次世代ガールズバンドプロジェクト「BanG Dream!(バンドリ!)」発の“現実(リアル)”と“仮想(キャラクター)”が同期するバンド、MyGO!!!!!。彼女たちの“迷うことを迷わない”物語を描く新作アニメーション『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』が、この夏、ついに開幕した。


リスアニ!では、そんなアニメの魅力を音楽面を軸に掘り下げる連載特集を展開。連載第3回となる今回は、MyGO!!!!!のボーカリスト・高松 燈役を演じる声優の羊宮妃那と、第7話のMyGO!!!!!バージョンによるライブも話題となった劇中歌「春日影」やEDテーマ「栞」の作編曲を担当した音楽家・藤田淳平(Elements Garden)による対談を実施。それらの楽曲のレコーディング話を中心に、藤田が手がけた本アニメの劇伴の話題、羊宮が燈として歌う際の心構えなど、ディープなトークを繰り広げてもらった。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

2つのバージョンが生まれた「春日影」のレコーディング&制作秘話
――まずは藤田さんに、MyGO!!!!!のプロジェクトおよび今回のアニメの音楽制作のお話をいただいたときの印象をお伺いしたいです。

藤田淳平 確か最初にお話をいただいたのは3~4年くらい前のことだったのですが、コロナの影響もあってか一度進行が止まった時期があって、その間に内容もブラッシュアップされて、最終的に今の形のアニメのプロットをいただいたのは去年の春くらいのことでした。それを拝見したところ、キャラクター1人1人の内面にしっかりとフォーカスを当てた内容になっていて、今までにないものを感じましたね。
音楽性の部分で言うと、去年の7月に1st LIVEを観させていただいたのですが、メンバー5人でしっかりとグルーヴを組み立てていて、しっかりバンド感を感じました。

――そのときにはもう羊宮さんと面識はあったのですか?

藤田 1st LIVEの1年くらい前にキーチェックで一度お会いしていました。キーチェックのときはすごく柔らかい声の方という印象があったのですが、実際にライブで歌っているのを観ると、バンドの音としてはラウドな方向性にも関わらず、歌声がバンドの音圧に負けていなくて、今までに聴いたことのない面白さを感じましたね。

羊宮妃那 ありがとうございます。キーチェックのことはよく覚えていて。そもそも私はキーチェック自体が初めての経験だったので、自分の「あー」という声を聴いてもらってキーを確かめていただく、身体測定みたいなことをするのかなあと思っていたんです。


藤田 「あ~あ~あ~あ~あ~♪」でどこまでの音域が出るか、みたいなことですね(笑)。

羊宮 そうしたら、その場で試しに歌を収録してみるというお話になって。

藤田 そうでしたね。そのときには既に「春日影」も「栞」も作っていたので、一応、録ってみようということで。そのキーチェックでは他の曲も含めて歌っていただいた結果、どの楽曲も想定したよりもキーが上がったんですよね。なのでライブで歌うときに大変になるんじゃないかと少し心配していたのですが、実際に本番で聴くと、ご自身のスイートスポットに当たる音域になっていて、さすがだなと思いました。


――「春日影」と「栞」はそんなにも前から作っていたんですね。

藤田 「春日影」に関しては、CRYCHICの楽曲でのちにMyGO!!!!!としても歌うことになる、というのは最初に決まっていましたね。なおかつ、普段であれば9割がた、曲を先に作るのですが、この2曲に関しては織田あすかの歌詞が先にあって、詞先で作ったので、思いがけず作品とリンクすることになりました。

――MyGO!!!!!とCRYCHICの楽曲は、まず(高松)燈の歌詞・言葉があったうえで制作される流れですものね。ということは、「春日影」はCRYCHICの楽曲という背景と歌詞の内容を踏まえて制作されたのでしょうか。

藤田 はい。
「春日影」は3拍子の曲で、歌詞の言葉、特にサビの“きらりきらり”というフレーズを見たときに、そのリズム感が浮かんできたんです。そこを頼りにサビからBメロ、Aメロと遡って制作しました。なおかつ、多少言葉数が多いなと思った部分が、逆にいつもとは違う仕上がりになったと思います。あとは「CRYCHICにおける大事な楽曲」というテーマ性、燈が1人で言葉を書き留めていたところに仲間が集まっていくということも大切にしています。



――「春日影」は第3話でCRYCHICバージョンが初登場して、その後、第7話でMyGO!!!!!バージョンが披露されました。CRYCHICバージョンについては連載の第1回でお話しいただきましたが、改めて歌う際に意識したことや差異について、羊宮さんにお伺いしたいです。


羊宮 第7話のMyGO!!!!!バージョンに関しては、また別のベクトルの決意があったのと、CRYCHICとして歌ったときに比べると燈ちゃんもそれなりに歌い込んでいるはずなので、それまでに自分が歌ってきたMyGO!!!!!のオリジナル楽曲でのクセを、あまりやりすぎない程度に当てはめるようにしました。それとCRYCHICバージョンではしゃべるように歌うことを意識したのですが、MyGO!!!!!バージョンではちゃんと歌としてうたうようにしました。

――藤田さんはレコーディングのとき、羊宮さんの歌にどんな印象を受けましたか?

藤田 言葉を歌にする表現力が高いなと感じました。僕は基本、キャラクターソングの場合、演じている方の歌い方にお任せすることがほとんどなんですね。「春日影」のレコーディングのときには、すでにMyGO!!!!!はライブも経験してバンドとして出来上がっていたので、歌い方についても割とお任せで何パターンか歌っていただいて、その中からテイクを選んですり合わせていくやり方でした。CRYCHICバージョンに関しては、下を向いて歌っていそうなニュアンスで歌っていますよね。


羊宮 そうなんです!このときの燈ちゃんは多分、まだうつむきながら歌うだろうなと思って。ラスサビのところも、あまりやりすぎず、でも心の叫びみたいなものが乗るように、皆さんとすり合わせしながら歌わせていただいたのを覚えています。CRYCHICバージョンはそうやって微調整を重ねたのですが、MyGO!!!!!バージョンのほうは、その時点でライブも経験していたので、少しだけ調節しつつ、CRYCHICバージョンとまた違った歌い方をさせていただいております。

藤田 でも、CRYCHICバージョンのほうも、演出として拙さの残るような歌い方をしていただきながらも、響くものがある歌になっているんですよね。だからこそ作品の中でも絶賛されるわけですが、そういった表現ができることがすごいですし、どちらのバージョンもぜひ聴いてほしいですね。

――また、CRYCHICバージョンとMyGO!!!!!バージョンは、それぞれのバンドの楽器編成に合わせたアレンジになっています。こちらはどんな工夫を心掛けましたか?

藤田 まずCRYCHICバージョンのほうから制作したのですが、僕はピアノのほうが得意な人間なので、イントロのフレーズに関してもピアニストが発想するようなフレーズで作って固めたうえで、それをMyGO!!!!!の楽器の割り振りに合わせる形でMyGO!!!!!バージョンのアレンジをしました。それとこの楽曲は上品な作りにしたほうがいいと思ったので、CRYCHICバージョンにはオルガンやグロッケンなども入れています。


EDテーマ「栞」の歌に込めた想い、燈として歌い、ステージに立つということ
――EDテーマの「栞」に関しては、どのように制作を進めたのでしょうか。

藤田 この楽曲に関しては、(柿本広大)監督から「こういう音楽にしたい」という明確なオーダーをいただきました。アニメの内容上、各話ごとに色んなテンション感で終わるので、聴くと少しほっとするような、でも違う意味で捉えると寂しくも感じるようなものを求められていて。その意味でフォークっぽい曲調、アコギ一本で歌えるような沁みる曲にしたいというお話だったんです。なのでシンガーソングライターの人がギターを弾きながら言葉を紡ぐような感覚をイメージして作りました。

羊宮 私はキーチェックの段階から「栞」が好きだったのですが、アニメを観ている方の中にも、毎話、この楽曲に救われている方がたくさんいらっしゃると思うので、今のお話を聞いて「うんうん!」とたくさん頷いてしまいました。



――確かに1番はアコギのみを伴奏にしたアレンジですが、2番以降はパーカッションやベースが加わるアレンジになっていますよね。

藤田 まずワンコーラスを制作して、そこからフルコーラスを作るにあたって、どこまで楽器を増やすべきか、というご相談をさせていただきました。というのも、ライブで演奏することを考えると、ギター以外のメンバーがやることも必要なので。その塩梅を考えるなかで、パーカッションをカホンに、ベースをフレットレスのような柔らかい音色のもので構成することをご提案いただき、今の形に落ち着きました。監督からは最初、「間奏はハーモニカを入れましょう」というお話もあったんですよ。実際にそうするとしたら、ハーモニカは燈ちゃん役の羊宮さんが吹くことになったと思うんですけど(笑)。

羊宮 えっ!私がですか!? もしそうなったときは私も全力でハーモニカを練習します(笑)。

藤田 ただハーモニカを入れると、ちょっとブルース寄りになってしまうということで、無しになりました。珍しいところではメロトロンという、いわゆる磁気テープを使った昔のサンプラー的な楽器を使っていまして。テーマ的にすごく合うと思ったんですね。

羊宮 どんな楽器なんですか?

藤田 磁気テープにストリングスの音とかを録音しておいて、その音を鍵盤で音階を付けながら弾くことのできるもので、ザ・ビートルズがよく使っていた楽器なんです。温かみみたいなものを表現するにあたって、すごく効果的な楽器なんですね。なので「栞」に合うんじゃないかと思って入れています。

――メロトロンの音が入ることでノスタルジックな雰囲気も演出されていますよね。この歌のレコーディングでお二人が印象に残っていることはありますか?

藤田 「栞」に関しては自分は「いいですね!」くらいしか言っていないですね(笑)。燈ちゃんが歌っているニュアンスをそのまま表現されていた印象で。「春日影」のMyGO!!!!!バージョンと比べると、「栞」のほうが優しさや慈しみがあるように感じられて、また違ったニュアンスを受けました。それと羊宮さんは伸ばすときの音が上手いですよね。

羊宮 ありがとうございます!

藤田 “悲しみにすべてを奪われないように”の語尾の伸ばし方も独特で。高いところで張るんだけど、響きはマイルドなんですよね。“誰にも叱られはしないから”のところも高い音は張るんだけど、強いイメージはあまり与えずに、優しく柔らかく耳に飛び込んでくる感覚があって。そこが声の特徴になっているように感じます。

――そういった「強さ」と「マイルドさ」を併せ持ったような歌声というのは、羊宮さんとしては燈らしい歌声を意識して作っているものなのでしょうか。

羊宮 前提として、歌の練習のときは録音して聴き返すことを繰り返しやってきたのですが、燈ちゃんとして歌を残すレコーディングをするにあたっては、音も大事なのですが、燈ちゃんが何を思って歌っているのかを一番大切にしていて。例えば「栞」のサビでも、ちょっとひねくれて歌ったときと、悲しみに溺れて自分しか見えていないときに歌ったとき、世界はキラキラしていると心から感じながら歌ったときとでは、全然違っていて。燈ちゃんが何を思ったときにこの言葉が出たのか。それを大切にして歌うと、自然とそういう音や歌い方になっているように思います。

――特別に意識して作っているのではなく、燈の気持ちとして歌うと必然的にそうなると。

羊宮 あと一番嫌なのは、例えば「燈ちゃんの歌を聴いてすごく救われました」といったコメントをいただいたとき、私が音にだけこだわって歌っていたとしたら、それは救われたと感じてくださった方を裏切ることになるんじゃないかということで。MyGO!!!!!の楽曲を聴いてくださっている方は、自分なりの考察をして、色んな意図を汲み取ってくださっていると思うのですが、それが全部「音」の話だったということで片づけたくないんです。中身がないもので救われたんだと、そんなふうに片付けてしまいたくないです。そこには燈ちゃんの想いがしっかりと乗っているものにしたい、だからこそ皆さんが感じてくださったことは薄っぺらいものなんかじゃない。歌うときには大切なものを込められるようにしています。自分の思っていた解釈と違っていた場合は、「なぜ燈ちゃんはそういう風になるのか」ということを細かくすり合わせさせていただいて、それを落とし込んでから歌うようにしています。



――ちなみに「栞」は先日のアコースティックライブでも歌われたそうですが、初めてお客さんの前で歌ったときの印象についても教えていただけますか?

羊宮 印象……どうなんでしょう? ライブは毎回レコーディングとはまた違ったアプローチになって、例えば今回であれば、アコースティックライブをMyGO!!!!!のみんなで披露するうえで、燈ちゃんだったら何をテーマにして届けるのか?ということを考えるんです。今回の「栞」でいうと、救ってあげたい気持ち、「全部僕だよ、大丈夫だよ」って1人1人を見るイメージなので、「そのときの感情は?」と聞かれると答えられるのですが、「そのときの印象は?」と聞かれても、客観視している自分はほんの少ししかいないので、何がどうだったかまでは正直わからないんです。

――なるほど。これは好奇心で聞くのですが、そのときに抱いている感情というのは、「燈としての羊宮妃那」の感情なのでしょうか。

羊宮 難しいですね……。燈ちゃんとして歌うとなると、私としては歌えないので……でも、それこそ、その場で生まれるものもあって。そのライブで目が合った人がいたのですが、本当に目線を逸らさずジーッと見てくれたんです。そのときは、やっぱり嬉しくなりました。それが私本人なのか、燈ちゃんなのかは、正直わからないんですけど(笑)。でも、多分、燈ちゃんは歌っているとき、普段の燈ちゃんではなくなる子なので、そういう状況になったときは気持ちを伝えることに必死で、「目が合っている」という事実を認識せずに「目を合わせている」と思うんですね。なので、そういうときは、伝えきるまでは「目を逸らさない」ようにします。

――……すごいですね。そこまで考えたうえで、燈としてステージに立ち、歌っているとは。

羊宮 でも、これもレコーディングなどで色んな燈ちゃんの姿を知ったうえで至ったもので、それこそ私1人では思いつかなかったことだと思います。

――連載の第1回で、燈を演じる際は「憑依型」か「客観視型」かという話題がありましたが、今のお話を踏まえると、ステージに立っているときの羊宮さんは「憑依型」なのかなと思いました。

羊宮 どうなんでしょうね。でも、その子がその場で生きられるのであれば、どちらを使ってでも、そうなっていきたいです。

「人間になりたいうた」を通して見えた、羊宮妃那と高松 燈の繋がりと対照性
――もう1曲、第3話で燈のノートに書き留めていた言葉を受けて(豊川)祥子が即興で歌った劇中歌「人間になりたいうた」の制作エピソードについてもお聞かせください。

藤田 (シリーズ構成・脚本の)綾奈(ゆにこ)先生が脚本に沿って書いた言葉が先にあったので、それを元に作曲しました。先に「春日影」を作っていて、MyGO!!!!!に対する自分なりのメロディの書き方を掴めていたので、それにのっとりつつ作曲しています。即興で作られる楽曲でもあるので、自分もピアノで30分ほどで作ってみようと思って(笑)。歌詞のテーマ自体が「人間になりたい」という重めなものだったので、楽曲は逆に重い感じにはしたくなくて、多少軽やかでポップな雰囲気を意識して制作しましたね。

羊宮 「人間になりたいうた」は燈ちゃんの本当に負の部分というか、負にもなれなかった部分というイメージがあって。“同じものを見ているのに違うらしい”とか“ああ 人間になりたいな”っていう、独り言のような、誰かに届けたいわけでもなく、ただそう思っていて誰にも伝わらない思い。これがMyGO!!!!!の奥底にあるものなのかなと思いますし、そういう部分が燈ちゃんらしいなと、すごく思うんです。原点にして、これが燈ちゃんの叫びだったんだろうなと思います。

――少し話は逸れますが、羊宮さんは楽曲を作るのが趣味というお話ですよね。この「人間になりたいうた」のように、誰にも届かない独り言みたいな楽曲を作ることもあるのでしょうか。

羊宮 あります。それこそ、これは自分の闇だなと思った1曲があって(笑)。「人間になりたいうた」みたいに、急に口から出るようにサビができたんです。それは別に誰に届けたいわけでもなくて、ただただ自分の中だけのものなんですけど……多分、否定も肯定もされたくないんです。仮に肯定されたとしても、きっとすべてを肯定することはできないし、否定されたらその居場所がなくなるだけだし。自分でしか大切にできない場所があるので、私はそう思いながら、自分の歌を作っている気がします。

――その話を聞くと、ますます羊宮さんは燈と似ているように感じます。

羊宮 でも、燈ちゃんと私の違いは、自分を偽れるか、偽れないかだと思います。私が役者をできているのは、偽れるからであって。燈ちゃんは偽れないから、こうやって歌にしているんですよね。それが燈ちゃんと似ている部分であり、真逆の部分だと思います。


MyGO!!!!!の迷える物語をドラマチックに彩る劇伴のこだわり
――藤田さんは今回のアニメの劇伴音楽についても、藤間 仁(Elements Garden)さんと共同で担当されています。全体的にどんなことを意識して制作されたのでしょうか。

藤田 監督と打ち合わせをしたときに、この作品は心情に対するシーンが多めになるというお話をいただいて。実際にメニュー表を見てもそういう楽曲が多かったので、作品の性質上、ハリウッド映画のような重たい手法は合わないと考え、音数を少なくして、1つ1つの楽器の粒が立つような楽器構成で臨みました。



――これまでの「バンドリ!」のアニメシリーズの劇伴と変化をつけた部分、逆に「バンドリ!」らしさを意識した部分はありますか?

藤田 これまでの「バンドリ!」のアニメの劇伴は、上松(範康/Elements Garden)の方針もあってメロディが強めな構成にしていたのですが、今回のMyGO!!!!!のアニメに関してはメロディをおとなしめにしていて。ただ、(千早)愛音ちゃんのようなキャラクターもいてコミカルで楽しいシーンもあるので、そういう場面の楽曲では「バンドリ!」なりの楽しさも表現したくて、アニメ第1期の頃の劇伴のような、ポップなエッセンスを踏まえたメロディを書くようにしました。それと今までのシリーズとの一番の違いは、キャラクターごとのテーマBGMがあることです。各キャラクター版のCMで流れる音楽がまさにそれなのですが、実は今までの「バンドリ!」のアニメでは、キャラクターに合わせたテーマがなかったんですね。このキャラクターテーマというのがなかなか難しくて、MyGO!!!!!のライブを観ていたので、劇伴を作り始める前に各キャラの特徴を掴むことはできたのですが、作ったテーマが実際にどのシーンで流れるのかはわからないので、キャラクターのどの部分を切り取った音楽にすればいいのか判断が難しいんです。なので(椎名)立希のテーマや(若葉)睦のテーマ、藤間くんが作った(長崎)そよのテーマも当初のものから何度か作り直しました。

羊宮 1つお聞きしたいのですが、そういったテーマはキャラクターを優先して作られるのか、視聴者の方が聴いて変な疑いをかけないように作られるのか。どちらを優先されていたのですか?

藤田 それは音の当て方によって変わるところだと思っていて。今回は全部で50曲くらいの劇伴を作ったのですが、基本的に映画のようにシーンに合わせて書くのではなく、事前にいただいたメニュー表の指定に合わせて書いていくんですね。なので、実際に想定したシーンでは使われずに、まったく違うシーンで使われることもあるんです。そうすると、使われ方によってはミスリードになるかもしれなくて。例えば、そよが指を触るシーンは、毎回思わせぶりな音楽が流れているのですが、それは監督から言われて狙い通りに作ったものですし、逆に第5話の最後、燈ちゃんと愛音ちゃんが手を繋いでいるシーンで流れた楽曲は、「ここで使うんだ」と思いましたし。

羊宮 そうなんですね。私、第5話のあのシーンは観ながら、「感動してくる!すごい!」と思って。音楽からも何かを乗り越えようとしているふうに感じました。

藤田 あれは「真っ直ぐな想い」という曲で、MyGO!!!!!のアニメ劇伴のテーマとして一番最初に作った楽曲なんです。劇伴の中でも尺が一番長くて。

羊宮 確かに真っ直ぐでした!

――お二人が第7話までの放送のなかで、印象に残っている劇伴のシーンを挙げるとすれば?

藤田 第3話の燈の幼少期のシーンは、あらかじめカッティングの映像をいただいていて、「ピアノ始まりでこんな風に描いてください」という指定をいただいていたので、それに合わせて藤間くんが曲を作ったんです。本放送を観ると、映像も演技もブラッシュアップされていて、すごく良く表現できているなと思いました。それと愛音ちゃんの留学のシーンの曲も、映像はまだコンテの状態でしたが、声が入っていたので、映像を観ながら、彼女の心情をエレクトリックピアノとバイオリンで当てていきました。

――フィルムスコアリング的な手法で作られた楽曲もあったんですね。

藤田 はい。あのシーンは僕も愛音ちゃんの気持ちがすごくわかったんですよね。僕は20歳のときに、ストーンヘンジが見たくて、初めて1人でロンドンまで海外旅行したのですが、言葉が通じなくて色々悔しい思いをしたんです。なので愛音ちゃんの留学シーンの音楽を作るときは感情移入しました(笑)。

羊宮 これはメンバーとも話していたんですけど、私はそよちゃんが祥子ちゃんを追いかけて坂を下っていくシーンで流れる、慌ただしくも、お嬢さま同士の品のあるような音楽が印象に残っています。すごく華麗で品のある「トムとジェリー」みたいな感じがして(笑)。でも、慌てているそよちゃんの心情にも合っていたね、という話をみんなでしていました。

――ありがとうございます。最後に今回のアニメを通じて感じたMyGO!!!!!の音楽において核になっているもの、制作や歌唱において大切にすべきことについて、お二方の所感をお聞かせいただけますでしょうか。

藤田 「バンドリ!」に関しては、『BanG Dream! Morfonication』や劇場作品を含め、連続で劇伴をやらせていただいているのですが、向き合い方は「バンドリ!」に限らずどの作品に対しても同じで、いかに監督や作品が表現したいものを掴んだうえで、自分の中で分解して、自分なりの解釈でプロデュースして、そのオーダーに対して120点で打ち返すことを大事にしています。それとMyGO!!!!!に関しては、1st LIVEと2nd LIVEを観たうえで劇伴を作ることができたので、すごく力になりました。メンバーの皆さんが徹頭徹尾しっかりした表現をしていて、ちゃんとキャラクターが歌って演奏していることを見せられたので、その思いは大事にしたいと思いましたね。

羊宮 私はMyGO!!!!!の音楽の核にあるのは「みんなの迷い」なのかなと感じています。アニメを観ていない人、広告でMyGO!!!!!に触れてくださった方であれば、「かわいい子たちだな」という印象で終わると思うのですが、みんな目に見えるだけではない、何かしらの迷いがあって。そこから湧き上がってくる歌詞や音楽、耳から聴こえて伝わってくる「みんなの迷い」が音に乗っているのがMyGO!!!!!の音楽であり、燈ちゃんたちの心の叫びになっていると思うので、「みんなの迷い」は欠かせないものだと……思います……私が作っているわけではないので偉そうなことは言えないですが(苦笑)。

――でも、それこそ歌の部分では羊宮さんが表現を担っているわけで、歌うにあたっても、その音楽に「迷い」が含まれていることを大切にされているのかなと思ったのですが。

羊宮 燈ちゃんがもしその「迷い」を大切にするのであれば、私も大切にしたいです。「燈ちゃんとしての歌唱において大切にすべきこと」で言うと、私は「燈ちゃんが大切にしたいことを大切にする」ということが、私自身が燈ちゃんになることに繋がることだと考えていて。歌唱にあたっては、最初の頃は「燈ちゃんの感情にフォーカスする」だったのですが、今では、「燈ちゃんが見ている景色」に第三者が増えてきた気がするんです。それこそ「無路矢」は“君と響きあえるなら その音で”と歌っていますし、「音一会」では“君”に出会えたから見ることのできた景色を歌っていて。最初の頃の「迷星叫」や「名無声」では、自分だけの視点でしか見られていなかったものが、人を通じて、その人たちと見てきたものが歌詞になっていたりするので、その意味で今は、「燈ちゃんを大切にする」ではなく「燈ちゃんの大切なものを大切にする」というのが燈ちゃんを大切にすることになったのだと思います。

――ライブなどの経験を経て、燈の視点が増えた、もしくは、視野が広がったんでしょうね。

羊宮 きっと右に左にと迷っている間に広がったんだと思います(笑)。でも、迷ったから色んな視点を見つけたという意味では、きっと「迷い」というのも大切なんだと思います。

藤田 うまいことまとまりましたね、素晴らしい!(笑)。

●作品情報
アニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』
放送局(※放送時間は編成の都合により変更になる場合がございます)
・TOKYO MX
毎週木曜23:00~23:30

・テレビ愛知
毎週木曜25:30~26:00

・サンテレビ
毎週木曜24:30~25:00

・静岡放送
毎週木曜25:25~25:55

・BS日テレ
毎週木曜24:00~24:30

・AT-X
毎週金曜22:30~23:00
リピート放送:毎週火曜10:30~11:00、 毎週木曜16:30~17:00

・北海道テレビ
初回7月2日(土)#1:26:30~27:00
#2以降:毎週土曜日26:30~27:00

・新潟テレビ21
初回7月6日(木)#1~#3:26:15~27:45
#4以降:毎週木曜日26:15~26:45

・北陸朝日放送
初回7月8日(土)#1:26:30~27:00
#2以降:毎週土曜日26:30~27:00

30分先行配信
ABEMA
毎週木曜22:30~23:00

配信
ABEMA
dアニメストア
U-NEXT
アニメ放題
バンダイチャンネル
Hulu
ニコニコ
ビデオマーケット
music.jp
DMM TV
ふらっと動画
TELASA
J:COMオンデマンド
milplus
スマートパスプレミアム
Amazon Prime Video
FOD
カンテレドーガ

●リリース情報
MyGO!!!!! 3rd Single
「壱雫空」
8月9日発売

【Blu-ray付生産限定盤】

価格:¥7,700(税込)

【通常盤】

価格:¥1,760(税込)

<CD>
1.壱雫空
2.栞
3.焚音打
4.壱雫空 -Instrumental-
5.栞 -Instrumental-
6.焚音打 -Instrumental-

<Blu-ray>
・MyGO!!!!! 3rd LIVE「声を抱えて生きる」

初回生産分限定封入特典
・BanG Dream! 12th☆LIVE DAY2 : MyGO!!!!! 最速先行抽選申込券
・オリジナルキャラクターカード1枚(限定盤イラストver. 全5種) ※Blu-ray付生産限定盤のみ
・オリジナルキャラクターカード1枚(通常盤イラストver. 全5種) ※通常盤のみ

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●ライブ情報
MyGO!!!!! 5th LIVE「迷うことに迷わない」
2023年8月12日(土) 開場17:00/開演18:00(予定)
会場:KT Zepp Yokohama

チケット:VIPエリア:16,500円(税込) 一般エリア:8,250円(税込) 女性限定エリア:8,250円(税込)
※別途ドリンク代が必要です。

※会場チケットはすべて完売となりました。

ライブ・ビューイング イオンシネマ系列全国12館で実施
今後の受付情報は公式Twitter・HPにてご確認ください。

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MyGO!!!!! 6度目の単独ライブが開催決定
BanG Dream! 12th☆LIVE DAY2 : MyGO!!!!!
2023年11月4日(土) 開場17:00/開演18:00(予定)
会場:東京ガーデンシアター
チケット:プレミアムシート:22,000円(税込) 一般指定席:9,900円(税込)
※本公演のチケット最速先行抽選には、8月9日(水)リリース MyGO!!!!! 3rd Single「壱雫空」初回生産分に封入の申込券でご応募いただけます。

詳しくはこちら

Roselia単独ライブ「Farbe」DAY1にMyGO!!!!!のオープニングアクト出演が決定!
Roselia「Farbe」
2023年9月16日(土)、17日(日) 開場17:00/開演18:00(予定)
オープニングアクト DAY1:MyGO!!!!!/DAY2:Ave Mujica
※MyGO!!!!!の出演は16日(土)のみとなります。
会場:有明アリーナ
チケット:プレミアムシート:22,000円(税込) 一般指定席:9,900円(税込)

チケット一般販売 受付中
受付URL:https://eplus.jp/roselia_2023/
※先着順・無くなり次第終了

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関連リンク
アニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』公式サイト
https://anime.bang-dream.com/mygo/