望まない妊娠に悩み、孤立する女性をどう救うのか。大阪府泉佐野市は5月11日、「赤ちゃんいのちのバトン」=いわゆる「赤ちゃんポスト」の設置と、身元を明かさずに出産する「内密出産」の実施に向けた事業実施計画の概要について発表しました。

市はすでに大阪府へ事業実施計画を提出していて、2026年度中の運用に向けて協議を加速させています。

「最終責任は市が負う」 自治体が主導する全国初の試み

「最終責任は市が負う」全国初・自治体主導の「赤ちゃんポスト」...の画像はこちら >>

 泉佐野市が検討を進めているのは、赤ちゃんを匿名で預け入れることができる「赤ちゃんポスト(市の名称:赤ちゃんいのちのバトン)」と、医療機関にのみ身元を明かして出産し、戸籍には親の名前を残さない「内密出産」の2つの事業です。

 今回の計画では、自治体である泉佐野市が「最終責任を負う」としています。これまで熊本市の慈恵病院などが民間主導で先行してきましたが、行政が主導となって運営の責任を明確にするケースは全国でも例がありません。

 島田純一・泉佐野市こども部政策監(兼)こども部長は、「赤ちゃんの遺棄問題は、決して特別な世帯や地域のみに発生する問題ではなく、社会問題であるとの認識から、課題を抱える妊婦が安心して出産できるように、生まれくる子どもの命を虐待や遺棄から守る最後の砦となるよう、両事業をりんくう総合医療センターと役割を分担して2026年度末までの実施を目指す」としました。

出産費用は「原則、市が負担」 妊産婦の孤立を防ぐ支援

「最終責任は市が負う」全国初・自治体主導の「赤ちゃんポスト」設置へ 泉佐野市が概要発表 内密出産の費用負担なし 孤立する女性をどう救うか…2026年度中の運用開始目指す 大阪・泉佐野市
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 計画の大きな柱の一つが、経済的な困窮や家庭環境の悪化に直面する女性への経済的支援です。市は内密出産にかかる分娩費用などの諸費用について、原則として妊産婦に求めず、市が負担する方針を明らかにしました。

 市によると、望まない妊娠に悩む女性の約9割が「親に知られたくない」という不安を抱えており、出産費用の捻出が困難なことが孤立を深める要因の一つになっているといいます。市はこうした現状を十分に判断し、金銭的なハードルを取り払うことで、危険な孤立出産や遺棄を防ぐ「最後の砦」としての役割を果たす狙いです。

 また、内密出産の対象者については、泉佐野市民に限定せず、市外からの相談や受け入れも想定しているといいます。

二系統の相談体制 市役所とりんくう総合医療センターが連携

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 具体的な運用面では、相談室を2箇所設置する方針が示されました。

▼泉佐野市役所:仮称「妊娠葛藤相談室」
 主に、妊娠はしているが様々な不安を抱えている初期段階の相談窓口。保育士や看護師などを配置し、広く妊娠全般の相談に対応します。

▼りんくう総合医療センター:仮称「内密出産・赤ちゃんいのちのバトン相談室」
 内密出産を希望する女性や、赤ちゃんポストの利用を検討している緊急性の高いケースに直接対応します。こちらは24時間体制での稼働を検討しており、看護師や助産師といった専門職が常駐する計画です。

 両窓口は緊密に連携し、「行政に身元を明かして支援を受けるのか」それとも「内密に事を進める必要があるのか」という分岐点において、母親の意向に寄り添った最適な支援を選択できる体制を目指すということです。

2026年度中の運用開始へ 大阪府や警察との協議が焦点

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 市は今年3月末に大阪府へ事業実施計画を郵送し、4月にはヒアリングを行いました。現在は、府から指摘された人員配置の詳細などについて、ブラッシュアップを進めている段階です。

 また、赤ちゃんポストの設置にあたっては、大阪府警との調整も不可欠だといいます。警察側は、預けられた赤ちゃんにアザや外傷がある場合の「事件性の判断」や、DNA鑑定の実施、監視カメラの設置場所など、防犯・捜査上の懸念があるということです。

 さらに、預けられた赤ちゃんの「その後」については、法的には「棄児(きじ)」扱いとなり、養護児童として大阪府の児童相談所が里親委託や乳児院への入所を斡旋することになります。

 市は入口部分での一時的な保護やシェルターの提供を担い、出口については府と役割を分担するということです。

 島田純一・泉佐野市こども部政策監(兼)こども部長は現在の進捗について、「府と協議しているというところが進歩かと。開設してもそこからもスタートだと思っている」としたうえで、2026年度中の運用開始に向けて準備を進めていきたいと述べました。

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