2019年まで白川花凛の名前で地下アイドルとして活動したホワイトリバー白川さん(32歳)。現在は企業の正社員として広報の仕事を担当している。
販売部として3年、広報として2年――芸能界ではなく、一般社会で生きることを選んだ彼女の“選択”に焦点を当てた。
200万円の奨学金を返し続ける「元アイドル」のリアル。芸能界...の画像はこちら >>

「経済的安定」を求めて会社員に

――芸能界を辞めて一般企業に就職する道を選んだ理由を教えてください。

白川:経済的な安定です。私は中学校在学時から地下アイドルやグラビアアイドルとして活動していましたが、残念ながら鳴かず飛ばずでした。幸い、実家が神奈川県なので、実家暮らしをしながら秋葉原のメイドカフェでも働いて、何とか生活が成り立つレベルです。

――アイドル時代と会社員をしている現在で、収入面でどのくらい差がありますか。

白川:額面で言うと、アイドル時代の4倍くらいもらえていると思います。

金銭的には厳しかったアイドル時代

200万円の奨学金を返し続ける「元アイドル」のリアル。芸能界を辞めて一般企業に就職した“やむを得ない”事情
奨学金を返し続けながらの活動は平坦ではなかった
――アイドル時代はご自身のなかでどのような位置づけですか。

白川:自分のなかではファンから与えてもらう温かい感情もあって、それはいい思い出です。綺麗事とかではなく、本心から思います。一方で、大卒後は奨学金を返済しながらの活動でしたし、金銭的にはとてもやっていける状況ではありませんでした。

――奨学金を返し続けているのですね。どのくらい残っているのでしょうか。

白川:私が6歳のときに離婚したため、母が私と兄を女でひとつで育ててくれました。
暮らしは裕福ではありませんでしたが、極貧生活を強いられるわけでもなく、好きなことをやらせてくれた母に現在では感謝しています。

母は地方のお嬢様で、自身も大卒であることから、「子どもにも学歴を」と考えていた節が強いですね。私はいわゆる「Fラン大学」なのですが、一応大学を卒業しています。アイドル当時は200万円くらい奨学金がありましたが、現在は毎月2万円を返済していてあと2年くらいで完済できそうです。

進学校から“Fラン大学”へ進んだワケ

――あまり勉強は熱心ではなかったのでしょうか。

白川:実は中学生までは勉強を頑張っていました。体育は苦手でしたが、体育以外は成績もオール5だったんです。生徒会の副会長もやっていましたし。ところがちょうど『電車男』がブームになったくらいで、地下アイドルにスポットがあたった時期と思春期が重なって……「私にもできるんじゃないか」とか思ってしまって。たまたま英語ができたので、英語に力を入れている進学校に入学したのですが、高校時代は授業中によく寝てしまう生徒でした。

――アイドル活動が忙しかったからですか。

白川:そうですね。高校時代はライブをやると、帰宅が23時くらいになってしまうんです。
そこからダンスの振りを練習したりしてお風呂に入って……深夜2時くらいですよね。睡眠時間が足りなくて……。だから本当に適当に大学も選んだ感じです。

やる気はあったものの、現実は甘くなかった

――芸能界で生きていこうと思っていたのでしょうか。

白川:いや、正直そこまで考えていなかったですね。ただやりたいからやっていた感じで。今にして思えば、アイドルとして活動したあとに運営に回るとか、プロデューサーになるとか、いろんな出口戦略を考えていた子もいたとは思います。けれども自分は、ただやる気だけで突っ走ってきたんですよね。

それで、気がつけば経済的にも立ち行かなくなるし、自分の生活を回すことも難しかった。自分が甘いせいだと思って実家を出て独り暮らしをしたこともありましたが、金銭面で折り合わずにすぐに実家に戻ったこともあります。

――実家との関係性はよいわけですね。

白川:母とは、現在のほうが仲がいいような気がします。やはり高校時代は深夜に帰宅する娘を心配していたでしょうし、アイドル活動自体を手放しで応援してくれていたわけではないと思います。
どこか「遊びの延長なんじゃないか」と思われていた部分もあって……。でも今は社会人生活を5年続けているし、自立した生活をしているので、肯定的にみてくれているのではないでしょうか。

兄とは10年くらい口を聞いていなくて。というのも、私、家庭内での序列が下なんですよ。兄はいわゆる体育会系の陽キャで。昔はよく「どけ、ブス」とか言われていたので……。

アイドル時代の経験が今の仕事に活きている

――それは傷つきますね。アイドル時代も、ファンから優しくしてもらえる一方、きつい言葉を浴びせられたりしたのではないですか。

白川:ありましたね。一度、私たちのグループは炎上しているんです。大きなライブ会場で、いろんなユニットが入れ代わり立ち代わりパフォーマンスをする機会があって。そこで、水鉄砲を噴射する演出をしたのですが、それがきっかけで次の演者で転倒する子がいて。そのグループのファンと思われる人にネット掲示板に「足首を折って死ね」と書かれたことがあって。


――心ない言葉に食らってしまいそうですね。

白川:中学くらいから、もともとうっすら「死にたい」とは思っていたんですよ。その言葉をみたとき、「もういいかな」と思って。自宅の床にローションを撒き散らして、わけがわからなくなって……結局、足をすべらせて肘を骨折しました。

――そう考えると、やはり一般企業で働く今のほうが幸せですか。

白川:うーん、はっきり私のなかで芸能生活と現在は区別されていないんですよね。たとえば広報の仕事も、TikTokで動画が100万回再生を回ったりして実績を残せたのですが、それもアイドル時代のセルフプロデュースがあったからだと考えているんです。だから、全部の経験が地続きになっているので、すべてひっくるめて幸せだったなとは思います。

「死なないこと」を目標に

――今後の目標はありますか。

白川:結婚願望もないし、子どもがほしいとも現在は思っていないんですよね。もちろん、元アイドルの友人たちからそうした報告を聞くのは嬉しいし、素直に「おめでとう」と思うんですが、今の自分は生活をきちんと回すので精一杯で。きっと社会人になったのも遅いし、アイドル時代もただがむしゃらにやるだけだったので、同年代と比較して精神的に幼いんですよね。
だからとりあえず、今の目標は「死なないこと」でしょうか(笑)。

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自らの魅力を売り物にするアイドルは、まさに”水もの”。栄枯盛衰の激しいアップダウンに翻弄され、精神を病む者も多いだろう。だがホワイトリバー白川さんは、自分の生活の原点を冷静に見つめ、過去を肯定しつつ地に足のついた毎日を送る。過去を切り捨てない柔軟な”選択”に、彼女の優しさが滲む。

<取材・文/黒島暁生>

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ホワイトリバー白川


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【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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