ティラノサウルスより1億4000万年前に生きていた新種の肉食恐竜を発見
Image credit:Illustration by Megan Sodano for Virginia Tech.

ティラノサウルスより1億4000万年前に生きていた新種の肉食...の画像はこちら >>

 ボロボロに押しつぶされた恐竜の頭蓋骨から、ティラノサウルスより1億4000万年以上前に生きていた新種の肉食恐竜が見つかった。

 アメリカのバージニア工科大学の研究チームが2年間かけてCTスキャンで復元したもので、肉食恐竜の最古グループの最後の生き残りとみられる。

 三畳紀末の大量絶滅が、恐竜の競争相手だけでなく恐竜の一部系統も絶滅させた可能性を示す発見だ。

 この研究成果は『Papers in Palaeontology[https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/spp2.70069]』誌(2026年4月14日付)に掲載された。

引き出しで数十年眠っていた恐竜の頭蓋骨

 1982年、アメリカ・ニューメキシコ州北部にあるゴーストランチで、カーネギー自然史博物館の調査チームが一つの恐竜の頭蓋骨を発掘した。

 ゴーストランチは三畳紀からジュラ紀にかけての地層が豊富に露出しており、過去にも多くの恐竜化石が発見されてきた著名な化石産地だ。

 ところがこの頭蓋骨は、地中の圧力で長い年月をかけて押しつぶされ、表面はくぼみだらけでひどく変形していた。

 保存状態があまりにも悪かったため、その後博物館の引き出しの奥に眠り続けることになった。

 それから数十年後、バージニア工科大学の地球生物学者スターリング・ネスビット博士がこの化石を引き取り、地球科学専攻の学部生シンバ・スリヴァスタヴァ氏を中心とした研究チームによる復元プロジェクトが始まった。

[画像を見る]

ティラノサウルスよりも前の三畳紀末の恐竜

 研究チームは、CTスキャンを使って復元を行った。医療現場でもおなじみのこの技術は、X線を使って物体の内部構造を壊さずに調べることができる。

 古生物学の分野でも、化石を傷つけることなく骨の形状を詳細に把握するために広く活用されている。

 CTスキャンで得たデータをもとに、研究チームは押しつぶされた骨をデジタル上で一つひとつ分離し、頭蓋骨の3Dプリント復元モデルを作製した。

 変形した状態でも、化石は重要な情報を保っていた。

 復元された頭蓋骨からは、これまでの初期肉食恐竜には見られなかった特徴が明らかになった。

 大きく張り出した頬骨、幅広の頭蓋腔(脳を収める頭蓋骨内部の空間)、そして短く深い吻部、口先の形状だ。

 これらの特徴が初期恐竜で確認されたのは初めてのことで、恐竜がこの時代にすでに多様な進化を遂げていたことを示している。

 この恐竜が生きていたのは三畳紀末期だ。

 三畳紀とは約2億5200万年前から2億100万年前まで続いた地質時代で、恐竜が初めて地球上に出現した時代にあたる。

 ティラノサウルスが生きた白亜紀末期(約6800万~6600万年前)と比べると、1億4000万年以上も前になる。

 当時の恐竜はまだ生態系の頂点に立つ存在ではなく、ワニや哺乳類の祖先にあたる動物たちと食物や縄張りをめぐって競い合っていた。

[画像を見る]

新種の肉食恐竜「プティコテラテス・ブキュレントゥス」

 詳細な分析の結果、この化石はヘレラサウルス類(Herrerasauria)に属することが判明した。

 ヘレラサウルス類とは、三畳紀に生息した肉食恐竜の中でも最も初期に進化したグループのひとつで、1959年にアルゼンチンで化石を発見した地元の農夫ビクトリノ・ヘレラの名にちなんで命名されている。

 今回の化石はこの系統の最後の生き残りとみられる。

 新種と確認されたこの恐竜には、ラテン語で「頬が膨らんだ折りたたまれた狩人」を意味する学名プティコテラテス・ブキュレントゥス(Ptychotherates bucculentus)が与えられた。

 大きく張り出した頬骨と独特の頭部の形状から、復元画を見た古生物復元画家からは「コミカルなのに不気味、愛嬌があるのに獰猛そうな奇妙な顔つきで”殺人マペット(人形)のようだ」と評された。

 世界でこの1点しか見つかっていない標本でありながら、初期恐竜の進化の複雑さを示す貴重な証拠となっている。

[画像を見る]

三畳紀末の大量絶滅で消えた可能性

 プティコテラテス・ブキュレントゥスが発見された地層は、三畳紀末の大量絶滅が起きる直前の時代のものとみられる。

 三畳紀末の大量絶滅とは約2億100万年前に起きた地球規模の生物絶滅事件で、大規模な火山活動による気候変動が主な原因とされており、陸上・海洋を問わず多くの生物種が姿を消した。

 大量絶滅以降、ヘレラサウルス類の化石は世界のどこからも発見されていない。

 さらに三畳紀のこれほど後期の地層からヘレラサウルス類が見つかった地域は、現在のアメリカ南西部にあたるこの場所だけだ。

 アメリカ南西部がヘレラサウルス類にとって最後の生息地だった可能性がある。

 これまで三畳紀末の大量絶滅は、恐竜にとってむしろ追い風になった出来事として理解されてきた。

 競争相手だったワニや哺乳類の祖先が大きなダメージを受けたことで、恐竜が一気に生態系の頂点へと躍り出たとされてきたからだ。

 しかしプティコテラテス・ブキュレントゥスの発見は、その見方に再考を迫っている。

 量絶滅は恐竜の競争相手を一掃しただけでなく、長い歴史を持つ恐竜のグループそのものをも滅ぼしていた可能性がある。

 博物館に眠っていた、手のひらに収まる小さな化石が、1億4000万年前の世界への扉を開いたのだ。

この研究でわかったこと
・三畳紀末期に未知の新種肉食恐竜が存在していた
・三畳紀末の大量絶滅は一部の恐竜グループ自体も滅ぼした可能性がある

まだわかっていないこと
・同種の化石が世界に1点しかなく、生態や行動の詳細は不明
・ヘレラサウルス類が大量絶滅で滅びたかどうかはまだ可能性の段階

References: Onlinelibrary.wiley.com[https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/spp2.70069] / Student identifies new meat-eating dinosaur three times older than T. rex[https://news.vt.edu/content/news_vt_edu/en/articles/2026/01/science-murder-muppet.html] / A crushed fossil revealed a dinosaur that shouldn’t have existed[https://www.sciencedaily.com/releases/2026/04/260415043610.htm]

編集部おすすめ