■内定が出にくい人の癖
深刻な人手不足によって、新卒の就職活動ではエージェントや企業による「オワハラ(就活終われハラスメント)」が広がっているという。こういった圧力の影響で「断るのが怖い」「不義理をしたくない」と萎縮し、不本意ながら受ける企業を絞り込んでしまう真面目な学生も少なくない。
中途の転職市場にも、似たような落とし穴がある。「在職中に他社を受けるのは誠意がない」「退路を断って本気度を示したい」そう考え、緊急度がないにもかかわらず会社を辞め、転職活動に飛び込んでしまう人が多くいる。
かつてアナウンサー試験に100連敗し、これまで多くの就活生・転職者の相談に乗ってきた私は、そんな真面目な人たちに断言したい。
「人は、追い込まれると弱い」
■「退路を断つ」という美学が招くもの
かつての私自身、「退路を断ってこそ本気になれる」と信じて疑わなかった一人である。
根拠のない自信を胸に、東京のキーTV局からアナウンサー試験に挑み、就職留年を経て、北海道から沖縄まで全国の放送局を2年以上受け続けた。場数を踏むうち、最終面接に残ったのは7回。「一次試験で落ちることはほぼない」という状態にはなっていた。
この間、私は「滑り止め」の一般企業を一切受けていない。「保険があると自分を甘やかしてしまう」「夢を叶える人間は、退路を断って努力をしているはずだ」と信じていたのだ。
ところが大学卒業が目前に迫った冬、異変が起きた。急に面接が通らなくなった。通過して当然だった一次試験にすら落ち始め、自分のパフォーマンスがまるで出せない。
原因ははっきりしていた。タイムリミットが迫る焦りが「悲壮感」となって全身からにじみ出ていたのだ。「なんでもやります、頼むから内定をください」そんな懇願モードとなり、面接官の顔色をうかがい、少しでも気に入られようと迎合していた。
企業が求めるのは「一緒に働きたい魅力的な人物」であって、「拾ってほしいとすがりついてくる人物」ではない。懇願すればするほど、魅力的な人からは遠ざかっていくのだ。
■面接で「ブラック企業ですね」と言った結果
精神的に追い詰められた私は、ついに信条を曲げることにした。「保険」を作るために、一般企業を受けることにした。
冬からでも受験できる企業は意外と多い。私が選んだのは、とある企業の営業職。
志望度が低いからこそ、私は落ち着いていた。集団面接では、本命がアナウンサーであることも正直に伝えた。周りが「どうしても御社に入りたい」と熱弁するなか、面接官がこう尋ねた。
「うちの企業のイメージは?」
他の学生は「やりがいがある」「実力主義で成長できる」とポジティブな言葉を並べる。一方、失うものが何もない私は、平然とこう答えた。
「ブラック企業ですね」
面接官から、どっと笑いが起きた。いまでこそ労働環境は改善されているだろうが、当時はその企業名を検索すると真っ先に「ブラック企業」という関連ワードが出てくる状態だった。全員が知っている事実をあえて避けて通るほうが、私には不自然に思えたのだ。
さらに「徹夜はできるか」と問われ、周囲が「体力には自信があります」「喜んでやらせていただきます」と勇ましく答えるなか、私は正直に返した。
「できればやりたくないですが、どうしてもというときには頑張ります」
相手に媚びず、かといって喧嘩腰でもなく、ありのままを言葉にした。
結果はどうなったか。私はその場で別室に通され、あっさりと内定をもらった。
どうしても入りたいと懇願した本命には相手にされず、志望度の低かった会社からはありのままの言葉で内定が出たのだ。
誤解しないでほしいのは、決して「横柄な態度」や「奇をてらった発言」を推奨しているわけではない。この時の勝因は、内定ほしさにすがりつく「悲壮感」がなくなり、飾らない「素のコミュニケーション」を取ることができたことである。
■命綱があるから、バンジージャンプは飛べる
一つの企業の内定という「保険」を手に入れた瞬間から、本命であるアナウンサー試験のパフォーマンスは劇的に変わった。
「ここで落ちても、春から行く会社はある」その安心感は絶大だった。何よりのびのびとしゃべることができる自分に驚いた。面接官に迎合することなく、自分の素の面白さや正直さをぶつけられるようになった。保険内定を得てからわずか1カ月後、都内のローカル局のアナウンサーの内定を勝ち取ることができた。
私が長く苦しんだ原因は、結局のところ「退路を断つほうがカッコいい」という思い込みだった。
世の中を見渡せば、保険をかけながら成功をつかんだ人はたくさんいる。
■データが示す「背水の陣」のリスク
気象キャスターなどのキャリアを積んだ今、私は就活生や転職希望者の相談に乗っている。その中で「追い込まれて負のループに陥る人」を数えきれないほど見てきた。だから転職希望者には、「心身を壊しそうな緊急事態でない限り、いまの会社を辞めずに活動すべきだ」と伝えている。学生には「第一志望を受ける前に、できればどこかひとつでも内定という保険をもらっておいたほうがいい」と助言している。
これは個人の経験則だけではない。人材サービス会社などによる客観的なデータからも読み取ることができる。
①転職における「空白期間」リスク
レバレジーズによる中途採用担当者を対象とした実態調査によれば、離職期間(キャリアの空白期間)は「仕事への耐性が弱そう」「仕事への意欲が低そう」といったネガティブなバイアスを抱きやすくなるという。在職中に活動していれば、そうした疑念は生じない。
②焦りが招く「不本意な妥協」リスク
GOLD CAREERの調査でも、転職経験者の約8割が「転職活動は働きながらするべき」と回答している。退職して貯金が減っていく焦りは冷静な判断力を奪い、「どこでもいいから早く決めたい」と、本来なら選ばないような不本意な条件や環境で妥協してしまう要因となる。
③新卒就活における「内定の二極化」
就活情報サイトマイナビの大学生活動実態調査を見ると、就活後半で「内定0社」の学生が約1割残る一方、「3社以上」の内定を得ている学生は4割を超える。内定保有者の平均獲得数は2025年卒の実績で2.7社だという。
つまり、1社受かる学生はまぐれではなく、連鎖的に複数社から内定を得ているのだ。もちろん、受ける企業の規模や競争率にもよるが、私が見てきた中でも、「最初の1社」が心の余裕を生み、面接のパフォーマンスを押し上げ、次の内定を呼び込むという学生は多い。
■私たちは「小心者の凡人」である
「背水の陣」で奇跡を起こせるのは、ごく一部の才能、運、精神力を持つ人だけだ。
私を含め、多くの人間はプレッシャーに弱く、先行きが見えない不安に押しつぶされてしまう。そんな小心者の凡人は、保険があるからこそ思い切って勝負ができる。いま挑戦を迷っている人のなかにも、命綱さえあれば思い切り跳べる人がきっといるはずだ。
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佐藤 圭一(さとう・けいいち)
気象キャスター、リポーター
長野県岡谷市出身。学生時代、アナウンサーを志すも100社以上から不採用通知を受け取る。それでも粘り強く挑戦を続け、ローカル局でキャリアをスタート。その後、文化放送の報道記者・リポーターとして国会や首相官邸、災害現場など幅広い取材を経験。
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(気象キャスター、リポーター 佐藤 圭一)

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