◆第87回オークス・G1(5月24日、東京競馬場・芝2400メートル)追い切り=5月20日、栗東トレセン

 見た目の時計ではない。スターアニス(牝3歳、栗東・高野友和厩舎、父ドレフォン)が気持ち良さそうに栗毛の馬体を弾ませる姿を見て、高野調教師は納得の表情を浮かべた。

「かなり満足いく追い切りだったと思います」。坂路で56秒0―12秒0と非常に地味だが、トレーナーは日頃から「追い切りだけが特別な調教ではない。普段の調整こそ大事」と繰り返している。

 メリハリを利かせるより、日々の細かな積み重ねが大事というスタンス。この日は中間6本目の時計になるが、実は56秒0でも最も速い時計だった。当週に52秒9―12秒1の桜花賞より3秒以上遅かったが、「桜花賞は思ったより速かった」と説明。今回こそが本来の形だ。

 2400メートルの距離が大きなカギを握る2冠目。高野師は「特別な何かをしたということはない」と言い切る。この日も今までの坂路追いと同じように1本目に72秒7とゆっくりと我慢させた後、2本目に時計を出した。厩舎の馬の多くが行っている2本乗り。ここには強い意図が隠されている。

 「他の馬が(速い時計で)追い切る横をゆっくり乗るのは人間も馬もきついです。ただ、このコースは思い切り行くだけと馬に思ってほしくない。常に主導権を人間に持たせて、(馬に)人間とのコンタクトに気持ちを向けさたせたい」。人と馬との親和性を高める調教は十分に行ってきて、確かな手応えがある。だからこそ、特別なことは必要ないように感じた。

 愛馬の距離適性は分からない。しかし、絶対能力が世代随一であることは分かる。「本当のパフォーマンスを100%出せる状態になっています。距離がもつかどうかということも含めて、大いに皆さんが自分を信じた予想をしていただけたらと思います」。穏やかな表情でファンへ語りかけた言葉に、2冠への自信が伝わった。(山本 武志)

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