連なる火山地帯の地下に金が集まる仕組みを解明、岩石が溶けるたびに濃縮されていた
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 海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む場所には、弧を描くように火山が連なっている。その地下の岩石には、海洋底の中央部にある海底山脈の岩石と比べて多くの金が含まれていることが知られている。

 だが、なぜそこに金が集まるのか、その理由は長年不明のままだった。

 ドイツのヘルムホルツ海洋研究センター・キール率いる国際研究チームが海底から採取したサンプルを分析した結果、地下深部の岩石が何度も溶けるたびに金が濃縮されていく仕組みがあることが明らかになった。 

 この研究成果は『Communications Earth & Environment[https://www.nature.com/articles/s43247-026-03338-w]』誌(2026年3月24日付)に掲載された。

金はなぜ火山が連なる「島弧」に多いのか

 地球上で採掘される金の多くは、火山活動が活発な地帯に集中している。

 特に金が豊富に存在することで知られているのが、海洋プレートが大陸プレートの下に潜り込む「沈み込み帯」の上に形成される、弧状に連なる火山の島々「島弧(とうこ)」だ。

 日本列島もこの仕組みで形成された島弧の一つであり、千島列島やアリューシャン列島なども同じ成り立ちを持つ。

 一方、海洋プレートが生まれる場所である各大洋の中央部には、中央海嶺と呼ばれる巨大な海底山脈が走っている。

 プレートはここで左右に引き裂かれながら新しい海底を作り続けており、火山活動は活発だが金はほとんど含まれていない。

 島弧の地下の岩石には、この中央海嶺付近のマグマと比べて多くの金が含まれていることは以前から知られていた。

 しかしなぜそこに金が集まるのか、その理由は長年にわたって不明だった。

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海底の火山性ガラスが示した高濃度の金

 ヘルムホルツ海洋研究センター・キールの海洋地質学者クリスティアン・ティム博士が率いる国際研究チームは、ニュージーランドの北東約1000kmの南太平洋に位置するケルマデック島弧と、その西隣に広がる海底の凹地であるアヴァル・トラフから、海底の火山性ガラスを66点採取して分析した。

 火山性ガラスとは、海底で噴出した溶岩が海水によって急速に冷却されて固まったガラス状の岩石で、当時のマグマの化学組成をそのまま保存している。

 分析の結果、これらのサンプルは岩石1gあたりに含まれる金の量が、海洋底の中央部を走る巨大な海底山脈である中央海嶺付近で採取された同種のマグマと比べて、数倍から最大6倍に達することが判明した。

 また硫黄と結びつきやすい性質を持つ銀・銅・セレン・白金といった元素の量も合わせて測定したところ、金と銅の比率も標準値を大きく上回っていた。

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岩石が何度も溶けるたびに金が濃縮されていく

 島弧の地下ではこれほど多くの金が含まれ理由を解明すべく、研究チームはデータの詳細な分析を進めた。

 その謎を解くカギは、島弧の直下で起きているマントルの特殊な溶け方にあった。

 マントルは地球の地殻の下、深さ約30kmから2900kmに広がる岩石の層で、固体でありながら非常に長い時間をかけてゆっくりと流動している。

 沈み込み帯では、海洋プレートが地球内部へ潜り込む際に大量の水を引きずり込む。

 この水がマントルに加わると岩石の融点が下がり、通常よりも低い温度で溶けやすくなる。

 マントル中の金は通常、硫黄と金属が結合してできた硫化物鉱物の内部に閉じ込められた状態で存在している。

 ケルマデック島弧の直下では、水を含んだマントルがこの硫化物鉱物の完全溶解温度を超える高温で溶けていることが確認された。

 その温度を超えると硫化物鉱物が分解し、内部に蓄えられていた金が一気にマグマの中へ放出される。

 さらにこの溶融が一度だけでなく何度も繰り返して起きていたことも明らかとなった。

 過去の溶融で金などの元素が一度抜け出した後のマントルが、再び高温にさらされて溶けることで、岩石1gあたりに含まれる金の量がさらに積み上がっていく。

 この繰り返される溶融プロセスが、島弧のマグマに異常なほど多くの金をもたらす根本的な原因だとティム博士らは結論づけた。

 「繰り返しの溶融があってこそ、金はマグマの中に高い割合で集積できる」とティム博士は述べている。

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金のありかは地球深部の営みが決めていた

 今回の研究が明らかにしたのは、金がどこに存在するかは地表付近の現象だけで決まるのではなく、マントルが沈み込み帯の直下で長い時間をかけて何度も溶融を繰り返してきた営みによってすでに決まっているという事実だ。

 これまで金鉱床の形成は地表付近の現象として理解されてきたが、そのきっかけははるか地球の深部から始まっていたことになる。

 この発見は、海底の沈み込み帯に存在する熱水性硫化物鉱床が、なぜ中央海嶺と比べて金を多く含むことが多いのかを説明する手がかりにもなる。

 ただしこの点についてはさらなる調査が必要だと研究チームは指摘している。

 「錬金術は、金属が地表に到達するはるか以前から始まっているのだ」とティム博士は語っている。

References: Hydrous multi-stage mantle melting controls gold enrichment in mafic Kermadec arc magmas[https://www.nature.com/articles/s43247-026-03338-w] / Alchemy in the Earth’s Mantle[https://www.geomar.de/en/news/article/alchemie-im-erdmantel]

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