイの学校の雰囲気がいいからなのか分からないのですが。私は、真剣に行きたい大学を目指して努力する環境があるからこそ、応援し合えるのかなと感じました。

――総合型選抜では、勉強以外の活動や実績をアピールすることが多いですが、カイくんの場合はどうでしたか?

悠子:学校の勉強と部活で手一杯だったので、ボランティアに取り組んだりすることはできませんでした。面接で頑張ったことを聞かれたときは、部活動のことを話したそうです。テニス部に入って、いいお友達ができたことで頑張れたと言っていました。

大学受験で「親の出る幕」はない?

アメリカ育ちの長男があえて「日本の大学」を選んだワケ。日本人の母が明かした当時の心境「正直ショックでした」
カイくんの大学入学式にて
――高校受験と大学受験では、親の役割の違いはありましたか?

悠子:勉強は本人に任せるしかないし、願書や必要書類についても、学校の先生の指導に従って本人がやっていたので、私の出る幕はほとんどなかったです。書類の確認も学校の先生がサポートしてくださいました。

私が口を出そうとすると、「学校に聞くからいいよ。ママに中途半端に調べられても困る」と言われて、本当に用なしでした(笑)。ただ、本人の行動がギリギリなんです。
締め切り直前の深夜にやっと動き出すこともありました。

あるときは、締め切り前になって願書を印刷しようとしたら「自宅のプリンターでは出力できないからコンビニ行く」と言い出したことがありました。しかも、大事な模擬試験の前日だったんです。夜中の1時ごろだったので、車で送っていきました。

――他にも、心配事やハプニングはありましたか?

悠子:高3の9月から謎の咳に悩まされたことです。1か月以上続いて、そのうち咳をするあまり嘔吐するようになってしまいました。もちろん病院には行ったのですが、もらったお薬は効かず。次に別の内科を受診してもまったく止まりませんでした。

そんなとき、知り合いから「耳鼻科に相談してみたら」と言われたので受診したところ、そこで処方してもらったパッチ(肌に貼るタイプの処方薬)のおかげで、少しずつ治っていきました。

体調に気を揉んだり、車で送迎したり、私に手助けができたのは、それくらいだったなと思います。

<取材・文/都田ミツコ>

【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。
編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。
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