人口減少で社会維持に不安…「コンパクトシティ」に注目集まる

 去年1年間に生まれた日本人の子どもの数は、67万1236人。1人の女性が生涯で出産する子どもの数を示す去年の「合計特殊出生率」は1.14。いずれも10年連続の減少となりました。

 このままでは今の社会を維持するのが難しくなりますが、街づくりについてもほころびが見え始めています。車を前提とした社会で良いのか、道路や下水管などインフラは維持できるのか…

 そんな中、注目されているのが「コンパクトシティ」。その利点や成功例、課題について岡山大学の氏原岳人准教授に聞きました。

出生数・合計特殊出生率 ともに10年連続の減少

【コンパクトシティ】出生数減少で注目集める メリットは多岐に...の画像はこちら >>

 厚労省によると、去年の日本の出生数は67万1236人、合計特殊出生率は1.14(人口維持は2.07)。いずれも10年連続の減少で、統計開始以降で最少・最低を記録しました。

 また、夫婦が生涯にもうけた子どもの数は2021年で1.90人。1940年の4.27の半分以下にまで減少しています(こども家庭庁資料)。

30年後の人口は1億人を下回る?労働力不足・インフラ維持などの懸念

【コンパクトシティ】出生数減少で注目集める メリットは多岐にわたるも『無秩序な開発』が課題…「アクセルとブレーキを両方踏んでいる」人口増やしたい自治体が抱えるジレンマ
MBS

 このペースで減少した場合、日本の人口は2056年には9965万人、2070年には8700万人になるという推計も(2025年版・内閣府資料より)。

 労働力や経済成長、インフラや社会保障などの面で様々な問題が懸念されています。

 <人口減少による問題>
  ▼経済縮小
   ⇒労働力不足・市場の縮小
  ▼イノベーション低下
   ⇒新技術やビジネスが生まれにくくなる
  ▼インフラ
   ⇒税収減少でインフラ維持が困難・老朽化
  ▼社会保障
   2005年⇒現役世代3.3人で65歳以上を1人支える
   2050年⇒現役世代1.4人で65歳以上を1人支える

コンパクトシティとは?メリットは?

【コンパクトシティ】出生数減少で注目集める メリットは多岐にわたるも『無秩序な開発』が課題…「アクセルとブレーキを両方踏んでいる」人口増やしたい自治体が抱えるジレンマ
MBS

 そこで注目されているのが「コンパクトシティ」=公共施設や商業施設など街の機能をコンパクトにまとめて、公共交通機関で結んでいる街です。

 コンパクトシティでは、機能=「団子」と、公共交通機関=「串」の両方が大事で、社会面・環境面・経済面とメリットは多岐にわたると言います(岡山大学・氏原岳人准教)。

 <社会面>
  ▼高齢者を含め生活しやすい
  ▼車がなくても生活できる
 <環境面>
  ▼公共交通機関・自転車・徒歩により環境負荷が減る
 <経済面>
  ▼道路・下水道などインフラコストを抑制

 (岡山大学・氏原岳人准教授)「コンパクトシティは、公共交通の利便性の相対的に高いところを中心に、業務とか商業とか住居などの機能を集約させて、郊外の無秩地の開発を抑制しようという考え方です」

「無秩序な開発」「スポンジ化現象」も背景に

【コンパクトシティ】出生数減少で注目集める メリットは多岐にわたるも『無秩序な開発』が課題…「アクセルとブレーキを両方踏んでいる」人口増やしたい自治体が抱えるジレンマ
MBS

 日本では中心部から郊外へ開発が進んだ結果、都市の密度が低くなり空き家・空地問題などが発生する「無秩序な開発」「スポンジ化現象」が問題になっています。

 これもコンパクトシティが注目される背景にあるようです。

国はコンパクトシティ推進 「LRT」導入の富山市など成功例も

【コンパクトシティ】出生数減少で注目集める メリットは多岐にわたるも『無秩序な開発』が課題…「アクセルとブレーキを両方踏んでいる」人口増やしたい自治体が抱えるジレンマ
MBS

 こうした問題を受け、国はコンパクトシティを推進。2014年には「立地適正化計画」(コンパクトシティ計画)が創設されました。

<立地適正化計画>
 ▼病院・公共施設などを集約する拠点を誘導
  ⇒国から補助金
 ▼約650の自治体が計画を策定
 (岡山大学・氏原岳人准教授)

 この成功例が富山市。2000年代初頭からコンパクトシティ政策を推進していて、次世代型路面電車「LRT」を導入しています。高齢者の外出も増えたということです。

【コンパクトシティ】出生数減少で注目集める メリットは多岐にわたるも『無秩序な開発』が課題…「アクセルとブレーキを両方踏んでいる」人口増やしたい自治体が抱えるジレンマ
MBS

 栃木県宇都宮市では「LRT」の沿線にマンション建設が集中していて、子ども連れの住民が多く見られます。

コンパクトシティを目指しながらも進む開発…“アクセル”と“ブレーキ”両方踏んでいる状態?

【コンパクトシティ】出生数減少で注目集める メリットは多岐にわたるも『無秩序な開発』が課題…「アクセルとブレーキを両方踏んでいる」人口増やしたい自治体が抱えるジレンマ
MBS

 一方で、コンパクトシティでは「無秩序な開発」(スプロール)をどう規制するかが課題だと氏原准教授は指摘。

 「車があれば生活できる」「リモートで仕事ができる」などの理由から郊外の安い土地に需要があるため、コンパクトシティを目指しながら郊外への開発が進んでいる、つまり“アクセル”と“ブレーキ”を両方踏んでいる自治体が多いということです。

「開発」と「コンパクトシティ化」のジレンマ

【コンパクトシティ】出生数減少で注目集める メリットは多岐にわたるも『無秩序な開発』が課題…「アクセルとブレーキを両方踏んでいる」人口増やしたい自治体が抱えるジレンマ
MBS

 無秩序な市街化を抑制するため、「市街化調整区域」とされている土地もありますが、都市計画法には“例外規定”があり、開発可能なケースもあります。

 短期的には人口を増やすため“例外”を認めなければならない、しかし長期的に見るとそれはコンパクトシティ化と相反する…行政はこのジレンマを抱えているのです。

【コンパクトシティ】出生数減少で注目集める メリットは多岐にわたるも『無秩序な開発』が課題…「アクセルとブレーキを両方踏んでいる」人口増やしたい自治体が抱えるジレンマ
MBS

 また、街づくりというのは長期的に考えるべき問題ですが、市長などの任期は4年。コンパクトシティ化には、有権者の理解も必要です。

 (2026年6月4日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『山中プレゼン』より)

編集部おすすめ