人通りの割には多過ぎる建物、壊れかけの店の看板、スカッとしないイギリスの天気、客のいないパブの片隅に陣取り過去の栄光にすがるうだつの上がらない、かつて屈強だったであろう常連たち。寂しさで満ちた元炭鉱の町の景色だけで心がギュッとする。

 世界に看過できないことが多過ぎて、2016年に引退を撤回したケン・ローチ監督は、撤回後3作目となるこの「オールド・オーク」で、荒廃する元炭鉱の町に、渾身(こんしん)の力で人間への希望を描き出し、最後の作品とした。
 日々を生きるだけで精いっぱいの町の人々は、ある日を境に続々と押し寄せるシリア難民にいら立っている。炭鉱を奪われ、ついに町まで奪われるんじゃないか。そんな不安が彼らをむしばむ。
 偏見、差別、誹謗(ひぼう)中傷。けれど人間は最悪からでもはい上がり助け合える。それを映画は証明する。(桜坂劇場・下地久美子)
◇5月1日から桜坂劇場で上映
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