高解像度の衛星が地球のあらゆる場所を映し出す現代に、ひとつの島が、誰にも気づかれないまま存在し続けていた。
南極の海を調査中のドイツ・アルフレート・ウェゲナー研究所の砕氷船が、未知の島を発見したのだ。
長さ約130m、幅約50mのこの岩の島は、表面を覆う氷のせいで周囲の氷山と見分けがつかず、長年見過ごされていた。
「危険区域」の中に未知なる島を発見
2026年2月、南極のウェッデル海北西部を調査していた砕氷船ポラルシュテルン号は、荒天を避けてジョインヴィル島(南極半島の北端近くに位置する島)の風下へ針路を変えた。
そのとき、航路上の海図に「航行上の危険がある未探査区域」とだけ記された場所が現れた。
ドイツのアルフレート・ウェゲナー研究所・ヘルムホルツ極地海洋研究センター(AWI)水深測量部門のジモン・ドロイター氏は、手元のすべての海岸線データを調べ直してから艦橋へ向かった。
船の窓から見えたのは、汚れた氷山のように見える塊だった。だが氷山にしては表面の様子がおかしい。
よく観察すると、岩石である可能性が高いとわかった。船が進路を変えて近づくにつれ、それが紛れもない島であることが明らかになった。
島の全容を史上初めて測量
ナビゲーターが船底と海底の距離を常に50m以上確保しながら慎重に操船する中、研究チームは島から150m以内まで接近して作業を開始した。
船に搭載されたマルチビーム音響測深機(複数の音波を海底に向けて発射し、反射波から地形を面的に測定する装置)で周囲の海底を測量し、ドローンで空撮した画像を写真測量法で解析して島の立体的な形状と海岸線を正確に記録した。
この島が系統的に測量・記録されたのはこれが初めてだ。
測量の結果、島の長さは約130m、幅は約50m、水面からの高さは約16mであることが判明した。
長年この島が見過ごされてきた理由も調査で明らかになった。
島の表面は氷に覆われており、衛星画像では周囲を漂う無数の氷山と見分けがつかなかったのだ。
さらに、海図に記されていた位置は実際の位置から約1.85km(1海里)ずれており、データ自体の信頼性にも問題があった。
発見から正式登録までの道のり
島を発見しても、すぐに正式な地図に載るわけではない。国際的な命名手続きを経る必要がある。
AWI水深測量部門の責任者ボリス・ドルシェル博士は、2014年にも南大西洋とウェッデル海の海図に2つの海底山を登録した実績を持つ。
今回も命名手続きが完了次第、島の正確な位置を公表し、国際海図や南大洋の海底地形をまとめたデータベースへの追加を進める予定だ。
この記録作業が重要なのは、南極海の海底地図は実測データが少なく、データが届かない場所は推定値で補われているからだ。
未記録の島や岩礁はそのまま地図から抹消されてしまうリスクがあり、航行の安全にも直結する問題となっている。
南極の海氷にも急激な変化が起きている
島の発見以外にも、今回の調査では重要な成果が得られた。
南極の海氷はかつて北極に比べて安定していると考えられていたが、ウェッデル海北西部では2017年以降、夏の海氷面積が急激に縮小している。原因として海面水温の上昇が疑われている。
氷の厚さには地域差も見られた。潮汐の影響を受けやすい西部の大陸棚では最大4mに達した一方、東部ではロンネ棚氷やフィルヒナー棚氷(南極大陸から海上に張り出した巨大な氷の板)から流れ出た氷が多く、厚さは約1.5mにとどまった。
また、氷の表面はほぼ雪がなく、青みや灰色がかった状態で、氷の中や直下に大量の融解水が蓄積していることも確認された。
この淡水の層が海洋からの熱を遮断し、海氷の融解速度に影響を与えていると研究チームは見ている。
これらのデータは、南極の海洋環境と地球規模の気候変動の関係を解明するための重要な手がかりとなる。
探検は2026年4月9日にフォークランド諸島で終了し、ポラルシュテルンはその後大西洋を横断して5月中旬に母港ドイツ・ブレーマーハーフェンへ帰港する予定だ。
References: Uncharted island soon to appear on nautical charts[https://www.awi.de/en/about-us/service/press/single-view/unkartierte-insel-demnaechst-auf-seekarten-verzeichnet.html] / Uncharted island soon to appear on nautical charts[https://www.eurekalert.org/news-releases/1123352]











