あなたはどのタイプ? “枯渇型”と“過敏型”、2つの視点で読み解く、セルフチェックと日常対策

「なんとなく気分が重い」「朝から会社や学校のことを考えるとつらい」「休んでも疲れが抜けない」――。

 

4月から新しい環境で頑張ってきた人ほど、ゴールデンウィーク前後は心身の不調を感じやすくなる時期です。
いわゆる「5月病」と呼ばれるこうした不調は、新しい環境への適応による緊張や対人ストレス、睡眠不足、食生活の乱れなど、複数の要因が重なることで起こります。

 

4月から5月は、新しい環境や人間関係への適応による緊張、睡眠不足、食生活の乱れなどが重なりやすい時期です。

 

精神科専門医の広岡清伸先生によると、5月病は、無理を重ねたことで心身のエネルギーが低下してしまう「枯渇型」と、新しい評価や対人関係の刺激に神経が張り詰め、情緒が不安定になる「過敏型」、それらを併せ持つ「複合型」に大別されるといいます。

 

「枯渇型」と「過敏型」を特徴づける心身の不調は下表のようになります。

 

【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M108200/202605078645/_prw_PT1fl_fZbUu3Gf.png

 

大正製薬株式会社は、直近3年間(2024年~2026年)に新生活を迎えた全国の20代以上の367人を対象に、新生活期のメンタル不調に関する意識調査を実施しました。

 

その結果、全体の83.7%の人が新生活に入って何かしらの心身の不調を感じていると回答しており、もっとも多かったのが、「複合型」で不調を感じている人のうちの32.4%、次いで「枯渇型(仕事量の増加や睡眠不足、食生活の乱れなどが重なり、心身のエネルギーが低下しやすいタイプ)」で29.2%、「過敏型(周囲の評価や対人関係への敏感さが高まり、精神的な緊張を抱えやすいタイプ)22.1%となっていました。

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202605078645-O2-75dq38e6

 

また、多かった心身不調としては、「枯渇型」では睡眠時間が6時間を下回ることが週3日以上ある(135人)、完璧にこなせないと、自分を責めてしまう(102人)、「過敏型」ではミスをすると、必要以上に長く引きずる(123人)、確認作業を何度もしないと不安になる(103人)となっていました。

メンタル不調は「気分の落ち込み」や「心の弱さ」といった一つの側面だけで捉えられるものではなく、環境の変化や生活の乱れ、もともとの性格傾向などが重なって表れます。そうした状況でも、なるべく平常心(外部の刺激に対して感情が大きく揺れない状態)を保つことが心の健康にとって重要であると、広岡先生は話します。5月に起こりやすいメンタル不調を「枯渇型」「過敏型」という視点から紐解き、考え方や心の持ち方(精神療法)に加え、栄養・生活習慣の見直しや薬による対応も含めて、どのように予防・改善していけばよいのかを広岡先生に伺いました。

 

 

 

 

【監修】広岡クリニック院長 広岡 清伸先生

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202605078645-O3-v6P678Iq

精神科専門医、指導医、精神保健指定医。
日本大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院、堀ノ内病院、関東労災病院などを経て、1992年に横浜市港北区に広岡クリニックを開設。
患者の目線に立って治療する独自の「肯定的体験療法」を提唱し、これまで1万人以上の診療に携わる。著書に『心の病になった人とその家族が最初に読む本』(アスコム、2024年)、『広岡式こころの病の治し方』(日経BP)など。2026年1月5日には『ごめんなさい、もうこれ以上頑張れません 生きづらい社会で傷ついた人が、再び「自分」を取り戻すまで』(アスコム)を刊行。

メンタル不調は「平常心」と「情動クッション」の低下から始まる

平常心とは、外部の刺激があっても感情が大きく揺れすぎず、自分の中心を保てている状態を指し、情動クッションとは、ストレスを受けたときに感情の揺れを和らげる“心の緩衝材”のような働きを行います。この「情動クッション」が十分に機能していると、ストレスがあっても平常心を保ちやすく、心身の安定につながります。しかし、疲労や睡眠不足、環境変化などが重なると情動クッションの働きが弱まり、同じ出来事でも強く落ち込んだり、不安が長引きやすくなったりします。こうした状態が続くと、メンタル不調へとつながります。メンタル不調の現れ方は、大きく「枯渇型」と「過敏型」の2つに分けて考えられます。

 

 

5月に増えやすいメンタル不調は「枯渇型」と「過敏型」

●心身のエネルギーが尽きる「枯渇型」

幼いころから比較的そつなく勉強や就職、人間関係をこなしてきた人に多いのが「枯渇型」です。とくに新生活では、「期待に応えたい」「早く慣れたい」と思うため、気づかないうちに「エネルギー切れ」のような状態に陥ります。最初のうちは気力で持ちこたえられても、プレッシャーで睡眠不足や疲労が蓄積していきます。ゴールデンウィークで一時的に心が軽くなったとしても、休み明けに強いだるさや気力の低下を感じることも少なくありません。
このタイプは、「もっと頑張る」ことよりも、睡眠・休息・食事・仕事量の調整を行うことですり減った情動クッションを回復させることが大切です。

 

●外部の刺激に敏感に反応しやすい「過敏型」

人間関係や評価、環境の変化に対し、神経を張り詰めて適応してきた人が陥りやすいのが「過敏型」です。「自分はできていないのではないか」「周囲に迷惑をかけているのでは」といった不安を抱えやすく、緊張が続きやすくなります。休日などに時間が生まれることで、かえって仕事や学校のことを考える時間が増え、休み明けに緊張や憂うつが強まるケースもあります。このタイプは、刺激との距離の取り方や自己評価の基準を見直し、心が過敏に反応しすぎないようにすることで、平常心を保ちやすくすることが重要です。

 

 

あなたはどのタイプ? 5月のメンタル不調セルフチェック

5月の不調を立て直す第一歩は、まず自分の状態を知ることです。以下は、新生活期に起こりやすいメンタル不調の傾向を把握するための簡易セルフチェックです。自分の不調がどこから来ているのかを見つめ直す手がかりとしてご活用ください。

 

各項目について、「はい/いいえ」でお答えください。

(「はい」1点、「いいえ」0点として合計点を算出)

【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M108200/202605078645/_prw_PT2fl_K7R15880.png

判定の仕方
A・Bそれぞれのスコアを以下の基準で算出します。
・0~2点:低リスク
・3~4点:注意
・5~6点:高リスク判定結果の見方

 

判定結果の見方

・Aが「注意」または「高リスク」の場合:頑張りすぎによる「枯渇型」傾向
・Bが「注意」または「高リスク」の場合:刺激への敏感さが高い「過敏型」傾向
・A・Bともに「注意」以上の場合:枯渇と過敏さが重なった「複合型」

 

 

タイプ別にみる予防と対策

 

1. 枯渇型:休息・仕事量の見直しを優先する

心身のエネルギーの回復が枯渇型にとっては最優先です。疲れているのに深夜までSNSやゲームを続ける、飲酒やカフェインで無理に乗り切るといった習慣は、疲労を悪化させます。
睡眠時間を確保し、寝る直前まで仕事や学校のことを考え続けないようにしましょう。必要に応じて上司や周囲に相談することも大切です。

 

2. 過敏型:刺激への反応と自己評価の軸を見直す

新しい環境や人間関係、相対的な評価に神経が過敏に反応しやすくなっているため、「自分がどんな場面で不安や緊張が高まるのか」を把握し、必要以上に刺激を受けない工夫をすることが大切です。できていない自分を責めるのではなく、今できていることを基準に自分を見つめなおすことで、神経の緊張が緩みやすくなります。

 

3. 複合型:枯渇と過敏への対応を同時に進める

複合型は、生活リズムの見直しといった“枯渇”への対応と、神経の緊張を和らげる “過敏”への対応を同時に進める必要があります。朝起きられない、気分の落ち込みが続く、頭痛や胃腸の不調など身体症状が強いといった場合には、不調が進んでいる可能性があるため、早めに医療機関や専門家に相談しましょう。

 

 

脳の働きを支える栄養療法

脳は栄養状態の影響を受けやすく、忙しい新生活では食事の乱れによって栄養が不足しがちです。食事面を整えることは、脳というハードウェアのノイズを減らし、心身を安定させます。「枯渇型」と「過敏型」に役立つ栄養素を紹介します。

 

タウリン(神経の高ぶり・疲労蓄積の調整)
魚介類などに多く含まれる成分で、体内のバランスを一定に保つ恒常性の維持に関わります。新生活では、環境の変化による緊張や生活リズムの乱れが重なり、疲れが抜けにくい、気持ちが落ち着かない、回復しにくいなどの状態が続きやすくなります。タウリンは、体内環境を整え、疲労の蓄積や神経の緊張が続く状態を和らげます。


 

枯渇型:心身のエネルギーが不足している状態のため、回復に必要な栄養を補給することが重要です。タウリンは細胞内のミトコンドリアの働きを保ち、体内でエネルギーを生み出す仕組みを支える働きがあります。だるさや疲労感の改善に役立ちます。

 

過敏型:神経の緊張が続きやすい状態では、過剰な興奮を抑える働きが必要です。タウリンは脳内で抑制性神経伝達(GABA受容体)に関わるとされており、神経の昂ぶりを鎮め、外部刺激に対する「クッション」として作用します。

 

ビタミンB群(疲労感・思考力低下のサポート)
エネルギー代謝や神経機能に関わる栄養素で、不規則な生活や外食中心の食事では不足しやすくなります。食べているのに疲れが抜けない、頭が回らないといった感覚があるときは、肉・魚・卵・豆類などビタミンB群を含む主菜が不足していないかを見直すことが大切です。

 

枯渇型:ビタミンB群は糖質や脂質、たんぱく質の代謝に関わり、疲労感やだるさが続く状態でのエネルギー産生を助けます。食べたものを活動エネルギーに変える働きを助けるため、気力が出ない、集中できないといった状態の回復を助けます。

 

過敏型:神経伝達物質の合成や神経機能に関わるビタミンB群は、イライラや不安感、思考のまとまりにくさがあるときに、神経の過度な緊張を和らげ、気分の揺れを整えます。

 

たんぱく質(回復力低下・気力低下の土台を支える)
筋肉だけでなく脳や神経伝達物質、ホルモンなどの材料となり、心身の回復力を支える栄養素です。忙しい時期は炭水化物中心の食事になりやすいため、疲れやすさや気力の低下が続くときは、十分に摂れているかを見直しましょう。


 

枯渇型:エネルギーが枯渇している状態では、回復に必要な材料そのものが不足しやすくなります。たんぱく質は体の修復や酵素・ホルモンの合成に関わるため、低下した回復力を立て直すうえで重要です。

 

過敏型:神経伝達物質の材料となるたんぱく質は、情緒の安定にも効果的です。食事量の低下や軽食中心の食事が続くと神経機能が不安定になりやすいため、安定した心身の状態を保つためにも、意識して摂りたい栄養素です。

 

 

5月の不調を防ぐために、生活習慣と心の持ち方を見直す

 

1. まずは「寝る」「食べる」を後回しにしない

メンタルを安定させるうえで基本になるのが、睡眠と食事です。忙しさから食事を抜く、同じものばかりで済ませる、外食やコンビニ食に偏るといった状態が重なると、脳や身体を支える栄養状態も不安定になり、不調を悪化させやすくなります。5月の不調を防ぐためには、まずは睡眠と食生活を整えることが大切です。

 

2. 力みすぎず、“平常心”を保つ

新しい環境で「頑張らなければ」と自分を追い込みやすくなり、できていない部分ばかりに目が向いてしまいがちです。しかし、そうした自分との向き合い方は、不安心を強め、神経の高ぶりや情緒が不安定になりやすくなります。理想どおりにできていない自分を責めすぎず、過度に力んだ状態になりすぎないことが大切です。

 

3. 心を整えるために、体を動かす時間をつくる

忙しい新生活で体を動かす機会が少なくなると、睡眠の質の低下や気分の切り替えのしにくさにつながります。散歩や軽い運動、通勤時に歩く時間を増やすなど、日常の中で体を動かす習慣を取り入れることで生活リズムが整い、不調の予防につながります。


 

 

不調が続くときは、薬による治療も選択肢に

休養や生活の見直しを行っても立て直しが難しい場合や、不調が長引いて日常生活に支障が出ている場合は、医療機関に相談し、薬物療法を含めた専門的な支援を受けることも検討しましょう。精神科では、不安や抑うつ、気分の波、神経の高ぶりなどの症状が強いときに、状態に応じて薬による治療が行われます。つらさを一人で抱え込まず、必要に応じて医療機関に相談することが、回復への一歩になります。

 

不調は「弱さ」ではなく、立て直しのサイン

5月のメンタル不調は、怠けや根性不足ではありません。4月の頑張りや新しい環境への適応のなかで、心や脳、身体に無理が重なり、平常心や情動クッションの働きが弱まっているサインといえます。大切なのは、不調を見て見ぬふりしたり否定したりすることではなく、今の自分に何が起きているのかに目を向け、感情が大きく揺れすぎない状態「平常心」を少しずつ取り戻していくことです。

まずは、寝ること、食べること、休むことを後回しにしないこと。理想ではなく現実の自分を基軸にすること。そして、一人で抱え込まず、必要に応じて周囲や専門家に相談することが大切です。小さな違和感の段階で立ち止まり、生活や考え方を整えることが、不調の予防にもつながります。不調のサインを「弱さ」と決めつけるのではなく、自分を立て直すためのきっかけとして受け止めることが、心の安定を保つ第一歩になります。

 
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