少子化が加速し、18歳人口が激減する「2035年の崖」が目前に迫っている。日本の私立大学がかつてない荒波に立たされる中、関西大学は一つのかじを切った。
▼学費依存からの脱却
――6月から開始する「関西大学みらい基金」はエンダウメント型大学基金とのことですが、これは何なのでしょうか。
一番分かりやすいのはアメリカの大学です。卒業生を中心に大量の寄付をいただき、それをすぐに使うのではなく保持しながら運用し、その運用益を教育研究に返していく。それが普通のスタイルで、ハーバード大学では約8兆円、小規模な大学でも数百億~数千億円の基金を持っています。
残念ながら日本の場合、基本的には授業料を中心に単年度の収支を合わせるスタイルですが、これは永続性がありません。コロナや物価上昇、災害のリスクがある中で、何か大きな変動があると一挙につらい状況に追い込まれてしまう。関西大学も本年に創立140周年を迎えましたが、今のままでは50年後、100年後を見通すことは困難です。政府の補助金も減少の一途をたどる中、そのための「備え」というよりも、大学経営のスタイルとして最初の一手を打ちたい。それが基金設立の一番大きな理由です。
――現在の私立大学を取り巻く環境とは。
新任職員にはあえて「構造不況業種へようこそ」と冗談めかして言うことがあります(笑)。それほど、急速な少子化のインパクトはすさまじいものがあります。特に2035年以降は18歳人口が崖を転げ落ちるように減っていきます。身を縮めて支出を削り、小さく残る守り方はあっても、それでは10年後の「学生3割減」の時代には通用しないでしょうね。大学が誇りを持って自立し続けるためには、外部環境に左右されない独自の財政基盤が不可欠です。だからこそ、エンダウメント型大学基金を決断したのです。目標は1千億円。世界に対抗できる教育と研究のレベルアップにつなげていくには、最低でもそのぐらいの規模が必要だと考えています。
▼大学の未来への投資
――日本には寄付文化が根付いていないという声もあります。どのように寄付を集めるのでしょうか。
これまでは建物などを作るための記念事業として寄付をお願いしてきましたが、これからは大学の持続可能性そのものへの支援をお願いしたいと思っています。
最近は「遺贈」への関心も目に見えて増えています。お子さんのいないご家庭や、人生の終わりに不動産などの資産を社会貢献に役立てたいと願う方々からの問い合わせが増えています。また、学生たちが自らスポーツや活動への応援を募るギビングキャンペーンも活発ですね。
――寄付文化を根付かせるには、学生へのメッセージも重要になりますか。
まさに、米ハーバード大学では、入学式の時にこう呼びかけるそうです。「あなた方がここで教育を受けられたり研究したりできるのは、多くの寄付があるからだ。だから卒業して成功したら、必ず次世代のために寄付をしなさい」と。それだけ強い自信を持って、寄付について教育している。日本でも、自分が誰かに支えられたという実感を次の世代を支える責任へとつなげていく教育をしていくべきだと思います。
▼成長は教室の外に
――そもそも大学はどんな場所であるべきだとお考えですか。
大学は、単に単位を取る場所でも、就職のための予備校でもありません。最近では浪人生もほぼいなくなり、18歳から22歳だけが集まる場所となっています。しかし、これは日本だけのいびつな状況で、本来は学びたいと願う誰もが門をたたける高等教育の受け皿であるべきです。将来的にはそこを変えていきたいですね。若者に限って言えば、成長するきっかけをつかめる場所、人が成長することに貢献できる場所でありたいと思っています。
――成長とは具体的に?
私が注目しているのは「準正課」という領域です。授業でもクラブ・サークル活動でもない、その真ん中。例えば、本学には学生同士が支え合う「ピア(同僚)コミュニティ」という活動があるんです。ステューデント・アシスタントとして授業を補助したり、図書館の運営に携わったり。中にはオープンキャンパスで、「私が大学を案内します」と買って出るような、本当に立派な学生もいます。こうした授業とクラブの真ん中にある活動を通じて、職員と一緒に仕事をしたり、誰かの支援をしたりする。
さらに面白いのは、そこに教員ではなく職員が伴走することです。若手職員が部署に関係なく手を挙げて、学生と一緒にプロジェクトに挑むものもあります。時には叱り、時には学生から教わって、職員も成長していく。卒業生が数十年経っても「あの職員さん、まだいてはるかな」と名前を挙げてくれる。そんな場所であることが何より大事だと思っています。
――そうした大学文化が今回の基金設立にもつながっていますか。
そうですね。教職員が学生と真摯(しんし)に向き合い、学生が大学に愛着を持ってくれる。それが結果として、10年後、20年後の「関大ファン」を育んでいくことにつながる。地域社会からも「この大学がなくなったら困る」と言っていただけるような、そんな愛着の持てるコミュニティを作っていきたいと思っています。
▼点と点
――最後に、これから社会へ羽ばたく若者たちへメッセージをお願いします。
スティーブ・ジョブズが語った「コネクティング・ドッツ(点と点をつなぐ)」という言葉を送りたいと思います。自分が一生懸命取り組んでいることが、将来何の役に立つかなんて、その瞬間には誰にも分かりません。ジョブズも、こっそり聴講したカリグラフィー(西洋書道)の授業が、のちに美しいフォントを生むのにものすごく役に立った。だから、自分の「好き」だと思うことを大切にしてほしい。明確な目的が見えていなくても、今を一生懸命やっておけば、それらは数年後、数十年後に必ず一本の線として結びつきます。そう信じて、今をひたむきに生きる若者たちの成長を支え、貢献できる場所であり続けること。それこそが、本学の大事な使命だと思っています。
欧米のモデルに倣い、国内では国主導の大学基金が注目を集めるなか、関西大学は「西の私大の旗手」として大きな一歩を踏み出した。その背後にあるのは、学生と教職員、そして53万人の卒業生たちが「関大ファン」としてしなやかにつながる共同体の姿だった。140年の歴史を背負い、不透明な時代へと漕ぎ出したこの挑戦は、関西の、そして日本の大学が自立するための新たな試金石となるに違いない。
#はばたけラボは、未来世代が思い切りはばたける環境づくりに取り組む共創プラットフォームです。企業・学校・地域とともに多様な取り組みを未来へつなげ、そのはばたきを支えるためにパートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパン、ミキハウスとともにさまざまな活動を行っています。
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