世界的ラグジュアリーブランド「シャネル」による映画支援プロジェクト「CHANEL AND CINEMA - TOKYO LIGHTS」のアワードセレモニーが4月23日、東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールで開催された。

 同プロジェクトは、日本映画界をけん引する是枝裕和監督とともに、次世代の映像作家育成を目的に2024年に始動。
是枝監督をはじめ、シャネル アンバサダーのティルダ・スウィントンや、役所広司、安藤サクラ、映画監督の西川美和などが講師を務めるマスタークラスを開催し、その受講者を対象とするショートフィルムコンペティションを実施した。

 厳正な選考の結果、『親切がやって来る』(監督:首藤凛)、『夜明け』(監督:田中さくら)、『夕べの訪問客』(監督:古川葵)の3作品が選ばれ、4月24日から5月24日まで同会場で「CINEMA WEEKS」として一般公開(入場無料・予約優先)される。

 アワードセレモニーには、是枝監督のほか、西川監督、安藤が登壇し、受賞者にトロフィーが授与された。司会はシャネルアンバサダーの橋本愛が務めた。

 トロフィーは、シャネルを象徴するツイードから着想を得た特別デザイン。異なる素材を織り合わせて生まれる美しさを、映画という総合芸術に重ねたものとなっている。

 会場にはシャネル アンバサダーの宮沢氷魚のほか、茅島みずき、出口夏希、豊田裕大、中西希亜良らも来場。上映された受賞作を鑑賞した。

■受賞作品

★『親切がやって来る』
監督: 首藤凛
出演: 出口夏希、佐藤寛太、筒井真理子

 夜の国道沿いで酩酊状態の女性を介抱した美央子。その光景を見ていた青年も救援に加わり、見知らぬ3人で女性の自宅を目指すことになる。次第に酔いが覚めてきた女性は、なぜ自分が親切にされているのか分からず…。“他者の心が分からない怖さ”をテーマに、人と人との距離感を描いた一作。


▼首藤凛監督のコメント
 映画制作は資金や環境が整わなければ撮影に入ることが難しく、特に駆け出しの監督は実践的な学びの場が得られにくいのが現状です。今回、創作意欲が掻き立てられる「CHANEL AND CINEMA - TOKYO LIGHTS」のマスタークラスの後すぐに映画を撮る機会をいただき、感謝しています。
 『親切がやって来る』は、生きる中で常に私を圧迫してくる“他者が何を考えているのか分からなくて怖い”という感覚を描いてみたくて書きました。互いに異なる感覚や考えを持つまさに他者である役者やスタッフの皆さんと、対話を重ねた経験は大変貴重でした。継続されてこそ真価の生まれるプロジェクトだと思います。末長く続いていくことを願っています。

★『夜明け』
監督:田中さくら
出演:深川麻衣、羽瀬川なぎ

 姉妹のリツコとトウコは、ともに人生の節目を迎え、二人暮らし最後の朝を迎えようとしていた。街が目覚める前の静かな部屋で、ぽつりぽつりと交わされる言葉。夜明けとともに別れの時間が近づく中、ふいに、まだ幼かった二人の「一つの出来事」をめぐる記憶の食い違いが浮かび上がる。

▼田中さくら監督のコメント
 この度は、素晴らしい映画制作の機会をいただき誠にありがとうございます。夜が朝に溶けていくその時間、人々は眠りにつき、街はひっそり息を潜める。本作では、そんな誰も知らない日常の狭間で、静かに関係性が変わろうとしている姉妹の姿を切り取りました。
とるに足らない時間に立ち現れる、微かな、けれど確かな変化の予感がそこにはあります。
 この二人だけでなく、世界のどこかで流れる、知らない誰かの大切な時間に思いを馳せるようにして作品をつくりました。本作品がこれから長い旅を続け、一人でも多くの人に届くよう繋いでいきたいと思うとともに、あらゆる文化的背景をもった人たちに、言語を超えて語り合ってもらえることを願っています。

★『夕べの訪問客』
監督:古川葵
出演:佐津川愛美、仁科貴

 一人残業中の弁護士・洋子の前に、かつて離婚裁判で救うことのできなかった依頼者・田代が3年ぶりに現れる。訪問の理由を明かさないまま居座る田代の真意を探るうち、洋子の抱いていた罪悪感は、次第に恐怖へと変わっていく。孤独な2人が繰り広げる緊迫の密室劇。

▼古川葵監督のコメント

 映画制作の機会をいただき、大変光栄です。本作は、2024年11月に開催された
「CHANEL & CINEMA - TOKYO LIGHTS」のマスタークラスで使用した短い二人芝居を基に、その前後の時間を描いたショートムービーです。あのとき舞台上で役者さん2人の間に立ち上っていた生の感情を、今度は映像でどのように表現できるのか、期待と緊張を抱きながら制作に臨みました。2人の芝居を取り巻く光や影、色、音など、さまざまな要素が画面の印象を形作っていることを改めて実感し、「なんか怖い」とドキドキしていただける数分間を目指し、ワンカットごとに
撮影・仕上げを行いました。

■「CHANEL AND CINEMA - TOKYO LIGHTS」 2024年マスタークラス講師からのコメント

▼是枝裕和監督
 まずは、作品完成おめでとうございます。2024年に「CHANEL AND CINEMA -TOKYO LIGHTS」プログラムを立ち上げ、マスタークラスから始まったシャネルとのコラボレーションが、このような作品に結実したことを何よりうれしく思います。
3人の若い監督たちはこの出会いを一つの学びとして次のステップへ羽ばたいてくれたらうれしいです。僕もシャネルもその挑戦を応援します。個人的には、企画選定のプロセスに参加できたことはとても責任も感じましたが、新鮮な体験でした。自分とは異なる才能に触発されながら、僕もまた次の挑戦に向かいたいと思います。

▼ティルダ・スウィントン
 東京で素敵な仲間や若手アーティストと刺激的な時を過ごせたことに深く感謝します。受賞した3作品はどれも新しい感性で人のつながりを描いており、未来への希望を感じさせるものでした。

▼安藤サクラ
 本プログラムで皆様と過ごした時間は私にとって、映画の未来と向き合う刺激的な時間になりました。あの時を共有し、人を見つめたこの素晴らしい三本の映画がうまれたこと、そのすべてのプロセスを心から祝福します。

▼役所広司
 皆さん、それぞれの個性を生かした、力作だと思います。今回のマスタークラスやショートフィルム制作の経験がいろいろな意味で、皆さんの未来に向けてよい経験であったことを祈ります。

▼西川美和監督
 『親切がやって来る』は人間の良心に疑問符をつけた視点が素晴らしく、『夜明け』は緊迫感のあるマジックアワーに撮影を試みた意欲作。『夕べの訪問客』は画作りと会話にケレン味があり、15分という時間の短さを遊べています。
シャネルとともに皆様がより輝きますように。
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