ワニの仲間なのに恐竜のよう。約2億年前の爬虫類の新種が発見される
新種認定された三畳紀の爬虫類 Artwork by Jorge Gonzalez, copyright NHMLAC Dinosaur Institute

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 二足歩行で腕が小さく、体型は恐竜に似たワニの系統に属する爬虫類の化石が、米国ニューメキシコ州の地層から発見された。

 ロサンゼルス郡立自然史博物館などの研究チームが分析した結果、約2億1200万年前の後期三畳紀に生きた新種と判明した。

 ワニと恐竜がすでに別々の進化の道を歩んでいた時代に、ワニの系統から恐竜に似た姿の爬虫類が生まれていたのだ。

 この研究成果は『Journal of Vertebrate Paleontology[https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/02724634.2026.2618182]』誌(2026年5月26日付)に掲載された。

ワニの系統なのに恐竜に似た新種化石を発見

 アメリカ・ニューメキシコ州北部には、ゴーストランチという広大な荒野が広がっている。

 赤茶けた岩肌が続く荒涼とした大地は、恐竜が生きていた時代よりさらに古い地層が地表近くまで露出しており、世界有数の化石産地として古生物学者たちに知られている。

 ここで発掘された化石が、新種の爬虫類のものだと判明した。

 約2億1200万年前の後期三畳紀(約2億3700万~2億130万年前)の化石と推定され、「ラブルハスクス・エクスペクタトゥス(Labrujasuchus expectatus)」と名付けられた。

 見た目は恐竜にそっくりで、二足歩行で腕(前肢)は小さく、口には歯がなく、くちばし状になっていた。

 現代のワニといえば、四本足でずんぐりとした体に鋭い歯を持つ大きな口というイメージだが、ラブルハスクスはそのどれにも当てはまらない。

 むしろ白亜紀(約1億4500万~6600万年前)に生きた、ダチョウに似た体型を持つ二足歩行の恐竜グループ、オルニトミモサウルス類[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%AB%E3%83%8B%E3%83%88%E3%83%9F%E3%83%A2%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%B9%E9%A1%9E]に体型がそっくりだった。

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ワニと恐竜はもともと同じ祖先を持つ仲間だった

 ワニと恐竜は一見まったく別の生き物に見えるが、実はどちらも「主竜類」と呼ばれる爬虫類の大きなグループから枝分かれした仲間同士だ。

 主竜類(しゅりゅうるい)とは、現代のワニや鳥類の祖先にあたる爬虫類のグループで、恐竜もここに含まれる。

 主竜類はおおきく2つの系統に分かれる。

 ひとつは「偽鰐類(ぎがくるい)」と呼ばれるワニへと続く系統、もうひとつは「鳥頸類(ちょうけいるい)」と呼ばれる恐竜や翼竜へと続く系統だ。

 現代のワニは偽鰐類の末裔であり、鳥類は恐竜の系統の末裔にあたる。

 ラブルハスクスが属するシュヴォサウルス科[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%B4%E3%82%A9%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%B9%E7%A7%91]は、偽鰐類の中の「ポポサウルス上科」というグループに分類される。

 家系図でいえば、現代のワニとは同じ偽鰐類という「家」に属する遠い親戚にあたる。

 約2億1200万年前には、偽鰐類と鳥頸類はすでに別々の道を歩んでいた。

 にもかかわらず、偽鰐類の系統から、鳥頸類である恐竜そっくりの体型を持つ生き物が独立して生まれていたのだ。

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無関係な生き物が似た姿に進化する「収斂進化」

 なぜ系統の異なる生き物が似た姿になるのか。

 生き物の世界には「収斂進化(しゅうれんしんか)」と呼ばれる現象がある。

 まったく別の系統の生き物が、似た環境や生活スタイルに適応することで、それぞれ独立して似た体のつくりを獲得することをいう。

 イルカとサメは系統がまったく異なるが、水中で速く泳ぐために似た流線型の体を持つようになった。

 ラブルハスクスも、二足歩行で素早く動くという生活スタイルへの適応が、恐竜に似た体型を生んだと考えられている。

 論文の筆頭著者で米国ストーニーブルック大学のアラン・ターナー博士は、現代の動物や恐竜が成功させた多くの生存戦略が三畳紀にすでに生まれていたと指摘する。

 二足歩行はワニの近縁種にとって独特の選択だったが、恐竜や後の鳥類がたどった道でもあり、ラブルハスクスにとって明らかに有効だったと語っている。

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三畳紀の空白の時代を埋めた新種の爬虫類

 シュヴォサウルス科は、世界でわずか5種しか確認されていない希少な爬虫類のグループで、ラブルハスクスはその5種目にあたる。

 ゴーストランチでは以前から、後期三畳紀の早い時期と遅い時期の地層から、それぞれ別のシュヴォサウルス科の化石が見つかっていた。

 研究者たちは中間の時代にも必ず仲間がいるはずだと予測していたが、化石がなかなか見つからずにいた。

 ラブルハスクスはまさにその空白の時代、約2億1200万年前の地層から出土した。

 種名の「エクスペクタトゥス」はラテン語で「期待されていた」を意味する。長年の予測通りに見つかったという発見の経緯が、そのまま名前に刻まれている。 

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化石の宝庫、ゴーストランチの歴史

 属名「ラブルハスクス」には、発掘地ゴーストランチにまつわる歴史的な由来がある。

 ゴーストランチはかつてスペイン語で「Ranchos de los Brujos(魔女たちの牧場)」と呼ばれていた。

 地元の牧場主たちが、この土地を拠点に牛の盗みを働いていた兄弟がいたため、人々が近づかないようわざと不気味な名前をつけたという言い伝えが残っている。

 属名はその「魔女たちの牧場」というスペイン語名と、ギリシャ語でワニを意味する「スクス(suchus)」を組み合わせたものだ。

 日本語に訳すなら「魔女のワニ」といったところになる。

 ゴーストランチは、古生物学の世界でも特別な場所として知られている。

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三畳紀の生き物の多様性

 ゴーストランチでの発掘プロジェクトが始まって、今年で20年を迎えた。

 ネイト・スミス博士らの研究チームは毎夏ゴーストランチを訪れ、ゴーストランチ内にある発掘専用エリア「ヘイデン採石場」で後期三畳紀の化石を掘り続けてきた。

 20年の積み重ねが、今回の新種発見につながった。

 恐竜が地球を支配する以前の三畳紀は、生き物たちが多様な体型を試していた時代だった。

 ワニの系統から恐竜そっくりの生き物が生まれるほど、当時の生命の進化は自由で豊かだったのだ。

 今後もゴーストランチから更なる発見があることを期待したい。

まとめ

この研究でわかったこと

  • 約2億1200万年前、ワニの系統(偽鰐類)から二足歩行で恐竜そっくりの体型を持つ新種爬虫類が生まれていた
  • ワニと恐竜がすでに別々の進化の道を歩んでいた時代に、まったく異なる系統が似た姿へと独立して進化する「収斂進化」が起きていたことが確認された
  • 後期三畳紀のゴーストランチで、既知の2種のシュヴォサウルス科の間にあった約2億1200万年前という時代の空白を埋める新種化石が発見された

まだわかっていないこと・今後の課題

  • シュヴォサウルス科は世界で5種しか確認されておらず、後期三畳紀の地層には未発見の種がまだ眠っている可能性がある

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References: DOI 10.1080/02724634.2026.2618182[https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/02724634.2026.2618182] / New species of bizarre, bipedal, toothless crocodile relative from the Triassic discovered[https://www.eurekalert.org/news-releases/1129063]

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