※本稿は、上月正博『100歳まで元気な心臓の育て方100』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。
■ウォーキングの「正しい歩き方」とは
有酸素運動の中で最もおすすめのウォーキングですが、漫然と長い距離を歩けばよいのではなく、フォームへの意識が重要です。
まず押さえておきたいのは、背筋を伸ばし、歩幅を大きく取ることです。腕を大きく前後に振り、かかとから着地し、つま先でしっかりと地面を押すようにしましょう。ひじは直角に曲げますが、ひざは伸ばしてください。怪我を予防するために大切なポイントです。
速さは「息が少しはずむ程度」を意識しましょう。隣にいる誰かと、なんとか会話が楽しめる程度の「楽すぎず、きつすぎない」強度が目安です。1日30~60分が目標ですが、10分ずつ1日3~6回に分けても効果は変わりません。
■雨の日も酷暑日もできる「踏み台運動」
雨の日や冬の寒い日、また外に出るのがどうしても億劫(おっくう)な日に、家の中で手軽にでき、かつウォーキングと同等以上の効果を期待できるのが「踏み台運動」です。テレビを見ながら、家族や友人と話しながら、といった「ながら運動」として日常に取り入れやすい点も大きなメリットです。
また、平地を歩くウォーキングに比べて、高低差のある段の昇降動作は下半身の筋肉をより刺激するため、短い時間でも効率よくふくらはぎや太ももを鍛えることができます。
■まずは「1回5分」から始めてみる
用意する台は、市販のステップ台はもちろん、ご自宅の階段の段差など、20cm程度で高さが安定した台であれば構いません。
慣れないうちは、10cmほどの低めの台から始めると安全です。やり方は非常にシンプルです。
①肩の力を抜き、台の正面に立つ。
②片足ずつ台に乗せ、両足が乗ったら、台の上で一度ひざと腰をしっかり伸ばして直立する。
③先に乗せた足から1歩ずつ下ろす。
③まで終わったら、次は②とは反対側の足から先に乗せるようにして、左右交互に繰り返します。「最後に下ろした足を乗せる」ということです。
ウォーキングのときと同様のフォームを意識し、足元のバランスを崩さないように注意しながら、不安な場合は壁や手すりに手を添えて行いましょう。ほかの運動と同じように、呼吸を止めずにリズムよく、「ややきつい」と感じる一歩手前のペースで行ってください。
ウォーキングよりも強度が高いので、まずは5分程度から始め、慣れてきたら10分、15分と時間を延ばしていきましょう。
■「革靴風スニーカー」で通勤を運動に
「運動のための時間」を特別につくるのが難しい場合は、毎日通勤や買い物のときの歩き方を運動に置き換えられれば、ハードルはぐっと下がります。日常の歩行のうち合計30分ほどを、いつもの「ダラダラ歩き」から、先ほどご紹介したフォームを意識した「ウォーキング」へと変えてみましょう。
30分連続して歩く必要はありません。5分、10分といった小分けの積み重ねが大切です。スーツスタイルのビジネスパーソンは、通勤時だけでも歩きやすい靴を履けばウォーキングの意欲が上がります。最近は、一見ビジネスシューズに見えて実は歩きやすい「革靴風スニーカー」なども売られていますので、ぜひチェックしてみましょう。
■食べる前の筋トレで高血糖を防ぐ
心臓や血管を急速に老けさせる「食後高血糖」の予防には、実は食前の筋トレが非常に効果的です。食事の前に筋肉を動かしておくと、食事によって血液中に増えた糖分が、スムーズに筋肉へと取り込まれるようになります。
おすすめは、食事の5~10分前に行う「かかとの上げ下ろし」や「ゆるスクワット」です。下半身の大きな筋肉を刺激することで、食後の血糖値の上昇が緩やかになり、血管へのダメージを最小限に抑えることができます。
もちろん、空腹でフラフラしているときや体調が悪いときには無理をしないでください。まずは「夕食の準備のついでにスクワットを5回」などといった小さな習慣から始めてみましょう。
■心臓を若返らせ、寿命を延ばす筋肉
心臓にとっては無酸素運動よりも有酸素運動のほうがより効果的ですが、近年の研究では、適切な強度の筋トレは心臓への負担を減らすだけでなく、私たちの寿命そのものを左右することが明らかになっています。
65歳以上の男女約3万5000人を対象にした調査によると、歩行速度が速いグループは、遅いグループに比べて10年後の生存率が約3倍も高かったといいます。歩くスピードは筋肉量と密接に関係していますので、筋肉を維持し、力強く歩ける体を保つことこそが、健康長寿の決定的な条件なのです。
筋肉をつけるメリットは、心臓のポンプ機能を助けるだけにとどまりません。全身の筋肉の約7割は下半身に集中しています。特に太ももの「大腿四頭筋」などの大きな筋肉を鍛えると、基礎代謝が上がり、太りにくい体に変わります。さらには、酸素を取り込む能力(最大酸素摂取量)もアップするため、少しの動作では息切れしない、疲れにくい体質へと改善されていくのです。
また、筋肉量が増えることで、より多くの血糖を筋肉に取り込むことができるようになるため、糖尿病のリスクも抑えることができます。
ただし、心臓に不安のある方は特に、重いバーベルを持ち上げるような激しいトレーニングは禁物です。大切なのは、日常生活の中に無理なく組み込める「軽い負荷」を継続することです。
本書では、体操を行ううえで大切な「ひなまつり」のポイントをご紹介しましたが、筋トレでも同じように重要です。「広い範囲に関節を動かし、大きな動作で」「長く(1つの動きに10~15秒)」「マイペースで」「『ツー』と声を出しながら」「リラックスしながら」行うようにしましょう。
このポイントが守れない筋トレは負荷が高すぎる可能性が高いので、1つの目安として活用してみましょう。
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上月 正博(こうづき・まさひろ)
医学博士
医学博士。日本心臓リハビリテーション学会名誉会員、日本腎臓学会功労会員、総合内科専門医、腎臓専門医、高血圧専門医、リハビリテーション科専門医。1981年、東北大学医学部卒業。東北大学大学院内部障害学分野教授、東北大学病院リハビリ部長、東北大学大学院障害科学専攻長、同先進統合腎臓科学教授を歴任。2022年より現職。心臓や腎臓などの内部障害のリハビリを専門とする。2011~2021年日本腎臓リハビリテーション学会理事長。2020年より国際腎臓リハビリテーション学会理事長。2008~2022年日本心臓リハビリテーション学会理事(2013年学術集会長)。2018年には腎臓リハビリテーションの功績が認められ、心臓や腎臓の分野に貢献した科学者に贈られる世界的に名誉ある賞「ハンス・セリエメダル」、2022年には「日本腎臓財団功労賞」を受賞。著書に『医師がすすめる 自力でできる 弱った心臓を元気にする方法 心臓リハビリメソッド』(アスコム)など。
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(医学博士 上月 正博)

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