■周囲をよく見て、よく考えている子
私が代表を務め、脳科学の立場から子どもの発達支援を行っている「子育て科学アクシス」にやって来る子どもたちを見ていると、「よく話す子」と同じくらい、「ほとんど話さない子」がいます。
椅子にちょこんと座り、周囲を静かに観察し、私の質問にも短くうなずくだけ。といっても、話を理解していないわけではありません。ただ、とても静かなのです。
親御さんは少し困ったような表情で言います。「この子、とにかく無口なんです……」
私は、その言葉を聞くたびに、「無口であること」が、そんなに悪いことなのだろうか、と考えます。
私たちはいつの間にか、「話せる子は良い子」「自己主張できる子はたくましい子」という価値観をもってしまっているのではないでしょうか。だから、静かで、あまり自分の意見を言わない子どもを見ると、「このままで大丈夫なのだろうか」「何か足りないのではないか」と不安になってしまうのです。
でも、脳の発達という視点から見ると、「よく育っているから、よく話す」ということではないのです。
無口な子どもたちも、話す力がないわけではありません。むしろ、周囲をよく見て、よく考えている子が多いと私は感じています。
「今、話をしていいのか」「こんなことを言ったらどう思われるか」と、頭の中で何度も考えたうえで慎重に言葉を選び、口を開きます。
「話せない」のではなく、「話すことがあんまり好きではない」というだけなのです。
ところが、大人はつい、「ちゃんと自分の意見を言わないと」「もっとはっきり話しなさい」と言ってしまいがちです。自分の意見を堂々と話す子どもを「理想」としてしまうからです。
親としては励ましているつもりなのでしょう。でも、子どもは、「話さない自分」を責められているように感じてしまいます。話すことがあまり好きではないのに、無理やり「話せ!」と言われているような気分になってしまいます。話すことに対するネガティブな感情が、さらに高まってしまいそうです。
■無口な子どもが感じやすいこと
必要なのは、話す練習ではありません。「話さなくても大丈夫だと思える安心感」です。
無口な子どもほど、「どうせ聞いてもらえない」「変なことを言ったら否定される」と感じやすいものです。親が忙しそうにしていたり、スマートフォンを見ながら生返事をしたり、「それは違うよ」「こうすればいいでしょ」と結論を急いだりすると、その気持ちは強まっていきます。
子どもが何か話し始めたら、短くても、まとまっていなくても、「そうなんだ」「そう思ったんだね」と、そのまま受け止めてやってください。それだけで、「話してもいい」という感覚は、少しずつ育っていきます。「もっときちんと話してごらん」といった、評価や指導はいらないのです。
■待ってもらえた経験が自分で話す子をつくる
もう一つ、気をつけてほしいのが、親が子どもの代わりに話しすぎないこと。
無口な子どもの親ほど、「この子は人見知りなので」「恥ずかしがり屋で」と、周囲に説明したくなるようです。
でも、それが続くと子どもは「自分は話さなくてもいい」「誰かが代わりに伝えてくれる」と学習してしまいます。自分で話す必要がなくなってしまうのです。
もしお子さんが言葉に詰まっていても、その先を引き取ってしまわないでください。そして、「今、考えているんだね」と、時間を与えてやってください。その「待ってもらえた経験」が、「自分のペースで話してもいいんだ」という感覚につながっていきます。
沈黙の時間も、決して無駄ではありません。
無口な子どもたちは、話していないときにも、頭の中で言葉をため、整理し、組み立てています。
「今は話さなくてもいい」
「そのままのあなたで大丈夫」
親がそう思えているかどうかは、不思議と子どもに伝わるものです。無理に変えようとしなくていいのです。
■安心して言葉を紡ぎ出せる環境を
親にできることは、話す力を引き出すことではありません。安心して言葉を紡ぎ出すことができる環境を、静かに整えてやること。それが、無口で自己主張が苦手な子どもの脳と心を、いちばん確実に育てる道だと、私は考えています。
※本稿は、『プレジデントFamily2026春号』の一部を再編集したものです。
----------
成田 奈緒子(なりた・なおこ)
文教大学教育学部教授、子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表
小児科医・医学博士・公認心理士。1987年神戸大学卒業後、米国ワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)、『子どもの脳を発達させるペアレンティング・トレーニング』(共著、合同出版)、『子どもの隠れた力を引き出す最高の受験戦略 中学受験から医学部まで突破した科学的な脳育法』(朝日新書)など多数。
----------
(文教大学教育学部教授、子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表 成田 奈緒子 大島七々三=構成 タケウマ=イラストレーション)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
