商法とは、商人の商業活動における法的な規制などを定めた法律のことです。総則・商行為・海商の全3編で構成されています。
社会人として働くにつれて、ビジネスが契約や取引に関するルールと深い関わりがあることに気づかされるのではないでしょうか。契約や取引のことをより深く理解するためにも、商法の役割や内容を押さえておくことが大切です。
本記事では、商法とは何かを説明したうえで、他の法律との違いや近年の改正内容について詳しく解説します。
商法とは
商法とは、商人の営業・商行為・その他商事に関する法的な規制などを定めた法律です。
「商人」とは、自己の名で商行為することを業とする人を指します。株式会社や合同会社などの「会社」、個人事業主やフリーランスのように、営利を目的として活動する事業者は原則として「商人」です。
商法は、「私法」に該当します。私法とは、私人(※)間における権利や義務の関係を規律する法律のことです。
なお、憲法や刑法などは、国家と個人の関係を規律する「公法」にあたります。
※私人:国や行政機関以外の個人・団体
商法と他の私法の違い・関係
民法や会社法も、「私法」に分類される法律です。ここから、商法と民法や会社法との違いについて、詳しく解説します。
商法と民法の違い・関係
商法と民法の違いとして、特別法にあたるか、一般法にあたるかが挙げられます。
特別法は、特定の分野に対してのみ適用される法律、一般法は幅広い分野に対して適用される法律のことです。特別法と一般法が重なる箇所については、特別法を優先して適用します。
特別法と一般法の関係は、相対的なものです。
なお、民法は私法の基本となる法律で、特に財産や家族に関する内容について規定しています。民法の内容や2026年の改正内容について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
民法とは?基本的な内容や2026年の改正内容をわかりやすく解説
商法と会社法の違い・関係
商法と会社法では、対象となる範囲に違いがあります。
商法は「商人」に関する取引ルールを中心に規定している法律です。一方、会社法は、会社の設立手続きや組織の仕組み、運営方法などを定めています。
会社法は「会社」に限定して適用されるのに対し、商法はより広い範囲の主体に関係する法律です。そのため、両者の関係においては、商法が一般法、会社法が特別法として位置付けられます。
会社法の具体的な内容について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
会社法とは?目的や主要条文の要点など基本をわかりやすく解説
商法の歴史
1890年4月26日、1064条で構成された商法(旧商法)が公布されました。この商法の制定には、ドイツ人法学者のヘルマン・ロエスレルが携わったとされています。
しかし、商法の施行について多くの反対意見が出ました。そこで、当初の内容を全面的に見直して現在の商法の基礎となる形にあらためたうえで、1899年6月16日に施行されています。
施行後、商法の中の様々な規定が廃止され、別の法律に移行されていきました。
さらに、2018年5月の商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律の公布に伴い、約120年ぶりとなる大規模な商法の見直しが行われました。
商法の主な内容
商法は全3編で構成されている法律です。各編には、以下の内容が記載されています。
・総則(第1条~第500条)
・商行為(第501条~第683条)
・海商(第684条~第850条)
それぞれの内容について、押さえておきましょう。
総則
第1編の総則は、商法が対象とする取引全般に適用されるルールを定めた部分です。以下の内容について、規定があります。
・通則
・商人
・商業登記
・商号
・商業帳簿
・商業使用人
・代理商
例えば、商法第4条は、「商人」の定義について規定した条文です。また、商法第11条で、商人は氏名やその他の名称を商号にできることや、商号を登記できることが定められています。
さらに、商法第12条第1項は、不正の目的で他の商人と誤認させる可能性のある名称や商号を使用できないことを示した条文です。同条第2項には、違反により営業上の利益を侵害される商人は侵害の停止や予防を請求できることが定められています。
商行為
第2編では、以下のように商行為に関するルールが定められています。
・総則
・売買
・交互計算
・匿名組合
・仲立営業
・問屋営業
・運送取扱営業
・運送営業
・寄託
商行為は、「絶対的商行為」「営業的商行為」「附属的商行為」の3つに分類されます。
絶対的商行為は、営業として行っているかどうかに関係なく、法律上当然に商行為とされるものです(商法第501条)。これに対して営業的商行為は、営業として反復継続して行われることで商行為に該当するものを指します(商法第502条)。
附属的商行為は、商人が営業を行ううえで付随的にする行為です(商法第503条)。
海商
第3編の海商では、海上輸送に関する商事活動についての決まりが定められています。主な内容は、以下の通りです。
・船舶
・船長
・海上物品運送に関する特則
・船舶の衝突
・海難救助
・共同海損
・海上保険
・船舶先取特権及び船舶抵当権
例えば、商法第708条第1項では、船籍港外において船長が船舶所有者に代わって航海に必要な裁判上もしくは裁判外の行為をする権限を持つことが定められています(一部の行為を除く)。
商法の直近の主な改正内容
2018年5月25日に商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律が公布され、翌2019年4月1日より施行されました。主な改正内容(※)は以下の通りです。
・運送全般の共通ルールを新設
・危険物についての通知義務を改正
・運送事業者の責任の消滅期間について改正
・旅客運送事業者の免責特約の効力に関する規定を新設
ここから、改正内容について詳しく解説します。
※上記のほか、片仮名・文語体で表記されていた「第2編 商行為」の規定の一部と「第3編 海商」の規定がすべて現代用語化されています。
運送全般の共通ルールを新設
改正により、運送全般に適用される共通ルールが新たに設けられました。
従来の商法では、陸上運送や海上運送については規定がある一方で、航空運送や複合運送(※)については明確なルールが整備されていませんでした。今回の改正では、すべての運送形態に共通して適用されるルールが整備されるとともに、複合運送に関する規定も新設されています。
※複合運送:陸上・海上・航空など複数の輸送手段を組み合わせて行う運送
危険物についての通知義務を改正
商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律の施行に伴い、危険物についての通知義務も規定されています。
これまで、荷物が危険物の場合でも送り主に通知義務に関する規定は定められていませんでした。そこで、荷物が危険物に該当する場合に、引き渡し前までに運送事業者へ安全な運送に必要な情報を通知することが送り主に義務付けられました。
なお、危険物に関する通知を怠ったことにより事故が発生して運送事業者に損害が発生した場合は、送り主が損害賠償責任を負います。
運送事業者の責任の消滅期間について改正
運送事業者の責任に関する消滅期間についても、変更があります。
元々、運んだ荷物が壊れていた場合に、運送事業者は指定された受取人に引き渡してから最長5年間責任を負うことが商法で定められていました。今回の改正で、運送事業者の責任は指定された受取人に引き渡してから一律1年で消滅することになりました。
そのため、受け取った荷物が壊れた場合に運送事業者に対して損害賠償請求するには、1年以内に対応しなければなりません。
旅客運送事業者の免責特約の効力に関する規定を新設
今回の改正で、旅客運送における免責特約の取り扱いについても新たなルールが設けられています。
これまでの商法では、事故が発生した際に運送事業者の責任をどこまで制限できるかについて、明確な規定がありませんでした。そのため、事業者があらかじめ賠償額に上限を設けたり、「乗船中に生じた問題について責任を問わない」などの趣旨の誓約を求めるケースもありました。
改正後は、運送中の事故によって旅客の生命や身体に損害が生じた場合、運送事業者の損害賠償責任を軽減または免除する特約は、原則として無効とされています。ただし、運送の遅延が主な原因となって損害が発生した場合など、一定のケースでは例外的に有効とされる場合もあります。
商法は商行為などについて定めた法律
商法とは、商人の営業・商行為・その他商事に関する法的な規制などを定めた法律です。商法は、民法との関係において「特別法」と位置付けられるのに対し、会社法との関係では、「一般法」として位置付けられます。
2019年4月1日に、商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律が施行され、特に運送や海商に関するルールが変わりました。運送全般の共通ルールの新設や旅客運送事業者の免責特約の効力に関する規定の新設など、ビジネスにもプライベートにも関係する内容のため、変更点を理解しておきましょう。
参考:e-Gov「商法」
参考:法務省「商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律について」
ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。

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