クルーズ船での集団感染疑い「ハンタウイルス」

ハンタウイルスの集団感染が疑われているクルーズ船「MVホンディウス号」。これまでに、6人が感染し、2人に感染の疑いがあり、このうち3人が死亡しています。

木原官房長官は5月11日、ハンタウイルスの感染について「直ちに大きな影響はない」とした上で、事態を注視しながら必要な感染対策に万全を期すと強調しました。

また、国民に向けて海外渡航の際には、動物との不要な接触を避けるほか、冷静な対応を呼びかけました。

新型コロナウィルスの感染拡大が記憶に新しい中、ハンタウイルスの脅威はどれほどのものなのか?関西福祉大学・勝田吉彰教授が詳しく解説します。

勝田吉彰:関西福祉大学・教授 医師でもあり感染症などの公衆衛生に詳しい SARS・新型コロナ流行時に従事 専門は渡航医学

ハンタウイルスの特徴と種類

【ハンタウイルス】乗客下船で感染拡大は?新型コロナのような大...の画像はこちら >>

ハンタウイルスは主に以下の2つのタイプに分類されます。

<腎症候性出血熱>
症状:発熱・腎機能障害など
致死率:重症型だと3%~15%
分布:アジアや欧州

<ハンタウイルス肺症候群>
症状:急速な呼吸困難など
致死率:40%~50%
分布:アメリカ大陸

いずれもウイルスを持ったネズミなどげっ歯類の糞尿が混ざったほこりを吸い込むなどすることで感染します。

「密接な距離」での「長時間の接触」で感染か

【ハンタウイルス】乗客下船で感染拡大は?新型コロナのような大流行は「現時点では可能性低いが変異に注視」「感染は家族など長時間密接している場合が多い」 渡航医学の専門家解説
MBS

症状によっては致死率が40%ほどとかなり高く見えますが、これについて関西福祉大学の勝田吉彰教授は「発展途上国に多い」ことについて言及しました。

感染によって急性肺水腫=肺に水がたまって酸素を取り込めない危険な状態になったとしても、速やかにICUに収容して呼吸管理を行うことができれば重篤な状態はある程度回避できる可能性があるということです。しかし、南米という地域柄、ICUなどでの高度な治療へのアクセスが容易でない環境であるということも致死率に影響しているのではないかと指摘。今回はクルーズ船で感染者が出たため、同様にICUで行うような呼吸管理が困難だったのではないか、ということです。

今回のクルーズ船乗客からは、ヒト・ヒト感染の報告がある「アンデス株」を検出されていますが、その感染力について勝田教授は「はっきりとした指標となる再生産数という数字は出ていない」とした上で、「これまでの事例を見ると家族や恋人同士などかなり密接な距離で長時間一緒にいることで感染することが多い」といいます。

感染経路・原因の特定は…現時点では困難

【ハンタウイルス】乗客下船で感染拡大は?新型コロナのような大流行は「現時点では可能性低いが変異に注視」「感染は家族など長時間密接している場合が多い」 渡航医学の専門家解説
MBS

西アフリカのカーボベルデを目指し、4月1日にアルゼンチンのウシュアイアを出港した「MVホンディウス号」。感染経路や原因は特定できるのでしょうか?勝田教授は以下のポイントを指摘します。

<3つのポイント>
・出発地の乗船前に感染?
・途中の寄港地?
・船内にネズミがいた?

勝田教授によると、ハンタウイルスは潜伏期間が1週間から6週間と幅広いため、出発前のアルゼンチンなのか、寄港地でのバードウォッチング中なのか、あるいは船内のネズミなのか、様々な可能性が想定されるため、現時点での感染原因と経路の特定は非常に難しいということです。

各国の対応は?「安全性か確保された帰国対応」

【ハンタウイルス】乗客下船で感染拡大は?新型コロナのような大流行は「現時点では可能性低いが変異に注視」「感染は家族など長時間密接している場合が多い」 渡航医学の専門家解説
MBS

クルーズ船から乗客らが下船し各国へ帰国を始めていますが、勝田教授は「接触管理がかなり徹底されていて、安全性が確保された帰国対応になっている」と分析します。

今回の対応は、2018年・アルゼンチンのハンタウイルス集団感染時(29人感染・11人死亡)に有効だった基準を参考にしているのではないかとも話しています。

イギリスに到着の日本人乗客 最大45日間の隔離か

【ハンタウイルス】乗客下船で感染拡大は?新型コロナのような大流行は「現時点では可能性低いが変異に注視」「感染は家族など長時間密接している場合が多い」 渡航医学の専門家解説
MBS

船に乗っていた日本人はすでに下船し、チャーター機でイギリスに到着していて、今後はWHOの推奨により最大45日間にわたって発熱や症状の有無などを継続的に報告・観察する「健康観察」を受ける予定だということです。

今回は新型コロナの時とは違い人数が少なく、隔離する施設も確保できるので、潜伏期間をカバーしたうえで感染者が溢れるということは無いのではないか、と勝田教授は話します。

新型コロナのような大流行は「現時点では可能性低い」

【ハンタウイルス】乗客下船で感染拡大は?新型コロナのような大流行は「現時点では可能性低いが変異に注視」「感染は家族など長時間密接している場合が多い」 渡航医学の専門家解説
MBS

日本にもネズミはいますが、勝田教授は「極端に恐れる必要はない」としています。アンデス株は考えにくい。アジア型は中国・韓国が多いので心配しなくていい」としています。

一方で、ハンタウイルスが新型コロナのように大流行するかどうかについては、「現時点では可能性は低い」としながらも、変異する可能性は否定できないので、注視する必要があるということです。

(2026年5月11日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

編集部おすすめ