子どものためのイベントなのに、いつの間にか他の大人が主役になってしまった……そんな経験はありませんか? 今回は、そんな義母の暴走に振り回されてしまった女性のエピソードをご紹介しましょう。

「私がやったほうが豪華になる」と義母が大暴走

 ある日曜日。伊坂杏奈さん(仮名・35歳)は、長男の潤くん(仮名)6歳の誕生日会を自宅で開くことになっていました。


「潤が何日も前から楽しみにしていて、飾り付けも一緒に選びました。料理やケーキもリクエストしてくれて、家族みんなでお祝いする予定だったんですよ」

 数日前から親子で色紙を切ったり、ガーランドや恐竜の形の風船を飾ったりしながら、笑い合って準備を進めてきました。

 ところが当日の朝、招待していた義母がインターホンを鳴らすなり「地味すぎると思って飾りを買ってきたわ。それから、せっかくだから私の友達夫婦も呼んでおいたから」と、大きな紙袋を抱えて入ってきたそう。

「私も夫も、そんな話は一切聞いていなかったので面食らってしまって」

「地味すぎるわ」孫の誕生日飾りを勝手に外す義母。自分好みに作...の画像はこちら >>
 義母は家に入るなり杏奈さんたちが飾ったガーランドや恐竜の形の風船を次々と外して、自分が買ってきた豪華な生花を飾り始めました。

「私が『えっ、お義母さん? 潤が一緒に飾ったものなんですが……』と伝えても、『子どもは華やかな方が喜ぶのよ。それに人が多いほうがにぎやかで楽しいじゃない』とまともに取り合ってくれなくて」

 杏奈さんが困惑していても、義母は「綺麗でしょ? 高かったのよ」と笑うばかり。まるで自分以外の意見は最初から存在しないかのような態度だったそう。

誕生日会はいつの間にか義母の思い通りに

 さらに、用意していた料理を見て「これじゃ物足りないわね」とお寿司を追加注文し、キッチンでは勝手に煮物まで作り始めました。

 杏奈さんが前日から時間をかけて準備した料理は次々と隅へ追いやられ、テーブルには義母の好きな料理ばかりが並んでいきます。

「気づけば部屋の雰囲気も食卓も、最初に家族で思い描いていた誕生日会とはまるで別物になってしまって」

 それでも義母は満足そうに部屋を見渡し、「私がやったほうが豪華なお誕生日会になるんだから」と誇らしげに笑っていたそう。

「そしてケーキを囲んでみんなで歌を歌い終えると、義母は満面の笑みで潤に『どう? おばあちゃんが用意した誕生日会は最高でしょ?』と、潤に向かって完全に『ありがとう』待ちの質問を投げかけたんですよ」

孫が放った“ひと言”に部屋中が静まり返る

 その瞬間、潤くんは少し首をかしげると「うーん……これ、僕のお誕生日じゃなくて、おばあちゃんのお祭りみたい。恐竜の風船がよかった」と悪気のない表情で言ったそう。

 部屋が一瞬シーンと静まり返り、義母も目を丸くし、さっきまで浮かべていた自信満々の笑顔がみるみる固まっていきました。
招待されていた親戚も思わず顔を見合わせ、誰も言葉を発せません。

 子どもだからこそ、誰にも気を遣わず、本当の気持ちをそのまま口にできたのかもしれません。

「すると夫が『母さん、張り切ってくれたのはありがたいけど、今日は潤が主役だからね』と穏やかに伝えると、周りの親戚もうなずき始めました。義母も気まずそうに視線を落として、『ごめんなさいね。ちょっと張り切りすぎたわ』と謝ってくれたんですよ」

恐竜の風船が戻り、本当の誕生日会が始まった

 義母は自分が外してしまった飾りを袋から取り出し「これ、もう一度飾ろうか?」と照れ笑いを浮かべたそう。

「すると潤は嬉しそうに頷き、私たち家族みんなで一緒に飾り付けをやり直したんですよね」

 壁に恐竜の風船が戻ると、潤くんは満面の笑みを浮かべ「やったー! やっぱりこれがいい!」と大喜びしました。

「地味すぎるわ」孫の誕生日飾りを勝手に外す義母。自分好みに作り替えた結果…6歳孫の“ひと言”に絶句
※画像はイメージです
 その笑顔を見た瞬間、杏奈さんは「ようやく本当の誕生日会がスタートした」と心から感じたそう。

 少し遠回りにはなりましたが、最後は潤くんらしい笑顔があふれる誕生日会になりました。

「それ以来、義母は潤に恐竜グッズを買ってくるようになりました。やっぱり孫の喜ぶ姿がいちばんだと思ったみたいです」と微笑む杏奈さんなのでした。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。
好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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