小泉今日子が、自身が代表取締役をつとめる「株式会社明後日」の公式ツイッターで怒りを露わにし話題になっている。
〈あの記事を信じてる人がたくさんいることに驚いている。
“あの記事”とは1日に発売された「アサヒ芸能」(9月10日号、徳間書店)の記事のこと。記事のタイトルは「安倍総理が指原の出馬希望」となっていたが、こんなコメントが掲載されていた。
「22年の参院選で共産党は目玉候補として、小泉今日子(54)を出馬させるという話が永田町に流れているんです」
「約2年後の選挙に向けて出馬準備を始め、立候補が本決まりになれば、次の参院選の主役は小泉一色になってしまう。(安倍首相は)その対抗馬として、指原に出馬してほしい気持ちが捨てきれないのです」
しかも、同号の表紙には「小泉今日子『共産党から出馬』準備」というタイトルも打たれていた。
これを受け、案の定、ネットでは小泉のバッシングが起こった。小泉はツイッターなどで安倍政権批判をRTしたり、「#検察庁法改正に反対します」に参加したことで、これまでもネトウヨから標的にされてきたが、そういうした言動を共産党と結びつけられて、こんなふうに攻撃された。
〈そういえば『真っ赤な女の子』という歌があったけど、あれはそういう伏線?〉
〈パートナーで変わっちゃう女性は多いけどキョンキョンが真っ赤に染まるどころか出馬かぁ〉
〈小泉今日子さんは反日活動家と言われても誰も驚きませんから〉
〈共産党の広告塔の小泉今日子〉
なかにはキョンキョンと共産党を文字って“共ン共ン”などという書き込みまであった。
これに対して、小泉は4日のツイッターで記事の内容と出馬説を全否定したのである。
当然だろう。そもそも、日本共産党の場合、選挙に出馬する候補者はほとんどが党員歴があり、票集め狙いで有名タレントを立てたなんて話はこれまで聞いたことがない。ましてや、小泉が共産党から出馬するなんてありえない話で、ヨタ記事もいい加減にしろ、といいたくなる。
しかし、問題なのは、こうしたヨタ記事が出てくる背景だ。
6月には、「週刊新潮」(新潮社)が「赤旗1面で利用される『小泉今日子』の政治的打算」というタイトルの記事を掲載した。「しんぶん赤旗」5月31日付に小泉と劇作家の渡辺えりの対談が掲載されたことを受けて、共産党が小泉を政治利用することを狙っており、小泉も政界に色気を見せているかのように書き立てたのだ。
同記事では、大手プロダクションのバーニングと袂を分かち、プロデュース業に力入れている小泉だが、〈なんてたって元アイドル、スポットライトが恋しくないはずがない〉として、芸能レポーターのこんなコメントを掲載している。
「小泉さんが政治的な発言をするのは『新しいキョンキョン像』を模索しているからだと思います。赤旗への登場はまさに彼女の新しい1面。これをきっかけに参院選に出馬してほしいと持ち掛けてくる政党も出てくるでしょね」
このときもやはり、ネトウヨからの執拗な攻撃や“共産党員認定“がさかんに行なわれたが、これ、ある意味、『アサ芸』よりひどい記事だ。「新潮」は小泉が「赤旗」に登場したことを鬼の首を取ったように騒ぎ立てていたが、そもそもこの対談で小泉は政権批判や政治的な問題を口にしたわけではない。コロナ禍にあって、渡辺とともに映画や演劇などエンタテイメント界への支援を訴えただけだ。
また、「しんぶん赤旗」には小泉に限らず、これまでにも様々な芸能人が登場してインタビューを受けている。たとえば嵐の相葉雅紀や藤原紀香、長谷川博己、黒木華、東出昌大、元AKB48の内山奈月、またスポーツ界からも幅広い人材が登場しているが、彼らはごく普通の人物インタビューや映画や演劇の作品について語っているだけで、共産党とは何の関係もないし、実際、登場した後も「共産党員」扱いされたり「共産党からの出馬」説を書き立てられたりはしてはいない。
にもかかわらず、「週刊新潮」は小泉の「赤旗」登場だけをクローズアップして、あたかも政界を狙っているかのようなトーンで揶揄したのだ。
小泉のツイートを見ていればよくわかるが、彼女は自己顕示欲や将来の政界進出などのために政治的発言をしているわけではない。むしろ、そのトーンは抑制的で、なるべく政治的なことにコミットしたくないが、今の安倍政権を見ていると言わずにはいられない、という思いが伝わっている。しかも、自由を勝ち取るために大手事務所のバーニングプロをやめ、筋を通すため自ら豊原功補との関係を明かしたほどの覚悟を持った彼女が「スポットライトが恋しい」とか言うわけがないだろう。
『アサ芸』ならともかく、なぜ天下の『新潮』までがこんなヨタ記事をとばしたのか。気になるのは、この小泉の企画が「取締役案件」だったらしいことだ。新潮関係者が語る。
「これはある取締役から降りてきたネタだと聞いています。小泉が赤旗に出たのは2週間前だったので、編集部では『いまさら』と消極的だったんですが、上がかなり強引で、結局、無理やり記事を載せることになった。その取締役は「週刊新潮」の元編集幹部で、バーニングの周防(郁雄)社長とも親しく、内調とも太いパイプがあるので、どこからか“小泉潰し”を頼まれたんじゃないかと編集部でも噂になっていました」
バーニングプロを独立したタレントがバッシングを受けるのはたしかに有名だが、小泉の場合は独立からかなり経っているうえ、タレント活動をほとんどしておらず、バーニングプロがいまさらバッシングを仕掛ける必然性があまり感じられない。
むしろ可能性が高いのは、官邸や内調(内閣情報調査室)の仕掛けだろう。例の「#検察庁法改正に反対します」に参加して以降、官邸は小泉の政治的影響力を恐れており、内調がその言動をずっと監視しているといわれているからだ。
「官邸は黒川問題で国民的批判が高まったのは、小泉の存在が大きいと考えており、あのあと、小泉を内調の監視対象に入れたのはたしかです。とくに最近、警戒していたのが、参院選の出馬。さすがに共産党から出馬するとは思ってないが、野党統一候補になるんじゃないかと本気で恐れている。そう考えると、今回は『赤旗』に出たことを利用して、わざと“共産党”というレッテルをはって、小泉が立候補しないようにバッシングを仕掛けたのかもしれないね。こういう情報を流して、バッシングを仕掛けておけば、今後、政治的発言、政権批判がしづらくなるという計算もあるかもしれない」
いずれにしても、今回の一件は、小泉が政治や社会問題について発言してきたために狙い撃ちされたということは間違いない。しかも、知名度、影響力の高い小泉を攻撃すれば、芸能人たちを萎縮させ、政治的言論を封じるみせしめ効果もある。
まったく卑劣きわまりないが、しかし、小泉にはこんなデマやバッシングに怯むことなく、これからも「言うべきことを言う」という姿勢を貫いてほしい。