「ノンキャラ良品」「指先の知育」「うちの赤ちゃん世界一」……これまでバラバラのシリーズとして店頭に並んできたおもちゃたちが、「Baby curiosity®(ベビーキュリオシティ)」というひとつのブランドにまとまりました。
38年のロングセラー「なめられ太郎」も六代目に。パッケージも色も変わりました。
でも、本当に変わったのは見た目だけではありません。
このリニューアルのきっかけは、私たちが自分自身に問いかけたことでした。
「私たちのおもちゃは、本当に赤ちゃんの好奇心をはじけさせるものになっているのかな?」
今回は、Baby curiosityプロジェクトのリーダー・花牟禮 瑠実子(はなむれ るみこ)に、このブランドが生まれるまでの話を聞きました。
子どものための会社なのに、大人のことを考える時間が案外多かった
花牟禮は、ピープルに入社したときのことをこんなふうに振り返ります。
「子どものためのものを作るメーカーに入ったつもりだったんですが、案外大人のことを考える時間が多いんだな、と思ったのを覚えています」
おもちゃ屋さんの棚の事情、価格帯の要請、育児中の親御さんの困りごと解消…。
赤ちゃんのことは「もちろんしっかりと考えている」。
でも、日々の仕事で頭を占めるのは、どうしても大人側の事情だったそう。
それがだんだん当たり前になって、気にもとめなくなっていた頃。
2022年にピープルが策定した全社パーパスは以下のようなものでした。
「子どもの好奇心がはじける瞬間をつくりたい!」
「しっくりきたんですよね」と、花牟禮は言います。
「大事にすべきものが、中心に据えるものがわかった、という感覚でした」
おもちゃを全部並べて、ひとつずつ見直してみた
パーパスが決まったことで、ピープルが取り扱うベビートイの全ラインナップを見直すプロジェクトが動き出しました。赤ちゃん研究所のメンバーが中心になって、改めてモニターテストを実施。
判断の軸はとってもシンプルです。
大人の期待だけが先行していないか。赤ちゃん自身が、そのおもちゃで好奇心を発揮しているか。
赤ちゃんに遊んでもらった結果、大人が「こう遊ぶだろう」と思った通りにしか遊ばないもの。
逆に、予想もしなかった遊び方で食いついて、思いがけない表情を見せてくれるもの。
その差は、かなりはっきり分かれたそうです。
そして、後者を残すことにしました。
「大人の期待はある程度あるけれど、それ以上に豊かな姿を赤ちゃんが見せてくれるもの。そういうおもちゃの方が、残す価値があるよね、という話になりました」(花牟禮)
私たちが大切にしている「赤ちゃん観察」がどのように行われているのか。赤ちゃんの好奇心を「見る」とはどういうことか、については、また次回以降で詳しくお伝えしたいと思います。
売れている商品を、あえて「お休み」にした
見直しの結果、あえてラインナップから外したアイテムもあります。たとえば「指先の知育」シリーズの複合品です。
あらゆる遊びの要素を詰め込んだ商品で、「長く使える」「どんな赤ちゃんでも何かひとつは遊べるだろう」という安心感がありました。売上にも貢献してくれていた商品です。
「いろんな要素が詰まっている方が値段も高くできるし、売上も積み上がります。小売業の方からも、売れている価格帯のものが減ると困ると言われました」(花牟禮)
でも、「何種類のおもちゃで遊べます」「何面使えます」という訴求は、よく考えてみると大人の基準です。花牟禮たちBaby curiosityチームのメンバーは、「一度お休みしよう」と決めました。
キャッチコピーも変えました。たとえば「魔法のラトル」には「泣く子もケロリ!」というコピーがついていた。他にも「ごはんまで5分もちます」と謳っていた商品もあります。
どちらも、親の困りごと解決をフックにした言葉です。実際に役に立っていたし、嘘ではありません。
でも、赤ちゃんの好奇心を真ん中に置くなら、伝え方もまた変わらなければいけませんでした。
「赤ちゃんにとってこのおもちゃの一番の魅力って何だろう?」
そう考え直したとき、「魔法のラトル」の本当の強みはシャカシャカという音と振り心地にあったし、どのアイテムにも、大人目線の訴求とは別の、赤ちゃんにとっての核がありました。
バラバラだったものが、案外ひとつになれた
各シリーズを横断して並べてみたとき、花牟禮には意外な発見があったと言います。「別々のシリーズ、別々の単品として作ってきたものたちだけど、同じように赤ちゃんを観察して作ってきたものだから、共通する部分は意外とあるということに気づきました」
一度これまでのパッケージから取り出して、すべてのおもちゃを並べてみたら、まとまりそうだという感覚が生まれました。
バラバラに見えていたおもちゃたちの間に、「好奇心」という共通の糸が見えてきたのです。
さらに、開発体制も変更を試みています。かつてのピープルでは、商品開発は1つのプロジェクトに対して企画と開発の3人程度で回すのが一般的でした。今回、Baby curiosityでは、赤ちゃん研究所の観察チーム、コミュニケーションチーム、開発担当を含む8人体制でスタートしました。
「赤ちゃんの観察が起点になるように、みんなが同じものを見ている、という共通認識を持とうね、というところから始めました」
パーパスという方針があったからこそ、「やろう」と決めてから約1年という短期間でローンチにこぎつけることができました。もしパーパスが決まっていなかったら、バラバラのシリーズをひとつにまとめるという決断を、ここまでのスピードでは下せなかったかもしれません。
「赤ちゃんの好奇心の世界を楽しもう」
22アイテムが店頭に並び始めた今、花牟禮に「いちばん伝えたいことは?」と聞いてみました。返ってきたのは、シンプルな言葉。
「一緒に赤ちゃんの好奇心の世界を楽しもう!!、という気持ちでしょうか。
私も、”見せてほしい!!”、みたいな気持ちなんですよね。赤ちゃんの好奇心がはじける姿を、一緒に発見していけたらいいなって」
たくさんの赤ちゃんと接することで、改めて実感した赤ちゃんの好奇心の世界のすばらしさ。
それをピープルのおもちゃを通じてより多くの人に楽しんでもらいたい。
自信を持って送り出します、というよりも、「こっちにおいで」に近い感じ。
肩に力が入っていないのが、なんだかピープルらしいし、Baby curiosityらしい。
Baby curiosityの物語は、始まったばかり。
すでに来年以降のラインナップも動き始めていて、花牟禮によれば「世界展開」という野望もあるのだとか。
これから何回かに分けて、このブランドの裏側をお伝えしていきます。
次回は、パッケージや商品名に込められた思いについてのお話。
赤ちゃんの好奇心を「観察」して、たどりついたパッケージって、具体的にどういうものなんでしょう?開発の裏側を覗いてみたいと思います!