ゴマ粒ほどの大きさで、模様までもが白ごまと黒ごま、金ごまをまぶしたような新種のウミウシが台湾北部の海底で発見された。
半透明の白い体に小さな斑点が散らばり、台湾のダイバーたちが「ゴマ」と呼んで親しんでいたこのウミウシは新種であることが確認され、新たに命名された。
この研究成果は『ZooKeys[https://zookeys.pensoft.net/article/184298/list/1/]』誌(2026年5月11日付)に掲載された。
研究者が偶然発見したゴマ粒サイズのウミウシ
国立台湾海洋大学の研究者チャン・ホーユン氏は2019年夏、学部生時代のレクリエーションダイビング中に台湾北部の海でこのウミウシを偶然見つけた。
体長3mm未満と、米粒よりも小さく、水中で肉眼を凝らしてもほとんど見分けがつかないゴマ粒サイズで、その場で新種と判断できる手段はなかった。
後日チャン氏がFacebook上でウミウシ専門家のリン・シーニー氏に写真を見せ、既知の種とは異なる可能性が明らかになった。
白ごま・黒ごま・金ごまをまぶしたような外見
正式な記載に向けて、研究チームは2021年5月から2025年6月にかけて、台湾北部の港湾都市・基隆沖のマザーロック湾で複数回にわたり潜水調査を実施した。
研究チームは水深18~30mで個体を採集し、撮影しながら体色や行動を記録した。
半透明の白い体に多数の黒い斑点、少数の大きな黄色い斑点、そして5本のえらを持つ外見は、白ごまと黒ごまと金ごまを一緒にまぶしたような見た目だ。
外見が似た近縁種テカセラ・ペニゲラ(Thecacera pennigera:ミズタマウミウシ)の体長12~30mmほどで、比較すると著しく小さい。
台湾のダイバーたちは以前からこのウミウシを知っていて、その外見から、長年「ゴマ」と呼んできた。
DNA解析と形態観察で新種と確定
研究チームはミトコンドリアDNAの一部(16S rDNAとCOI遺伝子)を抽出・解析し、既知の近縁種のデータと照合した。
形態観察の結果とあわせて、このゴマ粒ウミウシは独立した新種であることが確認され、テカセラ・セサマ(Thecacera sesama)と名付けられた。
Thecacera 属の既知種はこれで7種となった。
形態的特徴は、研究に携わったチェン・ルー・リー氏がタブレットで描いた図によっても詳細に記録されている。
学名の「sesama」はラテン語でゴマを意味し、体の斑点模様とダイバーたちの愛称の両方に由来する。
基隆沿岸は冬の季節風と夏の台風の影響で調査可能な期間が年間4か月程度しかなく、正式な記載までに5年以上を要した。
食事も産卵も、特定の1種類の生き物だけが相手
研究チームがテカセラ・セサマで観察したところ、主な行動は捕食・探索・交尾・産卵の4つで、食べるものも産卵場所も特定の1種類のコケムシだけに限られていた。
コケムシは海中の岩や海藻の表面にコケのように付着して暮らす小さな外肛動物で、サンゴのように石灰質の硬い殻を持つ小さな個体が無数に集まって群れを形成している。
さらに、テカセラ・セサマが住処と食料の両方に使うこのコケムシもまた、科学的にまだ正式に記載されていない新種である可能性があるという。
3mmのウミウシを追いかけていたら、その足元の生き物も未記載種の可能性があるのだ。
海洋生物の90%近くはまだ名前がない
研究チームは、テカセラ・セサマと同様に小さくて発見困難な未記載種が、台湾を含む西太平洋地域にまだ数多く存在すると考えている。
裸鰓類(らさいるい)は貝殻を持たない軟体動物の一群で、鮮やかな色模様を持つ。
サンゴ礁生態系の中で、海洋食物連鎖の重要な役割を担っているが、多くの種は非常に小さく裸眼では見つけることが極めて難しい。
現在までに正式に記載されている海洋生物は全体の10%程度に過ぎず、残る90%近くはまだ名前すら持っていない。
台湾の海も例外ではなく、新たな発見に出会えるかもしれない。
References: DOI:10.3897/zookeys.1279.184298[https://zookeys.pensoft.net/article/184298/list/1/] / Tiny sesame sea slug species discovered in the waters of northern Taiwan[https://www.eurekalert.org/news-releases/1129335]











