コーヒーを飲む習慣は腸内細菌を変え、ストレスを軽減し気分を改善することが研究で明らかに
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 コーヒーを飲む習慣が腸内細菌の構成を変化させ、ストレスの軽減や気分の改善につながることを、アイルランドのコーク大学が研究で明らかにした。

 カフェイン入りでもカフェインレス(カフェインなし)でも気分改善の効果は共通して見られた。

 一方、記憶力の向上はカフェインレスに、不安感の軽減や注意力の向上はカフェイン入りにのみ確認されるなど、カフェインの有無によって働きに違いもあることが示された。

この研究成果は『Nature Communications[https://www.nature.com/articles/s41467-026-71264-8]』誌(2026年4月21日付)に掲載された。

コーヒーと腸内細菌の意外なつながり

 アイルランド南部のコーク大学に設置された世界トップクラスの腸内微生物研究センター「APCマイクロバイオーム・アイルランド」の研究チームは、コーヒーの習慣的な摂取が腸内細菌の構成を変化させ、脳や心の状態にまで影響を与えることを初めて包括的に解明した。

 コーヒーにはカフェインのほか、ポリフェノール(植物が持つ抗酸化物質)、メラノイジン(焙煎時に生成される褐色の化合物)など、多様な生理活性物質が含まれている。

 これまでの研究で、コーヒーの習慣的な摂取は2型糖尿病や肝疾患、心血管疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病といった慢性疾患のリスク低下と関連することが示されてきた。

 しかし、コーヒーがなぜ、どのように心身の健康に作用するのか、その仕組みは長らく明らかになっていなかった。

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2週間コーヒーを断つと腸が変化

 研究チームは、1日3~5杯を習慣的に飲むコーヒー常飲者31人と、コーヒーを飲まない非飲用者31人を対象に実験を行った。

 この摂取量は、欧州食品安全機関が一般的な成人にとって安全かつ適度な量として定義している基準だ。

 参加者はまず2週間、完全にコーヒーを断った。この期間中、定期的な心理テストと便・尿のサンプル採取を行い、腸内環境の変化を追跡した。

 すると、コーヒー常飲者の腸内では、代謝産物のプロファイルが非飲用者と比べて大きく変化していた。

 代謝産物とは、腸内細菌が食物を分解する過程で作り出す物質のことで、腸や脳の状態に直接影響を与える。

 コーヒーを飲むのをやめるだけで腸内の環境が変わり、コーヒーを再開すると特定の細菌が増加するなど、腸内環境がより良い方向へ変化することが確認された。

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コーヒーを再開したところストレス低下、気分向上を確認

 2週間後、参加者らに再びコーヒーを飲んでもらった。

 半数はカフェイン入り、残りの半数はカフェインレスを飲んだが、どちらを飲んでいるかは参加者に知らされなかった。

 先入観による影響を排除するための盲検試験と呼ばれる手法だ。

 カフェイン入り・カフェインなし両方のグループに共通して、ストレス・抑うつ・衝動性のスコアが低下したことを確認した。

 カフェインの有無にかかわらず、コーヒーを飲むこと自体が気分の改善をもたらしたのだ。

 コーヒーを再び飲み始めた参加者の腸内ではエッゲルテラ属菌やクリプトバクテリウム・カーツムといった特定の細菌が増加していた。

 エッゲルテラ属菌は胃や腸の酸分泌に関与し、クリプトバクテリウム・カーツムは胆汁酸の合成に関わる細菌で、どちらも有害な腸内細菌の増殖を抑える働きを持つ可能性がある。

 また、フィルミクテス門という細菌グループの増加も確認され、女性においてポジティブな感情との関連が報告されている。

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カフェインの有無で違う効果も

 一方、カフェインの有無によって異なる効果も明らかになった。

 記憶力や学習能力の改善はカフェインレスコーヒーのグループにのみ見られ、カフェイン以外のポリフェノールなどが認知機能に作用している可能性を示している。

 逆に、不安感の軽減や注意力・覚醒度の向上、炎症リスクの低下はカフェイン入りコーヒーのグループにのみ確認された。

コーヒーは腸と脳の両方に働きかける

 腸と脳は神経・免疫・ホルモンを介して双方向に情報をやり取りしており、腸の状態が脳の働きや感情に影響を与えることが近年明らかになっている。

 腸が「第二の脳」と呼ばれるゆえんだ。

 研究チームは今回、主観的な気分の変化だけでなく、バイオマーカーの改善も確認した。

 バイオマーカーとは、血液・尿・便などから検出できる生物学的な指標のことで、心理的健康との関連が知られる物質の変化を客観的に捉えられる。

 コーヒーの効果が自己申告による印象だけでなく、体内で実際に起きている変化として裏付けられたことになる。

 研究を率いたジョン・クライアン教授は、コーヒーは腸内微生物の働きや代謝産物の産生パターンを変化させる可能性があり、カフェイン入り・カフェインレスを問わず、補完的な形で健康に寄与すると述べている。

 健康的な食生活の一環として、コーヒーが腸内環境を整えるための選択肢になり得るという見解だ。

References: Habitual coffee intake shapes the gut microbiome and modifies host physiology and cognition[https://www.nature.com/articles/s41467-026-71264-8] / New research reveals mechanisms behind coffee’s positive effects on the gut-brain axis[https://www.eurekalert.org/news-releases/1124905]

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