安倍晋三Twitterより


 4連休の初日である本日23日、東京都の新規感染者数がついに366人を記録した。昨日22日も全国の新型コロナ新規感染者数は792人(厚労省発表。

NHKまとめでは795人)となり、ついに過去最多を更新。さらに、大阪府愛知県福岡県埼玉県などの新規感染者も過去最多となり、感染が全国で急拡大していることがはっきりとした。だが、そんな最悪のタイミングで、安倍政権は「Go Toトラベル」を開始させたのである。

 緊急事態宣言を発出した前よりも感染者数が増加し、国民から批判の声が続出するなかで人の移動を促す「Go Toトラベル」を見切り発車する──。新型コロナ対応として絶句するほかない状況だが、しかし、安倍首相は総理会見を開くこともなく、昨日22日の記者団のぶら下がりでは「こういう機会に説明もさせていただいている」「西村経済再生担当大臣からも菅官房長官からもほぼ毎日説明している」と言い放ち、説明責任を放棄した。

 感染症対策の陣頭指揮に立つ人物が、無用な混乱と不安を招いておきながら、国民に直接説明することさえ投げ出すとは……。

あまりにも無責任すぎて開いた口が塞がらないが、しかし、安倍首相は昨晩、さらに信じられないような行動に出た。

 昨日17時50分から約20分、新型コロナ対策本部に出席すると、安倍首相は官邸をあとにし、銀座に直行。高級ステーキ店で、なんと王貞治氏や杉良太郎氏らと会食を楽しんだのだ。

 時事通信の首相動静には、こう記載されている。

〈午後6時30分、東京・銀座のステーキ店「銀座ひらやま」着。自民党の二階俊博幹事長、林幹雄幹事長代理、元宿仁事務総長、プロ野球ソフトバンクの王貞治球団会長、俳優の杉良太郎氏、政治評論家の森田実氏、洋画家の絹谷幸二氏と会食。


午後8時19分、同所発。
午後8時45分、私邸着。〉

 総理会見も開かず、国民の前から逃亡をつづける一方で、銀座で球界・芸能界の有名人と会食する──。産経新聞は〈王氏は東京五輪・パラリンピック組織委員会の理事を務めており、来年夏に延期となった東京五輪などについて意見交換したとみられる〉と伝えているが、ここまで全国で感染が広がるなかで、内輪で五輪の話をしているような場合ではない。

 さらに、政府は「夜の街」を連呼してホストクラブやキャバクラなどを目の敵にしているが、実際には会食や飲み会でも感染は広がっており、政府の分科会のメンバーである舘田一博・日本感染症学会理事長も「特に東京は、接待を伴わない会食や通常の飲み会などでの感染が起きてきているので、今後、こうした場所での感染が増えてくるかどうかを注意深くみていかないといけない」(NHKニュース22日付)と警鐘を鳴らしている。こうした警告に対し、感染を広げまいと不要不急の外出を自主的に自粛している都民は少なくないはずだ。

 にもかかわらず、安倍首相は21日にも高級フランス料理店「シェ松尾 松濤レストラン」で長谷川榮一首相補佐官ら側近たちと会食をおこない、昨晩には大人数での会食を再開させたのである。

 しかも、見過ごせないのは、会食メンバーには「Go Toトラベル」で重大疑惑が持ち上がったばかりの自民党・二階俊博幹事長がいたことだ。

 本サイトでもお伝えしたように(https://lite-ra.com/2020/07/post-5536.html)、昨日発売の「週刊文春」(文藝春秋)では、自民党の二階俊博幹事長が「Go Toトラベル」の運営を担う事務局を約1895億円で委託された「ツーリズム産業共同提案体」に名を連ねる観光関連団体から多額の献金を受け取っていたことをスクープ。さらに「しんぶん赤旗 日曜版」7月26日号も、「共同提案体」の関連会社が二階幹事長率いる派閥・志帥会(二階派)の政治資金パーティで多額のパーティ券を購入していたことを伝えている。

 「Go Toトラベル」の実態は、二階幹事長が多額の献金を受けてきた業界団体に便宜を図るためのものではないのか──そうした重大疑惑が報じられた当日に、安倍首相は、その渦中の人物と堂々と会食をおこなったのである。

 つまり、安倍首相のこの言動は、国民から向けられる疑念の目や不信感に対しても、完全に開き直ってみせた、ということだ。

 さらに、安倍首相がこの間の不正にまったく反省がないことを見せつけたのが、元宿仁・自民党事務総長の存在だ。元宿事務総長は自民党の“金庫番”といわれて、河井克行前法相・案里参院議員夫妻の違法選挙でも、資金提供のキーマンとされ、安倍首相とも関係が深く直接指示を受けた可能性なども取りざたされている。元宿事務総長の周辺にも聴取が及んでいたという話もあり、今回の会食は慰労かご褒美か、あるいは今後の捜査に向けた何か含みがあったのだろうか。いずれにしも国民をバカにしているとしか言いようがない。

 このように、無責任かつ無神経であるだけでなく、浮上した疑惑さえも意に介そうとしない安倍首相……。その上、姑息だったのは、この会食の最中、安倍首相の公式Twitterアカウントがツイートを連投していたことだ。

 そのツイート投稿数は連続で15にもおよび、〈最も重要なことは、ウィズコロナの時代にあって、効果的な感染防止策を講じながら、社会経済活動を段階的に回復させていく、この両立をしっかりと図っていくことであります〉〈明日から4連休が始まりますが、3つの「密」の回避、大声を出す行動を控えること、マスク・手洗い・消毒・換気などを徹底していただくようお願い申し上げます〉などと投稿している。

 だが、この投稿がなされた時間帯は、まさしく会食の最中。どうして会食中なのに安倍首相が投稿できるのか……と思っていたら、最後のツイートには〈首相官邸Instagramより〉と一言が。しかも、この投稿文は昨日の対策本部での発言をただ文字起こししただけのものだった。

 ようするに、実際には銀座の高級ステーキ店で有名人や二階幹事長らと仲良く会食していたというのに、「やってる感」アピールだけは余念がなかった、というわけだ。

 そして、全国の新規感染者数が過去最多を更新して一夜明けた本日も、安倍首相は緊急会見を開く様子もなく、午前10時時点では渋谷区富ヶ谷の私邸で休日を過ごしている。

「未曾有の危機」とは、まさしくこの男の行動そのもののことではないのだろうか。