ガソリンを取り巻く状況は大きく揺れています。2025年11月にはガソリン税の暫定税率を廃止する法律が成立し、2025年12月31日をもって長年続いた約25円分の上乗せ税負担がなくなりました。一方で、中東情勢の緊迫を受けて原油価格は再び高止まり。政府は「全国平均170円超の部分を補助金で抑える」という変動型の支援を続けており、2026年6月時点の支給額は1リットルあたり33.3円にものぼっています。さらに、高市首相は財政負担への懸念から補助金の見直しを示唆。先行きは、依然として見通せません。
そんな中、「だったら燃費のいいハイブリッドカーに乗り換えた方が安心では?」と考える人も増えているかもしれません。ですが、今回ご紹介するのは、過去に大きな反響を呼んだコラムから、元ディーラー営業マンによる「ハイブリッドカーは正直おすすめできない」という意外な提言。同じ車種のガソリン版とハイブリッド版を、実際の価格と燃費で比較してみると――。
記事の後半では、暫定税率廃止と補助金縮小の議論が交錯する今、ハイブリッドとガソリン車の損益分岐点をどう読めばいいのか、最新の状況も踏まえながら考えます。
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ガソリン価格、クルマを利用するユーザーにとって、ランニングコスト(維持費)がかさむと家計を圧迫するため、少しでも安くしたいのが本音でしょう。
最近出ている車の多くは燃費の良いハイブリッドカーですが、初期コストが高いため、元ディーラー営業マンである筆者としては正直おすすめできません。今回は、実際にシミュレーションして本当にコスパが良いのか検証します。
確かに燃費はいいが…
冒頭でもお伝えしたとおり、ハイブリッドカーは正直おすすめできません。ですが、ガソリン1リットルあたり30kmも40kmも走るクルマもありますし、魅力的に感じますよね。車種によっては非常に燃費の良いクルマもあれば、ガソリンとハイブリッドをラインナップしていて、それほど燃費に差が出ないクルマというのも実在します。しかもグレード間の価格差があり、本当にお得なのかと疑問に感じることもあるでしょう。
ハイブリッドとガソリンの損益分岐点をシミュレーション
ここからは視点を変え、同じ車種でガソリンとハイブリッドを併売しているケースで、ハイブリッドで燃費が良くなった分、初期コスト(車両価格)をペイできるのかどうかをシミュレーションしてみようと思います。今回のシミュレーション対象は、トヨタの人気ミニバンのノアで、グレードはS-Gです。車両本体価格とカタログ上の燃費は以下の通りとなります。
ノア(グレードS-G)
ガソリン:3,040,000円(15.0km/L)
ハイブリッド:3,390,000円(23.0km/L)
※取材時2025年5月のカタログ価格と数値
車両価格の差は35万円、燃費差は8kmです。
次に車の使い方によってランニングコストがどれくらい差が出るのか検証するために2つのケースを例にします。土日メインで普段はあまり乗らないパターン(年間5,000km)と、日常的にクルマを使うパターン(年間12,000km)でシミュレーションしてみましょう。
ガソリン価格は、185円とします。
(年間5,000km走行する場合)
ガソリン:5,000km÷15.0km/L=333.3L×185円=61,600円
ハイブリッド:5,000km÷23 km/L =217.4L×185円=40,219円
差額:21,381円
(年間12,000km走行する場合)
ガソリン:12,000km÷15.0km/L=800L×185円=148,000円
ハイブリッド:12,000km÷23 km/L =521.7L×185円=96,515円
差額:51,485円
ハイブリッドグレードを買い、ガソリン車との差額をペイすると考えた場合、土日しか乗らない場合(年間5,000km)だと約16年、日常的に使う場合(年間12,000km)だと約7年かかります。
もちろん、ガソリン価格の変動やハイブリッド用バッテリーの劣化などは考慮していませんので、このシミュレーション結果が全てということではありません。あくまでも一例として考えていただきたいですが、これくらいの価格差がガソリンとハイブリッドにあるということは覚えておいてもいいでしょう。
乗り方によっては損をする
また、クルマを使うシーンが街乗りメインなのか高速メインなのかによって差が生じます。ハイブリッドカーは時速100kmを超える高速走行だと恩恵をあまり受けない特性がありますので、自分がどのような乗り方をしているのか振り返ってから検討すると良いでしょう。
長い期間にわたってクルマを保有することを前提に考えると、ハイブリッド用バッテリーの劣化も気になるところです。最近は技術が進歩しているとはいえ、長期保有を前提にクルマは作られていないと筆者は感じます。
そうなると、バッテリーも消耗品ですから、交換時に数十万円の出費が発生する可能性も考慮しなければなりません。ディーラーで聞くと「大丈夫ですよ、そのような話はあまり聞かないので」と言われるでしょう。これはあくまでもセールストーク。ディーラー営業マンの心の中は「バッテリー交換するくらいなら、交換費用を頭金にしてローンで買ってもらえばそれで良い」くらいしか思っていません。
ハイブリッドカーは燃費以外にも高い走行性能や静粛性があり、それを決め手にして買う人もいます。今回のように燃費だけで車両価格の差を判断するのではなく、走行性能や静粛性など、ハイブリッドならではの付加価値で判断しましょう。
<文/宇野源一>
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■揺れるガソリン価格、結局どっちがお得なのか
本文では、ガソリン1リットル185円という前提で損益分岐点をシミュレーションしていました。では、現在の実勢価格はどうなっているのでしょうか。資源エネルギー庁によれば、2026年6月時点のガソリン全国平均価格は1リットルあたり169.5円ほど。一見すると本文の185円より安く見えますが、これは政府の補助金(直近で1リットルあたり33.3円)が効いた後の価格です。仮にこの補助金が止まれば、実勢価格は200円台に乗ってもおかしくありません。
そして、2026年6月3日の国会で、高市首相は「支援のあり方を柔軟に検討する」「単価を含めて見直す」と補助金の縮小を示唆しています。財政負担への懸念から、今の手厚い補助がいつまで続くのかは、誰にも読めない状況です。
つまりガソリン価格は、「下がる材料」と「上がる材料」が綱引きしている最中。本文のシミュレーションが示す「ハイブリッドの元を取るには5,000km走行で約16年、12,000km走行で約7年」という年数は、今後の価格動向次第で、もっと短くなる可能性も、もっと長くなる可能性も両方あります。
だからこそ、燃費だけで判断するのは少し心もとないのかもしれません。元営業マンが本文の最後で指摘しているとおり、ハイブリッドカーには静粛性や走行性能といった、価格や燃費の数字だけでは測れない魅力もあります。
新車価格もずいぶん上がってしまった昨今。
【宇野源一】
埼玉県在住の兼業ライター。大学卒業後、大手日系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。X(旧Twitter):@gengen801
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