情報活動の司令塔機能を強化するための「国家情報会議」創設法案の国会審議がヤマ場を迎える。
 法案は、首相が議長を務める国家情報会議を設置、内閣情報調査室(内調)を国家情報局に格上げし事務局の役割を担わせる、という内容だ。

 政府の政策に反対するデモや抗議行動などが監視対象になり、自由や権利、プライバシーが脅かされるようなことはないのか。
 収集された情報が時の政権によって政治利用される恐れはないのか。いずれの懸念もまだ払拭されていない。
 高市政権は、日本国旗を傷つける行為を罰するための「日本国国章損壊罪」(国旗損壊罪)を創設する法案提出の準備も進めている。
 自民党と日本維新の会の連立政権合意書にはスパイ防止法の制定や憲法改正なども盛り込まれている。
 スパイ防止法を巡っては、自民党が1985年、「国家秘密法」案を国会に提出したが、世論が激しく反発し、廃案になったいきさつがある。
 保守色の強いこれらの政策を高市早苗首相は「国論を二分する政策」と位置付け、実現に意欲を示している。
 高市首相の下で発足した自民・維新の連立政権は、「国権重視の連立政権」という性格を色濃く備えている。
 その結果、国政において政治の新たな対立軸が浮上してきた。「国権と民権のぶつかり合い」だ。
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 国家の権限をもっと拡大し、防衛力を抜本的に強化し、国の力を強くする。それがここでいう「国権論」の考え方である。

 これに対し「民権論」とは憲法にうたわれた国民一人一人が持つ人権を大切にするという考え方である。
 政権を担う政党であれば、どちらも重要だと主張するはずだ。
 ただし石破茂政権下の自公連立政権と、高市政権下の自維連立政権とでは、政権の性格が異なる。高市連立政権の国権重視の姿勢は明らかだ。
 問題にしたいのは、政権が掲げる政策の方向性とその性格である。
 安全保障環境が急速に変化したことで、政治家にも国民の中にも「安全が脅かされている」という危機感が高まっている。
 高市首相は、そのような国民感情を踏まえて「国論を二分する政策」をあえて提起したのである。
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 高市首相の「台湾有事」発言以降、日中関係は悪化し、改善の兆しが見られない。
 高市政権を支えているのは、中国の強圧的な言動に対する心理的な反発であり、対抗意識である。
 「南西シフト」への批判に対してはネット上で「平和ぼけ」「お花畑」との言葉が浴びせられる。
 今、必要なのは日中の関係改善を図り緊張を緩和していくことだ。
 国権を拡大し、防衛力の抜本的強化を図っても、両国の信頼関係を再構築しない限り、安全保障のジレンマに陥るだけである。
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