──ドラゴン出版が背負う「思想と実装をつなぐ」という使命



■ なぜ今、出版なのか

「なぜ今、出版なのですか」。これは、私が最近もっとも多く受ける問いである。
実のところ、私自身、出版という事業を狙って始めたわけではない。それは、十数年にわたって現場で見続けてきた風景の中から、徐々に立ち上がってきたものだった。

宮城・仙台を拠点に、私はこの十数年、ずいぶんと散らかった経歴を歩んできた。大手住宅メーカーと大手生命保険会社で15年間のトップセールスを経て、コロナ禍に株式会社Dragon connectを創業。住宅不動産、保険、医療、訪問看護、人財、健康経営、産前産後ケア、農林水産業の資金調達。さらには、政策提言事務局、政治団体代表まで──。傍から見れば一貫性がないかもしれない。だが、私の中ではずっと一本の線でつながっていた。

■ 人の暮らしは、業界では分かれていない

 家の問題は、家だけの問題ではない。お金の問題は、お金だけの問題ではない。健康の問題は、医療だけの問題ではない。地域の問題は、行政だけの問題ではない。
事業承継も、相続も、経営も、環境も、未来の世代の問題も、すべてつながっている。

にもかかわらず、現代社会は何でも分けて考える。業界で分ける。部門で分ける。制度で分ける。専門で分ける。中央と地方で分ける。公と民で分ける。学と実務で分ける。そして、その分断のあいだで、本来届くべきものが届かなくなる。必要な知恵が現場へ届かない。必要な制度が生活へ届かない。
必要な資源が未来へ巡らない。必要な想いが、言葉の違いによって消えていく。

私はその現場を何度も見てきた。だから、さらに管理を強める経営に限界を感じている。さらに中央に集めるだけの統治にも、さらに分業を細かくするだけの仕組みにも限界を感じている。必要なのは、管理の強化ではない。必要なのは、接続の設計である。

■ 「コネクトマネジメント」という思想の誕生

人と人をつなぐ。理念と現場をつなぐ。事業と地域をつなぐ。専門知と生活者をつなぐ。産と官、学と民のあいだに意味の通路をつくる。
過去の傷と未来の可能性をつなぐ──。私はこの一連の働きを、いつしか「コネクトマネジメント」と呼ぶようになった。

この思想は、机上で生まれたものではない。事業の現場で生まれた。失敗の中で生まれた。分断の中で生まれた。だからこそ、これを書籍として残し、ひとつの出版レーベルから世に問うことには意味がある──そう確信するまでに、数年の時間がかかった。

■ ドラゴン出版が目指す「横断する言語」

ドラゴン出版が目指すのは、単にベストセラーをつくることではない。実践と思想のあいだに、橋を架けることである。

経営の現場には、書籍化されないまま消えていく実践知が無数にある。地域の現場にも、行政の現場にも、医療の現場にも、研究の現場にもある。しかし、これらは多くの場合、当事者だけのものとして終わる。
横断する言語を持たないからだ。

ドラゴン出版は、この「横断する言語」を編む出版社でありたい。経営者の現場知を、研究者が読める形に。研究者の知見を、行政が動ける形に。行政の論理を、地域実践者が使える形に。地域の痛みを、経営判断に乗る形に。違うセクターの人々が、互いの言葉を読み合える場をつくる。それが、ドラゴン出版の使命である。

■ 第1弾『神様の連邦経営』が問いかけるもの

第1弾として刊行する『神様の連邦経営──コネクトマネジメント』は、私自身がこの十数年、現場で確かめ続けてきた経営思想をまとめた一冊である。中央集権でもない。放任でもない。支配でもない。
依存でもない。理念を中心に置き、それぞれの個・部門・事業・セクターが自律しながら、ひとつの大きな使命によって結ばれる──そういう経営を、私は「神様の連邦経営」と呼ぶことにした。

ここでいう神様とは、人の上に立って崇められる存在ではない。もっとも多くを持つ者が、もっとも多くを引き受ける。もっとも強い者が、もっとも弱い立場に責任を持つ。もっとも中心にいる者が、もっとも外側にいる人の痛みに耳を澄ます──そのようなあり方の比喩である。本書はこれを、ノーブレス・オブリージュ(高貴なる者の責任)を内蔵した経営思想として体系化したものだ。

分断の時代に、ひとつの出版社が生まれる


■ 世界は、一気には変わらない

世界は、一気には変わらない。大きなスローガンだけでは変わらない。正しさだけでも変わらない。制度だけでも変わらない。変わるのは、一人の実践者が、支配ではなく接続を選んだときだ。
一つの会社が、利益の独占ではなく循環を選んだときだ。一つの地域が、依存ではなく自律と連携を選んだときだ。一つの組織が、管理ではなく意味と血流を取り戻したときだ。

ドラゴン出版は、その小さな選び直しに、言葉という伴走者を届ける。今後、経営、地域、医療、政策、研究、教育など、各分野の実践者と協働しながら、「思想と実装をつなぐ書籍」を継続的に刊行していく

■ 最後に──次の実践者へ

私たちは、ひとつの小さな組織でしかない。だが、その組織にしかできないことがあると、私は信じている。本という形でしか結べない人と人がいる。本という形でしか渡せない問いがある。本という形でしか残せない思想がある。

第1弾の本書を手に取ってくださったあなたが、明日の現場で、支配ではなく接続を、独占ではなく循環を、管理ではなく意味を、ほんの少しでも選び直してくださったなら──その瞬間に、ドラゴン出版の小さな志は、確かに前へと進む。

世界を変えたい。だがその世界は、遠いどこかにある抽象ではない。会社の会議の中にある。評価面談の中にある。現場の疲れの中にある。地域の停滞の中にある。制度の届かなさの中にある。本書、そしてドラゴン出版は、その一歩の伴走者でありたい。



ドラゴン出版 発行人

 結城天志(TAKASHI YUKI)

編集部おすすめ