3月1日に、竹達彩奈の12枚目のシングル「明日のカタチ」がリリースされた。表題曲は、彼女が銀髪の少女・ウィステリア役として出演するTVアニメ『ノケモノたちの夜』のOP主題歌で、作品に寄り添いつつも、誰もが共感できる楽曲になっている。
カップリングには10周年記念ソング「Endless Symphony」も収録。10周年イヤーの締めくくりを飾るシングルについて、たっぷりと語ってもらった。

INTERVIEW&TEXT BY 塚越淳一

孤独に寄り添える曲にしたかった
――TVアニメ『ノケモノたちの夜』、すごく面白いと思いながら拝見していますが、改めてウィステリアを演じて、現時点でどのような物語だったと感じていますか?

竹達彩奈 ウィステリアの成長物語だとは思うんですけど、彼女を中心に、周りのキャラクターたちも成長している感じがするんです。不老不死の大悪魔であるマルバス(CV.小西克幸)なんかは、彼女の前向きさとか、ひたむきで健気だけど芯が強いところを近くで感じて、それに影響されていますし。孤独な人たちが集まっているから、寂しい雰囲気とかツラいシーンも多いんだけど、心が温まるシーンもたくさんあるので、不思議な作品だなと思いました。ダークファンタジーだから戦闘シーンとかもかっこいいけど、胸がキュ~ってなるんですよね。それと、多くの作品で悪魔って敵側として描かれますが、この作品は味方側で描かれていて、人間側が敵というのも面白い見せ方ですよね。悪魔は怖いイメージがありますけど、悪魔にも色んな悪魔がいるんだなって思いますし、誰から見て正義で、誰から見て悪なのかというのはわからないものだなって感じました。これは作品だけでなく、すべてのことに対して言えることですけど。

――マルバスもナベリウス(CV.諏訪部順一)も大悪魔なんですけど、ツンデレでかわいいなって思いました(笑)。

竹達 そこが彼らのいいところで、愛おしいところなんですよ(笑)。

――ウィステリアは、自らの視力を対価にマルバスに助けを求め、彼と契約して盲目になりますけど、本当に芯の強い魅力的なキャラクターですよね。


竹達 普通に生活できていた……と言っても、物乞いをしながら生きていたから普通ではないかもしれないんですけど、目が見えていた頃に比べて、盲目になってマルバスと生きている時間のほうが、生き生きとして幸せそうだから、すごいなって思います。どんなことがあっても彼女は前向きだから、その姿に勇気をもらえます。

――誰か心を許せる人といることが大切なんだなと、作品を見て思いました。

竹達 それがウィステリアにとってマルバスで良かったですよね。

――今回は、主役であるウィステリアを演じて、さらにOP主題歌も担当されました。その話を受けたときはどうでした?

竹達 「わーい、やったー!」って感じでした(笑)。すごく嬉しかったんです。『ノケモノたちの夜』はオーディションを受けるときに原作を読ませていただいて、そこでファンになってしまったので、やりたいと思っていたんです。でもこの仕事は受からないことのほうが多いので……。でも、そこから役をいただけて、そのあとにタイアップのお話までいただいたので、ダブルでハッピーなことが舞い降りてきた感じで、すごく幸せな気持ちになりました。

――OPテーマ「明日のカタチ」はどのように作っていったのですか?

竹達 まず、どんな楽曲にしようかという話をポニーキャニオンの方々としたんです。そのときプロデューサーから「毛蟹さんという方がいて、この作品に合うと思うんですけどいかがですか?」と楽曲を何曲か聴かせていただいたんです。
それがすごく素敵だったので、ぜひお願いしたいですと伝えました。そのあとに毛蟹さんと、どんな曲にするかの打ち合わせをしました。そこで、作品の世界観は大事にしていただきたいというのと、孤独に寄り添える曲がいいですと伝えたんです。人間って誰しも孤独な部分があって、陽な部分だけじゃなく陰の部分もあるんですよね。そこを見つめ直したときに、誰もが「そうだよね、わかる!」みたいな感じになる曲がよかったんです。

――そういうダークな面もありつつ、温かさも感じるような曲でした。

竹達 温かさや切なさが曲にあったら嬉しいなって思っていたんです。戦ったりもする作品だし、オープニングだから、しっとりしすぎたり、暗くなりすぎるのも、それはそれでバランスが難しいじゃないですか。でも、切なさもありつつ疾走感のある不思議な曲が届いたので、そのときも、「わーい、やったー!」ってなりました(笑)。

――静かなところから始まるけど、サビでは疾走感がしっかりあるんですよね。

竹達 そのサビの疾走感にグッときてしまうんですよ。暗いところは暗いところで寂しさはあるんですけど、サビの疾走感でひたむきな芯の強さがにじみ出てくるので、そこにキュンときてしまって。


――OPアニメーションも暗闇をウィステリアが歩いているところから始まっていましたからね。

竹達 あの映像でフルのMVを作ってほしいくらいでした。これはこれで「明日のカタチ」のMVなんですよね。そのくらいぴったりでカッコいい映像でした。

――わかります。アニメ関係なく共感できる歌詞でありつつ、ものすごくアニメに寄り添ってもいるんですよね。

竹達 作品を好きな方も楽しんでいただけるし、普通に聴いても素敵な曲と思ってもらえる1曲になりましたよね!

――歌詞でグッと来た部分はありますか?

竹達 全部グッとくるんですけど、最初の“ハローハロー”が印象的でした。隣にいる誰かに言っているのではなく、一人ぼっちの世界で、まだ出会っていない誰かに言っている感じというのかな。届くかどうかもわからない誰かに対して言っている感じが切なくて。自分の心の中でつぶやくくらいの「ハロー」で、届くわけがないんだけど届いたらいいのにな……くらいの感じなんです。「ハロー」って本来は明るい言葉なのに、なんだか悲しい感じが、毛蟹さんの巧妙さだなって思いました。

――歌うときは、自分でそういうテイストにしたんですか?

竹達 どうだったのかなぁ。
結構前に録ったから覚えていないんですけど、サビに向かって盛り上がっていくまではポツリポツリじゃないけど、独り言みたいな感じを出せたらいいよねって話しながらレコーディングをしていたと思います。

――レコーディングには毛蟹さんもいらしたのですか?

竹達 はい。すごく緊張しながら録ったことは覚えています。打ち合わせはリモートだったので、実際にお会いするのは初めてだったんです。曲を作られた方がいる前で歌うプレッシャーってすごいんですよ。自分が大事に作った曲を人が歌うわけじゃないですか。それを託してもらって歌うという、何とも言えない緊張感があるんです。

――沖井礼二さんなら慣れているんでしょうけどね。

竹達 沖井さんとか小林俊太郎さんはよくお会いするし、ライブを一緒にやっている方なので、私が得意な部分と苦手な部分をわかっているんですよね。それをフォローしてもらえる安心感もある。でも、はじめましてだと、できないと思われるのがイヤで、怖いんです(笑)。託してもらったからには、できなければダメなわけですから。


――それで言うと、この曲はできているということですよね。

竹達 であればいいんですけど……。サビよりAメロやBメロに入っていくところがすごく難しくて。でもそれが毛蟹さんの楽曲の世界なので、それを表現することは、すごく刺激的で楽しいことでした。

――ピアノイントロから歌に入っていくところですね。

竹達 ピアノしかない、ガイドがほとんどない感じってこんなに難しいんだなと思いました。スッと入って、しばらく同じようなメロディが流れてBメロになるので、オケだけ聴いているとキッカケがないんです。ピアノの旋律に合わせて歌うしかないので、声が前に出ちゃう感じが怖かったです。

――そのピアノと声だけの感じが切なさになっていました。そこからオケも徐々に盛り上がっていきますけど。

竹達 最後のほうは盛り上がって、クライマックス感がありますよね。切なさもそのぶん、増し増しになったりするので。
あと、2番以降は聴いてほしいところなんですよ。歌詞も後半はすごく好きで、“もしも昨日に 昨日に戻れたって もう一度今日という日を選ぶのでしょう”という歌詞があるんですけど、きっとウィステリアは、何度昨日に戻ったとしても、自分の目を対価にしてマルバスを選ぶんだろうなと思ったんです。一人でいる昨日よりも、あなたといる今日、明日のほうが彼女にとっては価値のあることなんだなっていうことが、この歌詞に詰まっている気がするんです。

――ウィステリアって藤の花を意味する単語でもありますが、竹達さんがツィッターで「ウィステリアの花言葉はいくつかありますが、印象的なのは『決して離れない』。」とおっしゃられていて、ぴったりだと思ったんです。

竹達 そうなんですよ!作品で藤の花はまったく出てこないんですけどね(笑)。それをジャケットやMVに出すのは、私のこだわりだったんです。ウィスエリアだけ見ると白とか銀色のイメージがあると思うんですけど、私は絶対に藤の花で撮りたいんだ!ってポニーキャニオンさんに言って(笑)、撮らせていただきました。

――ジャケットはイメージ通りだったのですね。MVも藤の花推しでしたが、見どころは?

竹達 最初はモノクロで、一人の部屋で口ずさんでいる印象的なシーンが続くんですけど、個人的には、自分の手を出して、黒い影とクロスして手を繋ぐシーンがエモエモのエモで、すごくお気に入りのシーンです。それをどう受け取るのかは、見てもらう方の楽しみだと思いますけど、私はそこがお気に入りです。



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「Endless Symphony」は最高の1曲
――カップリングには10周年を記念したデジタルシングル「Endless Symphony」も収録されています。作詞・作曲が沖井礼二さん、編曲がNew Old Stock(沖井礼二&小林俊太郎)。お二人は竹達さんと共に歩んできた盟友とも言えると思いますが、この曲のMVは、竹達さんのこれまでの軌跡が詰まったスペシャルなものになっていましたね。

竹達 MVを見て、よく頑張ったねって自分を褒めてあげたいと思いました(笑)。本当にたくさんの方が力を貸してくださって、すごく素敵な作品がたくさん生まれていたんだって思い、感動しました。10年って、やっぱり長いんだなって。10年続けられる未来は想像していなかったし、それこそ異動が多いポニーキャニオンさんで、担当さんが替わるたびに「もうダメだー」って思っていたので(笑)。でも歯を食いしばりながら進んできたなぁって感じがします。

――色々なことがあったと思うんですけど、当時から変わったことってどんなことですか?

竹達 自分の意見は言うようになりました。始めてばかりの頃はわからなくて、言われるがままに「はい」と言ってきたんです。それこそ深夜11時に「これからTD(トラックダウン)やるけど、来ますか?」って言われて「はい、行きます」と言って行ったり。終わるの何時になるんだよ!って感じじゃないですか(笑)。でも何でも、見なければいけないと思ったし、知らないから知らなければいけないと思っていたんです。そのあと、すごくお世話になった担当さんが替わってしまったときは、どうしていいかわからなくなってしまったんですけど、そこからだんだんと、ちゃんと自分を持っていないとダメなんだなと思うようになって。というのも担当さんが替わると、竹達彩奈をどう見せたいのかっていうのが変わってきちゃうんですね。もちろん化学変化というのもあって、いろんな色が生まれるから、違う方と一緒にやることで生まれる化学変化はいいんですけど、それも自分の芯がなければ、自分が消えてしまう。そこから自分はどうしたいかというのを、はっきりと伝えるようになりました。そこが大きかったかなと思います。

――でもTDに呼ばれるということは、音楽的なことをかなり真剣に考えてくれていたんですね。

竹達 初期はそうでした。最初にそうやって叩き上げてくれたから今があるというか。今に繋げてこれたのかなって思います。それこそ、一番初期のチームに与えてもらった愛情が、今でも自分のパワーになっています。

――チームの中には、クリエイターの小林さんや沖井さんも含まれていると思いますが、その2人の存在も心強いですよね。

竹達 そうなんです。俊太郎さんに関してはライブでもずっとバンマスとしていてくださるので。ライブがあるたびに、私がうじうじするんですけど、何度も一緒に練習してくれたり、付き合ってくれたりするんですよ。だから一緒にライブをするのが楽しいんです。最初の頃は、みんなと目を合わせるのも怖かったのに、今は全然平気です(笑)。

――「Endless Symphony」は、イントロからデビュー曲の「Sinfonia! Sinfonia!!!」のフレーズが聴こえてきたりして、本当に愛の詰まった曲でしたが、どんな気持ちで歌ったのですか?

竹達 どんな気持ちで歌ったかと聞かれると、正直、これが最後でもいいかなと思うくらいの気持ちだったんです。レコーディングしたときは妊娠もしていて、環境も変わるから、音楽活動もやれるかわからないと、自信がなかったんです。だからこれが最後でもいいくらいの気持ちで挑んだんですね。それは沖井さんと打ち合わせをしたときも言った気がします。この曲が最後になるかもしれないから!(笑)って。

――でも、すごくこれまでとこれからを感じさせる歌詞じゃないですか!

竹達 そうなんです。だから沖井さんも、これは祝祭の曲だから、終わりじゃない!みたいな(笑)。でも私はそのとき、未来がわからなかったんです。記念すべき10年という節目だし、やめるなら今かな?と考えたりしていて、結構悩んでいたんですよ。なので気持ち的には最後でも仕方ない!くらいの想いは込めています。楽曲的には、それこそ「Sinfonia! Sinfonia!!!」から「Hey!MUSIC BOYS&MUSIC GIRLS」「リズムとメロディの為のバラッド」を経て「Endless Symphony」へ繋がっていくんですけど、10年という時を、大人な感じに仕上げてくださった楽曲で、歌いながらこみ上げてくるものはすごくありました。レコーディングも俊太郎さんと沖井さんが一緒にいて、すごく懐かしてくて楽しかったんです。みんなそのときから環境が変わっていたりして、俊太郎さんには子供もいるわけですよ。私のデビュー当時はいなかったのに。そんな私たちが集まって、一緒に楽曲を作って、しかも10周年をひとまとめにしたような曲を歌えるって、最高じゃない?って思いました。本当に最高の曲ができたと思います!

――ということは、今はまたライブハウスツアーやりたいなっていう気持ちになっていたりします?

竹達 環境が落ち着いたら、ライブもできたらなぁって思っています。あとはポニーキャニオンさんがどう考えているかです(笑)。筋トレはしているので、私は頑張ろうかなという気持ちでいます。

――その言葉だけでも嬉しいです。「明日のカタチ」のMVを見たとき、今が一番美しいんじゃないかと思うくらい、輝いて見えたので。

竹達 ホントですか? それは嬉しい! 私の今の人生のテーマが、どんなに歳を重ねてもキラキラしたいなってことなんです。それは外見を若く見せたいとかではなく、内側から出てくるエネルギーというか、命の輝き? 魂の輝きみたいなところでキラキラ輝いていたいと思っているんです。なのでそう言ってもらえるのは嬉しいです。常にいろいろなものを吸収して、いろいろなものを与えられる、エネルギーのある人になりたいなって思います。

●リリース情報
竹達彩奈12thシングル
「明日のカタチ」
3月1日発売

【初回限定盤(CD+Blu-ray)】

品番:PCCG-02220
価格:¥2,200(税込)

【通常盤(CD Only)】

品番:PCCG-02221
定価:¥1,500(税込)
*描きおろしアニメイラストジャケット仕様

<CD>
M1. 明日のカタチ(TVアニメ「ノケモノたちの夜」OP主題歌)
作詞・作曲・編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
M2. Endless Symphony
M3. 明日のカタチTV size ver.
M4. 明日のカタチ Instrumental
M5. Endless Symphony Instrumental

<BD>
・「明日のカタチ」MUSIC VIDEO
・「明日のカタチ」MUSIC VIDEO MAKING

●アニメ情報
TVアニメ『ノケモノたちの夜』

TOKYO MX 毎週日曜22:00~
読売テレビ 毎週月曜26:29~
BSフジ 毎週火曜24:00~

【スタッフ】
原作:星野 真 「ノケモノたちの夜」 (小学館「少年サンデーコミックス」刊)
監督:山本靖貴
シリーズ構成:山下憲一
脚本:山下憲一、ハラダサヤカ、山本靖貴
キャラクターデザイン:大沢美奈
モンスターデザイン:鈴木勘太
総作画監督:大沢美奈、鈴木光
美術監督:加藤靖忠
美術設定:泉寛
色彩設計:山上愛子
撮影監督:大槻綾子(アニモキャラメル)
編集:宇都宮正記
音響監督:山本靖貴
音響制作:スタジオマウス
音楽:堤博明、橋口佳奈
音楽制作:ポニーキャニオン
アニメーション制作:葦プロダクション

【キャスト】
ウィステリア:竹達彩奈
マルバス:小西克幸
スノウ:逢坂良太
ダイアナ:今柳りさ
ナベリウス:諏訪部順一
団長:置鮎龍太郎
タケナミ:熊谷健太郎
アスタロト:小林ゆう
ルーサー:小野友樹
ダンタリオン:武内駿輔
シトリ:松岡禎丞
モリー:森永千才
ハリエット:小田果林
ホームズ:古川 慎
ワトソン:阿部 敦
イベルタ:高島雅羅
スタンリー:高橋英則
ビビアン:佐伯伊織
ルシア:伊藤 静
シュラ:西山宏太朗

(C)星野真・小学館/「ノケモノたちの夜」製作委員会

関連リンク
竹達彩奈オフィシャルサイト
https://ayanataketatsu.jp/

TVアニメ『ノケモノたちの夜』公式サイト
https://nokemono-anime.com
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