高知県仁淀川町は土佐湾に注ぐ仁淀川(によどがわ)、通称「仁淀ブルー」とも称される色彩美が広がる町。自然豊かな山間の町でもあり、渓流釣りやカヤックなど、豊かな自然を生かしたアクティビティーも楽しめる。
土佐の三大祭りの一つ、秋葉神社で毎年2月11日に「秋葉まつり」が開催される。今回は仁淀川町の観光を考える会の代表である井上光夫さんに秋葉神社を案内してもらいながら秋葉まつりについて話を聞いた。
◆キーマン井上光夫さん
待ち合わせ場所である仁淀川町・別枝(べっし)広場観光駐車場に行くと、一目でキーマンと分かる出で立ちの男性がいる。青と白基調の法被に編み笠の旅姿がスタイリッシュ。熊よけの鈴の音と一緒に歩いてくるこの男性が、プロガイドの井上光夫さんだ。
キーマンは飾り言葉ではない。井上さんは、「高知・仁淀川どっぷり旅体験記(上)古民家宿、神楽の“意外性”を満喫」で紹介した山のめぐみ舎の古城さんの移住のきっかけをつくった“張本人”である。「いろいろと仁淀川町のことを聞いてくる彼女に、難しく考えずに1回、こっちに来てみたら」と声をかけたという。この一言が、年間150人の観光客が泊まる山奥の宿の誕生につながった。井上さんは仁淀川町への移住を促進する中継地点(ハブ)になっている。
◆ガイドのプロ化でまつり存続へ
井上さんは仁淀川町の観光を考える会の代表を務め、プロガイドの後進を育てている。仁淀川町内だけでなく仁淀川水系全体の観光ガイドも行う。
井上さんが今、特に力を入れているのが、観光客に地元住民と深く交流してもらう「どっぷり高知旅」のガイド企画。少子高齢化が進む中山間地の振興策の一つとして高知県観光政策課もPRで後押しする。仁淀川町内では、土佐の三大祭りの一つ、秋葉神社で毎年2月11日に行われる「秋葉まつり」の関係者と交流する旅ガイド企画を実施している。
◆安徳天皇潜幸伝説の地
井上さんを先頭に坂を登って山の高台にある秋葉神社に向かう。所要時間は行って戻っての往復でおよそ3時間半。途中、秋葉まつりの時に、華麗な衣装を身に着けた練りの一行が立ち寄る、立派な造りの旧家(大石家)などを巡る。秋葉まつりは200年以上の伝統があり、秋葉神社の神様がこの地、別枝地区内を巡幸した歴史的由来のあるコースをまつりの一行が練り歩く、年に一度の祭礼である。
そもそも仁淀川町の秋葉神社は平家落人(おちうど)の1人が、現在浜松市にある遠州「秋葉山本宮 秋葉神社」の神様を仁淀川町の地に祀ったのが始まりという。これは全国の山奥に伝わる平家落人伝説の一つだが、この地の伝説が興味深いのは、平家物語では源氏との戦いに敗れて壇ノ浦に入水(じゅすい)した幼い安徳天皇が実は生きていて、遠州・秋葉神社の神様を祭った1人を含む「五勇士」に守られてこの地に逃れたという「安徳天皇潜幸伝説」の壮大な物語性だ。この地には都(みやこ)や手引(ていき)など、この潜幸伝説へのロマンをかき立てる地名が残っている。
◆ブラタモリ気分を味わう
井上さんは傾斜が一段ときつくなり始めたころ、分厚い資料を見せて、山腹に築かれたこの地の集落は、地滑りでできた平地を生かして形成されたと説明する。
秋葉まつりの時には約5000人がこの地を訪れ、今歩いている道は見物客であふれかえるという。井上さんは、先ほど出発した眼下の別枝広場観光駐車場を指さして「まつりの日は、あそこの駐車場は大型バスで満杯になる。とてもにぎやかな一日さ」と語り、まつりの日が今から待ち遠しそうだ。
◆語りの名調子にしびれる
仁淀ブルーを生み出す「緑色片岩(りょくしょくへんがん)」という青白い川石の存在や牧野富太郎博士が発見した植物「ヤマトグサ」の話など井上さんの尽きない話を道々、堪能しながらゆっくり歩いておよそ30分で、秋葉神社に到着した。境内には、大勢の人が秋葉まつりを見学できる、ほぼ半円形ですり鉢状になった石積み8段の観覧席がある。今はしんとしたこの無人の石段観覧席は、まつり当日には人々の熱気に包まれる。規模は違うが、背後の山林が借景となる趣など、どことなく古代ギリシャの円形劇場を思わせる。
秋葉神社境内に情報発信拠点として15年にオープンした秋葉まつりの里会館には、高知原産の長鳴鶏(ながなきどり)の一品種・東天紅の羽根などを先端に付けた長さ約7メートルの指物「鳥毛(とりけ)」などの祭具が飾られ、色鮮やかなまつりの衣装が大事に保管されている。壁には昔のまつりの様子を伝えるたくさんの白黒写真も張ってあり、秋葉まつりの歴史をたどれる貴重な場所だ。
秋葉まつりの里会館館長の片岡和彦さんは「この別枝地区は現在およそ40戸あり、常時住んでいるかは別にして住民は61人。
その上で「今はたくさんの地区外の人が応援してくれており、別枝地区だけでなく、仁淀川町、そして高知県のまつりの意味合いもあります。この大切なまつりを次の世代が将来も“残してくれるだろう”と期待するだけでなく、私自身は“残さなければ”との思いでこれからも秋葉まつりのために活動していきます」ときっぱり語った。この力強い発言に秋葉まつりを支える地元のエネルギーの大きさを実感する。
別れ際、片岡さんの写真を撮影しようとした時、片岡さんは「私は秋葉の神様にお尻を向けません」と拝殿の脇に移動して体を斜めにした。拝殿を背景に撮影しようとした自らの至らなさを恥じる。旅先で生活する人々の暮らし、考え方を尊重してこそ、楽しい旅である。
◆仁淀川“レイニー”ブルー
最後は、井上さんが「絶対行くべき」と勧めてくれた安居渓谷・水晶淵を目指す。車の窓ガラスをたたく雨音は激しくなる。
安居渓谷・水晶淵に到着する。山奥の天候は移り気で、雨は小降りになったかと思うと、突然土砂降りになったりする。
一方、土砂降りになると、また違った表情を見せる。青い川面の上に白いしぶきを伴う雨の水紋が“自然のアート”を織りなす世界が出現する。これを恵みもたらす「仁淀川“レイニー”ブルー」と名付けたい。
自分らしい暮らしを楽しむ人々の姿や、長い時間をかけて受け継がれてきた文化がこの町に深みを与えている。自然、食、そして人に触れ合う“どっぷりと浸かる体験”を求めて仁淀川町に訪れてみてはどうか。
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