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supercellやjon-YAKITORYなど、様々なボカロP、音楽クリエイターとコラボレーションを重ねてきたシンガー・シユイの2025年最初のアクションとなったのが、TVアニメ『青の祓魔師 終夜篇』(以下、『終夜篇』)EDテーマ「オーバーラップ」のデジタルリリースだ。ボカロP・雪乃イトが作・編曲を手掛けた「オーバーラップ」は、自分の弱さや孤独と対峙しながらも、包み込むような優しさと愛が、シユイの“青”の歌声によって深く広がっていく、ブライトなミディアムナンバー。

2月26日にはシングルとしてのリリースも決定している。楽曲に込められた想い、制作の裏側、そしてシユイが大切にしている“青”について語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY逆井マリ

シユイが織りなす青の世界

──2025年がスタートしたばかりのタイミングでのインタビューとなります。2024年は様々な新しいことに挑戦されていましたね。

シユイ そうですね。去年は初めて海外でライブイベントに出演させていただく機会もあって、これまでよりもさらに歌ったことのない歌い方、ジャンルにも挑戦することができました。その中で“シユイらしさ”が少しずつ見えてきたように思っていて。得意な表現方法などを日々模索しながら、色々な方と協力して、みんなで楽曲を作り上げられた1年だったと思います。

──その“シユイらしさ”というのはどのようなものだと分析されていますか。

シユイ (世の中に出てきた当時)リスナーの方々に“青っぽい”というイメージを持たれていましたが、具体的な“青”の色合いはまだ曖昧だったように思っていて。それに当初は「ハピネス オブ ザ デッド」(TVアニメ『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』EDテーマ)が黄色、「GLOW」(スマートフォンゲーム『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』ゲーム内プロジェクト「魔法少女まどか☆マギカ scene0」主題歌)がピンクというイメージで、私自身のテーマカラーは定まっていなかったんですよね。でも最近は“青”のイメージが自分でも定着してきたように感じています。歌声の色が定まっていくにつれて発信する言葉や表現、リズムまで“青”というイメージに繋がるように意識するようになりましたね。

思い切ってYouTubeの歌ってみた動画のサムネイルも青で統一してみました。

─シユイと “青”にシンパシーを感じていると。

シユイ そうですね。私が「シユイ」というアーティスト像に抱いているイメージを考えると、彼女が背負っている色は“青”のように感じていて。歌声に切なさや静けさがあって、水の中のような……。歌ってはいるんですけど、その一方で音のない音楽を作っているような印象があるんです。そういった雰囲気が“青”に結びついているのかなと思います。

──一口に“青”と言っても、グラデーションのような幅広い“青”の表現がシユイさんの声にはあるように感じています。

シユイ デビュー以前から「七色の歌声」と形容していただくことが多かったのですが、シユイという人物はそれでも一貫性を大切にしてきました。それを鑑みたうえで「どれだけ多彩な“青”を表現できるか」という未来を考えていけたらなと思っています。

──そんななかで『青の祓魔師』のエンディングを彩ることに。シユイさんは元々『青の祓魔師』が大好きだったそうですね。

シユイ 私、少年マンガが好きなんです。私が歌おうと思ったのも『マギ』と出会い、(EDテーマを担当していた)supercellの存在を知ったのがきっかけで。そんな『マギ』にも通じるような魅力を『青の祓魔師』に感じていました。しかも作品のテーマが“青”、今回お話をいただいた時に完璧なマリアージュだと感じました。それと本作の主人公・奥村 燐たちは自分をあまり許していないところにもシンパシーを感じていて。私自身も以前は人や自分のことをあまり許容できずにいたんです。考え方や生き方も『青の祓魔師』の影響を受けていますね。

──シユイさん自身、以前は人や自分のことをあまり許容できずにいたんですね。

シユイ そうですね。以前の私は完璧主義なところがあって、0か100かみたいな考え方をしてしまいがちでした。さらに今はSNSが発達した時代なので周りが完璧に見えてしまって、自分を許容できずにいた。でも、最近はあまりルールを定めすぎず、肩の力を抜いて「できない自分も可愛いよ」くらいの気持ちで生きれるようになりました。

そう思えるようになった理由は……なんだろうな。明確なきっかけのようなものはなかったのですが、活動を通じて色々な人と出会ったことが大きいと思います。出会いの中で味方・仲間が増えて、自分を支えてくれる人たちがいるという実感が自信に繋がったのではないかと。あとは、私自身の相手を大切に想う気持ちが、同じように相手からも返ってくることもあって、愛情って本当に素晴らしいものだとも感じる機会も増えました。これは『青の祓魔師』に描かれる家族愛にも通じる部分だと思います。

──そうした変化があったことで自分の歌声もさらに好きになりそうですね。

シユイ 最近の自分の歌声がより優しくなっている気がして、すごく好きになっていますね。私は自分の歌声ももちろん、自分のことも大好きなんです。意識して「自分を大好きでいよう」と考えるようにしていて、小さなところで(自分を)かわいいと思えるポイントを見つけるようにしてるんです。例えば、小指を曲げた時の関節のぷにぷに感とか……(笑)。これ、みんなにやってもらいたいです。(指を触りながら)小学生の時からやっていました。

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「オーバーラップ」は羊水の中をイメージして

──歌声について“優しくなっている”というお話がありましたが、「オーバーラップ」からは包み込むような大きな愛を感じました。

シユイ 作曲してくださった雪乃イトさんともこの楽曲の包み込むような優しさについてたくさん話しました。ただ、雪乃さんはウユニ塩湖(ボリビア南西のアンデス山脈にある世界最大の塩原)のような何もない場所で1人で葛藤するイメージを抱いていたそうです。それって包み込むこととは一見違うようですが、私が思い描いていた感覚とは近いんですよ。私がイメージしていたのは、母の胎内の羊水の中のような……。

──私もまさに羊水の中をイメージしていました。その中で1人で漂うような、孤独だけど温かい感覚。

シユイ そうです。1人きりの空間で誰も干渉することはできないけれど、自分の辿ってきた軌跡には確実に愛情が存在していて、それが自分の糧になっているということを表現している楽曲だなと思いながら歌っていました。

──歌っている最中は具体的なキャラクターが思い浮かんでいたんですか?

シユイ あまり人は思い浮かべていなかったんですよね。上昇していくような曲だなというイメージがあったので、人物よりも空間を重視していました。閉塞的な青い建物の中にある螺旋階段を一歩一歩踏みしめるようなイメージ。ただ、この曲には曲線的な柔らかい要素がありつつも、幾何的な角っぽさや直線っぽさを少し感じることもあって、それが藤本獅郎やユリ・エギンの心情に近いのかなとは思っていました。

また、二律背反など普段は使わないような言葉も歌詞の中に入っていて、物語を読むように歌えたと思っています。

──開けるようなサビもすごく印象的です。自分を肯定してくれるようなブライトさと言いますか。

シユイ まるで「生まれた!」というような、気分が明るくなるサビですよね。OPテーマのamazarashiさんの「痛覚」が大好きでよく聴いているんです。ひりつくような痛みを感じるような曲なのですが、それが『終夜篇』にピッタリだなと思っていて。一方の「オーバーラップ」は傷ついた登場人物だけでなく、視聴者すらもまるごと抱きしめてくれるようなイメージなんです。なので『終夜篇』のエンディングでこの楽曲を聴いたら「ああ、良かった」と少し安心して寝られるような気がします(笑)。雪乃さんが手掛ける曲って口ずさみたくなるような、まるで水のような音で、心地が良いです。

──制作の過程で雪乃さんや、作詞された出口遼さんとの話で印象に残っていることはありますか?

シユイ 雪乃さんとはこれまでも何曲か一緒に制作させていただき、誕生日プレゼントをあげるくらいには仲良しなんです。出口さんとは今回のレコーディングで初めてお会いしたんですが、お二人とも『青の祓魔師』が大好きというお話をされていて。レコーディング当日に「あの場面が良いよね」など、作品に関する話で盛り上がりました。

『青の祓魔師』を通じて素晴らしいご縁をいただき、こんなにも良い楽曲ができて嬉しいです。しかもこの曲を多くの人が歌ってくれているようで、カラオケランキングで3位になっていた時もあったようなんです。シユイの楽曲の中でも歌いやすい部類の曲だと思うので、ぜひ皆さんにも歌ってほしいです。

──歌うときのポイントはありますか?

シユイ 前半は「大丈夫やで」と包み込むような気持ちで優しく歌って、後半は「いってまえ~!」って気持ちで、“塗り変えよう”の辺りはもう「殴りに行ったれ~!」くらいの勢いで歌うのが良いと思います(笑)。それと最近、「口を大きく開けて」というアドバイスをいただいて実践しているんですよ。特に「オーバーラップ」はここを意識することでより歌いやすくなるんじゃないかなと。

──ところで、「オーバーラップ」についての思いをXに手書きで投稿されていましたよね。とても達筆で驚きました。以前、手紙を書くのがお好きだとお話されていたことを思い出しましたが、今も手書きで想いを伝えることはよくされるんですか?

シユイ 実は昨日手紙を書いたところなんです。(インタビュー現在で)もうすぐ“棗いつき Birthday LIVE 2025”(1月18日)にゲスト出演させていただくので、その時に渡せたらなと彼女に3枚くらいに想いを綴って。やっぱり手紙って良いなと思いました。

──シユイさんの歌も、手書きの手紙のような温かさに近いものを感じます。日記も手書きで書かれているんですよね。

シユイ はい。いつもカバンに忍ばせていて……そのせいでいつも荷物が重いんですけど(笑)。ページにはみ出るくらい書いています。私、日本語が大好きなんですよね。

──どんな部分で日本語に惹かれるのでしょう?

シユイ 存在そのものが好きなんです。ライブに遊びに行くと、そのシンガーの方が放たれるシャボン玉のような音と形が魅力的だと感じます。日本語って柔らかいですよね。今回の曲もその柔らかさが出口さんのおかげで出ていると思います。

──そして「オーバーラップ」のシングルにはカップリング曲としてjon-YAKITORYさん作曲の「はちみつ」も収録されます。今回のシングル制作を振り返っていかがですか?

シユイ 雪乃さん、jon-YAKITORYさんともとても仲良くさせていただいていて、実は3人で飲みに行くこともあるくらい親しい仲なんです。だからこそ、どちらの曲も「友達が作ってくれた」という感覚があります。大好きな人たちが生み出してくれた楽曲だからこそ、愛情を込めて歌いたいなと思っていました。収録曲どっちも仲良しな人が作ってくれているシングルってなかなかないんです。なのですごく幸せな制作でした。シユイは本当に周りに恵まれていて、色々な方に愛情をいただいています。

──お話を伺っていくなかで、シユイさんは「シユイ」というアーティストをすごく俯瞰で見つめられているのを感じました。

シユイ そうですね。その傾向がさらに強くなってきているかもしれません。シユイはインターネット上の歌い手の1人としてのキャラクター性を持ちながらも、この世に生まれた個人として動いているなと感じていて、自分自身とは少し違うようにも思うんですけど自分が歌えばシユイが動くみたいな感覚です。

──最後に今年挑戦したいことを聞かせてください。

シユイ 東京以外の地域にライブしに行きたいです。今まで東京でしかライブをやったことがなかったので、今度は私から「ありがとう」の気持ちを届けに行けたらいいな、と。制作のことで言うと、いつか歌詞も書いてみたいですね。それと先ほどお話しした通り、最近歌う時に口を大きく開けるようにしたので、この歌い方で色々な楽曲に挑戦したいなと思っています。

──アニメ楽曲のタイアップも増えてきましたよね。今後も楽しみです。

シユイ 「オーバーラップ」を初めて聴いたときに「これは劇場版すぎる!」と思ったんです。すごく壮大で、これは映画館で聴きたいなって。これまでテレビアニメのタイアップを担当させていただくことが多かったのですが、今後は劇場版の主題歌を担当できたらいいですよね。結果的に映画館で自分の歌声を聴けたらいいなと思っています。

●リリース情報
「オーバーラップ」
2月26日発売

【初回仕様限定盤(CD)】

価格:¥2,000 (税込)
品番:AICL-4730
初回仕様:ジャケット絵柄ステッカー封入

【期間生産限定盤(CD+Blu-ray)

価格:¥3,500(税込)
品番:AICL-4731~2
アニメ描きおろしジャケット仕様、ジャケット絵柄ステッカー封入
©加藤和恵/集英社・「青の祓魔師」製作委員会

<BD>
TVアニメ『青の祓魔師 終夜篇」ノンクレジットエンディングムービー

<CD>
1. オーバーラップ
2. はちみつ
3. オーバーラップ (Instrumental)
4. はちみつ (Instrumental)
5. オーバーラップ (TV Size)

関連リンク

シユイオフィシャルサイト
https://www.shiyui.jp

シユイオフィシャルX
https://x.com/Shiyui_0111

シユイオフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCx36iGYN8RNvCHRTgEecjnQ

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