住宅ローンは何年ローンを組むべきか。また金利は変動と固定のどちらを選ぶべきなのか。
「不動産Gメン」として活動する滝島一統さんは「50年ローンだけは絶対におすすめできない。また、金利の低い変動型でしか家を買えない人はそもそも家を買わないほうがいい」という――。
※本稿は、滝島一統『得する不動産バイブル ハンコ押す前に読む本』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■「私はいくらまでの住宅を買えるの?」シンプルな計算方法
購入できる住宅の価格は、「用意できる頭金+住宅ローンの借入額」です。
購入時には新築では価格の3~5%程度、中古では価格の5~7%程度の諸費用がかかるので、その分も用意する必要があります。まずは予算の上限を決めて、そこから物件探しをするのが、無理のない購入につながります。
頭金は、自身の預貯金のほか、親から贈与を受ける例もあります。年間110万円以上の贈与を受けると贈与税がかかりますが、住宅の新築、取得、増改築に充てるお金を贈与してもらう場合は、最大1000万円までが非課税になります(住宅取得等資金贈与の特例。2026年末までの贈与が対象。2026年1月現在)。
ただし、父母や祖父母からの贈与、床面積が50平方メートル以上、中古では耐火建築物では築25年以内、非耐火建築物は築20年以内などの要件があります。
■頭金が多いほどより高い家を買える
頭金を多く用意できれば、より高い家を買うことができます。
また同じ価格の家を買うにしても、頭金が多ければ借入額を抑えられ、返済負担を軽くできます。
とはいえ、預貯金全額を購入に充てるのは危険です。病気などによる収入減や、臨時の支出も想定し、教育費などある程度の金額は残しておく必要があります。
条件がそろえば、頭金ゼロでも購入は可能で、ローンをたくさん借りるといった無茶をしなければ、頭金なしでの購入も否定しません。ただし万が一の場合のリスクは大きくなります。
購入後すぐにどうしても売らざるを得なくなった場合、5000万円の家を頭金1000万円で買っていれば、1000万円値下がりしていても売却はできます。しかし頭金ゼロ・借入額5000万円では、少しでも値下がりすると、売却代金でローンを返済しきれず、売却できない場合もあります。
頭金もない、購入時の諸費用も用意できない場合はどうでしょうか。返済能力があれば、諸費用も借りることはでき、金融機関によっては住宅ローンに組み込んでくれる場合もあります。住宅ローンとは別枠になる場合は金利が高くなったり、返済期間が短縮されたりします。
しかし、そもそも諸費用もない人は、お金を貯めるのが苦手なのかも知れません。そんな人がしっかり返済できるのかも気になるところです。

■「家賃と同程度なら無理なく返せる」は大間違い
ローンをたくさん借りれば物件の選択肢は広がりますが、借りすぎには要注意です。
まず、「家賃と同程度なら無理なく返せる」というのは、大きな間違い。
購入後、マンションなら管理費や修繕積立金、車があれば駐車場代もかかります。修繕積立金は共有部分の修繕に使う費用なので、専有部分の修繕費は自分で用意していかなければなりません。一戸建てはすべて自分で行いますから、やはり費用の準備は必要です。
マンション、一戸建てともに、所有している間はずっと、固定資産税もかかります。ローン返済が家賃並みであっても、別途、それらの支出が生じるのです。
強調しておきたいのは、自分が最悪の状況になったときでも返済できる金額にしておくことです。産休・育休を取得したり、病気療養したりで収入が減る、転職したものの思うように収入が伸びないなどの可能性も考慮し、それでも払えるくらいにしておくことです。無理なく返済できる額をじっくり考えてみましょう。
■遅くとも65歳までにはローンは返し切りたい
返済期間によっても借りられる額が変わってきます。
多くの金融機関では、返済期間は最長35年ですが、リタイア後にも返済が続くのは大変です。
理想的には60歳まで、遅くとも65歳までに完済できる年数にしたいものです。
65歳までに完済するなら、35歳の人なら30年返済、40歳なら25年返済です。返済額が月10万円・金利2%で、30年返済なら借りられる額は約2710万円、25年返済なら約2364万円です。
■毎月の返済額が抑えられる「50年ローン」は有用か
都心など一部地域では住宅価格が高騰。そんな中、一部の地方銀行などではじまったのが、最長返済期間50年の住宅ローンです。
たとえば5000万円を金利2%、35年返済で借りると、毎月の返済額は約16.5万円です。対して50年返済では13.2万円弱で、毎月の返済額は3万円以上抑えられます。
「16万円は払えないけど、13万円ならなんとかなるぞ!」というわけで、返済期間が長いことで支払いが楽=買いやすくなる、というわけです。
■「50年返済」は絶対におすすめできない
しかし50年返済となれば、25歳で借りたとしても完済できるのは75歳、30歳で借りたら80歳です(完済年齢は80歳までとされているケースが多い)。住宅ローンは定年までに完済するのが望ましいといわれていますが、それは年金から住宅ローンを返済するのは困難だからです。退職金で完済するという手があるといいますが、退職金は大事な老後資金であり、返済に多額を要すると、老後資金が不足しかねません。
30歳で5000万円を金利2%で借りるケースでは、30年後の残債(ローン残高)は、35年返済でも約943万円。
50年返済では約2603万円です。
50年返済では60歳のときに残高が2600万円以上もあり、平均的な会社員では退職金で返しきれるものではありません。元気なうちは働くとしても、高齢になれば収入は下がるものですから、かなり大変でしょう。
途中で繰り上げ返済(先々の返済分を任意で前倒しで返済)すればいいと思うかも知れませんが、お子さんがいれば年々教育費の負担は増えていくし、順調に収入が増える保証もありません。そう簡単には実行できないでしょう。
値上がりしたら売ればいい? 値上がりする保証はどこにもありません。
返済期間が長くなることでローンの利息が多くなるのも問題です。借入金5000万円・金利2%の場合、35年返済では利息は約1945万円、50年返済ではなんと約2900万円です。
50年返済は、絶対におすすめできません。
また、災害や経済危機のリスクも、返済期間が長ければ長いほど高まります。
■金利は変動か、固定か
住宅ローンの金利には、「長期固定型」「一定期間固定型」「変動型」 の3種があります。
長く超低金利時代が続いたため、圧倒的多数の人は変動型を利用しています。
固定型より金利が低く、金利優遇を受ければ、1%以下で借りられました。
金利が低ければ返済額が抑えられます。そのため、同じ返済額でも、金利が低いほど借りられる額は多くなります。
ただし、変動型は借りたあとも金利が見直され、金利が上がれば返済額も増えます。月10万円の返済で収まるように借入額を決めたのに、金利が上がって返済額が11万円、12万円などに増えてしまう可能性があるのです。
バブル期ほどではありませんが、金利が3%ぐらいまでは上がる可能性は十分あると思います。金利が1%から3%になると、5000万円借りている人なら年間で100万円変わるケースもあり、相当なダメージです(返済期間により異なる)。
住宅ローンは30年、35年など、長期で組むのが普通で、途中で金利が上がるのはほぼ確実です。それならば、固定のほうがいいのではないでしょうか。
■変動でしか買えない人はそもそも住宅を買わないほうがいい
固定型は変動型より金利は高くなりますが、途中で返済額が増える心配はありません。
とはいえ、変動型に比べて当初の金利が高くなるので、一定期間固定型を検討するといいでしょう。一定期間固定型とは、当初10年、5年など、一定期間、金利が変わらず、一定期間を過ぎると、その時点の金利情勢に応じて金利が見直されるタイプです。
当初の金利は変動型より高いですが、長期固定よりは低い金利で借りられます。
たとえば10年固定なら10年間は金利が変わらず、その間に確実にローン残高が減っていきます。ローン残高が多いほど、金利が上がった場合の返済額の増え方は大きくなりますが、10年経っていればある程度、元金が減っているので、返済額の増え方も抑えられる可能性があります。
変動型の低い金利でないと買えないという人は、買わないほうがいいのではないでしょうか。長期固定型でも返せる額、あるいは長期固定型の水準まで上がったとしても問題なく返済できるのが、借りていい金額です。借入額は金利が3%くらいになっても返せる額に抑え、金利が低いうちは変動型で返済額を抑える、という使い方がいいでしょう。

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滝島 一統(たきしま・かずのり)

不動産系YouTuber

1976年東京都生まれ。明治大学商学部卒業後、ミサワホーム入社。25歳の時に渋谷区初台に不動産会社光文堂インターナショナルを設立。2011年より海外不動産事業にも進出。2022年6月、YouTubeチャンネル「不動産Gメン滝島」をスタート。不動産業者に騙されないための情報、物件の見方など、ユーザー目線の情報をコワモテで語る動画が人気を集め、1年で登録者数26万人を突破した。漫画原作者として『SWEET DEAL(スウィートディール)』でデビュー。

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(不動産系YouTuber 滝島 一統)
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