安定的な皇位継承に向けた与野党協議が約1年ぶりに再開され、高市早苗首相らが「喫緊の課題」として皇室典範改正を急ぐ意向を示した。政府の前向きな姿勢は歓迎されるが、皇室史研究家の倉山満氏は「皇位継承問題」に関する一部の誤解を指摘する(以下、倉山氏による寄稿)。
「皇位継承問題」は悠仁殿下の次の世代の話
高市早苗首相も森英介衆議院議長も、「今国会で皇室典範改正を実現する」と宣言した。大歓迎である。この話、佳子内親王殿下が22歳の時に始まったが、はや9年。その間、政治が何も決められず、待たせていたことになる。今国会で決めても遅すぎるくらいである。
では、国会で何が話し合われているのか。「皇位継承問題」と言うと誤解があるが、今上天皇の後には秋篠宮家に受け継がれる儀式が行われている。次世代では、悠仁親王殿下が即位されることまでは決まっている。問題とされているのは、悠仁殿下の次の世代の話だ。
皇室は世襲である。お世継ぎづくりがすべてに優先する。
しかし、悠仁殿下にお子さまが生まれる保証など、どこにもない。だから、その未来に備えようという話をしているのである。
一部で勘違いがあるようだが、「悠仁殿下か愛子殿下か」の選択ではない。ここで愛子殿下の名を出すなど、大迷惑だ。アイドルの推し活ではあるまいし。
公称2686年の皇室の歴史はどうなるのか
悠仁殿下のお妃探し、お世継ぎづくりがうまくいき、そして悠仁殿下のお子さまがご無事に育てば、それで良し。そこまでいって初めて、ご先祖さまから受け継いだ皇室を、未来の子孫に受け継ぐことができる。しかし、悠仁殿下と未来の皇后陛下にすべてをお任せするのは、あまりにも心もとないし無責任だろう。何より、悠仁殿下のお妃(=未来の皇后陛下)に、女性週刊誌とSNSが猛バッシングをするのは火を見るより明らかだ。そもそも、こんな悪徳マスコミと不良SNSを野放しにしている環境で、お妃になってくれる方が現れるかすら、怪しい。
そもそも、悠仁殿下に何かあれば、神武天皇の伝説以来公称2686年の皇室の歴史はどうなるのか。現に悠仁殿下は、交通事故にも殺人未遂にも遭われている。
そこで悠仁殿下をお支えする皇族がいなければならないと、国会で議論をしている。
具体的にどのような内容、そして皇室典範改正案になるのか、要諦は先週号で解説しておいた。だから今週は、そもそも論を説く。
世の中には「アンケート調査を参考にして次の天皇を決めよう」などと軽佻浮薄な論を説く者がある。では、「天皇とは」「皇室とは」何なのか。そのアンケートに答えた者たちは、わかっているのか。
「天皇とは」「皇室とは」何なのか
皇室とは、天皇を中心とする家族である。天皇とは何か、三言で言える。第一、日本国の本来の持ち主。第二、日本で一番偉い人。第三、ただし、ほとんどの期間で一番強い人ではなかった。すなわち、日本とは何かを体現する存在である。第一の「本来の持ち主」とは、神話以来そう伝わっている。我が国の正史(正式な歴史書)である『日本書紀』に、そう書かれている。神話も含めて、すべて信じよとは言っていない。ただ天皇と皇室が、「いつの時代から存在するのかわからないくらい古い時代から日本にはいた」のは事実である。
第二に、神話、伝説から歴史となり、現代に至るまで、天皇は「日本で一番偉い人」であり続けた。現代でも、総理大臣を任命するのは天皇である。常に日本国の最高権威であり、政治の最高権力者は天皇から任命される。
ただし第三に、「一番強い人」ではなかった。むしろ、日本の歴史で天皇を凌駕する権力者など無数にいた。また皇室が、唸るほどの財産を持っていた時期も少ない。だからこそ、皇室は続いたと言える。権力が無いのだから取って代わる必要はない。むしろ、自分を権威づけてくれる。
天皇とは、本来の日本国の持ち主であり、一番偉い人だが、権力は振るわないし贅沢をする訳でもない。そんな天皇を中心とした皇室が存在し続けてきた国が日本だ。それを続けたいのか続けたくないのか。
こういうことを無視する一部のパヨク政党は、「アンケート調査を参考に次の天皇を決めよ」などと主張して、多数の政党から嘲笑されている。そらそうだろう。アンケートなど、気軽に答えられる。そんな気軽に答えられる調査で、次の天皇を決めて良いのか。そもそも「次の天皇を決めるアンケート」って何だろう?選挙ですらなく???
今後も皇室が続く保証はどこにもない
仮に国民の総意を決める為に「次の天皇は誰が良いか」と総選挙を行ったとしよう。あるいは、そんな制度はないが、国民投票を行うとする。国家元首を選挙で決めるなら、最初から大統領制にすればいいではないか。世襲である必要はない。
結局、「アンケートを参考にしろ」と言われても、参考にする方法が無いのだ。選挙でも同じである。
ちなみに、選挙は合戦の代替品である。
選挙は一時の民意を決するにすぎない。一時の多数決など、歴史の中では少数派にすぎない。これまで神話の時代から続いてきた歴史を、一時のアンケート(選挙ですらない)で変えようなど、怖い物知らずでは済まない。取り返しがつかないのだから。
今後も、皇室が続くなどという保証は、どこにもない。子供が生まれなければ終わりだし、その時の日本人が「もう、こんな制度はやめてしまおう」と思ってしまえば、それで終わりだ。それでも続いてきた。常に皇室を続けたいとの人々の意思が、その時代ごとに勝ち続けてきたからだ。奇跡だ。
我々の時代にできることは、未来に皇室を受け継ぐことだけだ。
ご先祖さまから受け継いだ皇室を、未来の子孫に受け継げるか、今を生きている日本人の覚悟が問われる。
―[言論ストロングスタイル]―
【倉山 満】
皇室史家。憲政史研究家。1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『噓だらけの日本近世史』が2月28日より発売
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