パール・ジャムのフロントマン、エディ・ヴェダー(Eddie Vedder)によるソロ初のジャパン・ツアー「AN EVENING WITH EDDIE VEDDER」が遂に開幕。バンドとして訪れた2003年3月6日の名古屋市公会堂から、実に23年ぶりのカムバックとなった初日、4月14日に行われた名古屋・Niterra日本特殊陶業市民会館の模様を速報レポートとしてお届けする。


会場に到着してまず驚いたのが、その外国人率の高さだった。物販や入場の列に並んでいても、誇張抜きに英語やスペイン語しか聞こえてこない。1990年代から直近のツアーまで、思い思いのマーチをまとった彼らの嬉々とした表情、屈強なフィジカル(まず面構えが違う)、おびただしいほど腕に刻まれたタトゥーは、パール・ジャムとファンが培ってきた35年史を雄弁に物語っている。あまりの日本スルーぶりに痺れを切らし、欧米まで飛んでパール・ジャムのライブを見た自分にとっては、ここが名古屋の金山だということを忘れてしまうくらい異様な光景だ。

日を追うごとに詳細が明らかになってきたマーチャンダイズは、Tシャツやスカジャンなどのアパレルを筆頭に手ぬぐい、箸、お守り(ギターピックが内包)のほか、ご当地限定のピンバッジ、掛け軸、ハンコなどもラインナップ。否が応でもツアー開幕のお祭りムードを高めてくれる。パール・ジャム関連の公演ではお馴染みの公演日限定ポスターは、A24やマーベルなどをクライアントに持つ米オースティン在住のイラストレーター、オリヴァー・バレットが担当。巨大なメカに見立てた金のシャチホコがいい塩梅だ。エディ直筆のサインが入ったバージョンは8万円という高額にも拘らず即完で、その売上はエディ&ジル夫婦が長年サポートを続けている難病「表皮水疱症(EB)」の支援団体に全額寄付。やはりエディのやることは筋が通っている。

場内BGMはエディ本人の選曲だろうか、盟友キャット・パワーの『The Greatest』(2006年作、今年リリース20周年ツアーも予定している)からの楽曲や、トム・ウェイツなどがホールに優しく響き渡っていた。会場のNiterra日本特殊陶業市民会館は、1972年10月に名古屋市民会館として開館。
特にエディが立ったフォレストホール(2291席)は、かつて「優良ホール100選」にも選出された由緒あるステージなのだが、施設の老朽化および再開発のため2027年度末で取り壊しが決定している。そういう意味でも一期一会のメモリアルな夜だったわけで、結論から言えば、個人的にも2026年の暫定ナンバー・ワンに躍り出るほどの素晴らしいパフォーマンスだった。

パール・ジャムのエディ・ヴェダー来日公演が開幕 初日・名古屋のハイエナジーで奇跡的な熱演


パール・ジャムのエディ・ヴェダー来日公演が開幕 初日・名古屋のハイエナジーで奇跡的な熱演


バスキングをヒントに生まれた、ハイエナジーすぎる独演

開演予定時刻を10分ほど過ぎたころ、スタッフがまさに先ほど完成したばかりのセットリストをステージに持ってくると、オーディエンスは「待ってました!」の大歓声。しかも総立ち。暗転からほどなくして現れたエディは、近年のトレードマークであるフェルトハットを被って笑顔を浮かべている。1曲目はピンク・フロイドの「狂人は心に」(Brain Damage)。まず場内を満たしたのは、エレキギターの美しいアルペジオだ。フル・セットは昨年のオハナ・フェスティバル以来だというのに、喉の調子もすこぶる仕上がっている。流れるように披露されたパール・ジャムの「Sometimes」(1996年の『ノー・コード』収録)には心地いい緊張感があり、終盤に向かって歌声もぐんぐんと熱を帯びていく。早くも上着を脱ぎ捨てて半袖シャツ姿になるエディ。というか、バンドとして数万人規模のスタジアムやフェスを30年以上も掌握してきたボーカリストである。そのエナジーが2000人キャパの会場で収まるわけがないんだって。


予想通り、舞台デザインはNetflixドキュメンタリー『マター・オブ・タイム:希望を歌にのせて』でフィーチャーされたライブ・シーンとほぼ同様。円形のペルシャ絨毯を敷いたステージには、アンプやエフェクター、オープンリールなどの機材のほか、頭にボウリングのピンをぶっ刺した2体の奇妙なマネキンや、ヴィンテージのトランクケース(『パール・ジャム 20』のボーナス映像を見るとわかるが、エディの自宅には各ツアーごとのノートなどを格納したトランクが山積みだ)が並べられている。とりわけ足元に置かれたストンプボックスとカホンペダル(ザ・フーなどのステッカーが確認できた)がこのライブのキモで、大地を踏み鳴らすようなエディのキック音は、地球を伝ってブラジルまで届きそうなほどデカい。いわばコンサートというより路上演奏⋯⋯バスキングに近い構成で、公私にわたって親交が深いグレン・ハンサードをはじめとする、バスカーたちに対するエディなりのリスペクトなのかもしれない。

パール・ジャムのエディ・ヴェダー来日公演が開幕 初日・名古屋のハイエナジーで奇跡的な熱演


パール・ジャムのエディ・ヴェダー来日公演が開幕 初日・名古屋のハイエナジーで奇跡的な熱演


セットリストはパール・ジャムの楽曲と、カバーが8割ほど。ファンからの人気が根強い「Just Breathe」(2009年の『バックスペイサー』収録)や、「Wishlist」(1998年の『イールド』収録)といったナンバーでは、アコースティックギターの調べと包容力たっぷりなエディのビブラートが堪能できる。オーディエンスからの熱烈歓迎ぶりに「もっと大人しい空間になると思ってたよ(笑)」と目を丸くして驚いていたエディは、MCで23年前の日本ツアーを回想しつつ、「楽しんでくれて⋯⋯ますか?」と日本語で感謝を述べる一幕も。中盤では2002年の映画『アイ・アム・サム』のサントラに提供したザ・ビートルズのカバー「悲しみはぶっとばせ」(You've Got to Hide Your Love Away)で「Hey!」のシンガロングを巻き起こすと、「映画『イントゥ・ザ・ワイルド』のためにつくったアルバムから⋯⋯何曲かやります」とこれまた日本語で一言(ショーン・ペンつながり?)。「No Ceiling」「Far Behind」、ウクレレに持ち替えての「Rise」、そしてジェリー・ハンナンのカバーでもある「Society」を立て続けに披露した。先に書いてしまうとアンコールでは「Hard Sun」(インディオのカバー)も歌っていたわけで、ソロ1作目『Into the Wild』(2007年)からは5曲も選ばれたことになる。そのままパール・ジャムのセルフカバーにして、ソロ2作目『Ukulele Songs』(2011年)に収録された「Can't Keep」に流れる構成は見事だった。

パール・ジャムのライブでも定番の「Elderly Woman Behind the Counter in a Small Town」(1993年の『Vs.』収録)や、バンド本体を含めても2018年ぶりにセトリに戻ってきた「Parting Ways」(2000年の『バイノーラル』収録)の弦が引きちぎれそうな熱演も筆舌に尽くしがたいが、「Immortality」から火蓋を切ったパール・ジャムの3rd『バイタロジー(生命学)』(1994年)の3連発には燃えた。
前2作の商業的な成功からジェネレーションXの救世主として祭り上げられ、エディのメディア嫌いが加速。当時のライバルでもあったカート・コバーンの死も大きな影を落としたアルバムとして有名だが、〈オマエらがくれるものなんて何も欲しくない〉──と叫ぶ「Corduroy」の攻撃的で混沌とした歌詞を、61歳のエディが歌うことの説得力とリアリティには胸を抉られるものがある。が、場内の雰囲気は至ってチアフルで、お手製のバナーを掲げて熱烈アピールをしていた親子をステージ前まで呼び寄せ、近くのファンも巻き込んでの記念撮影。「Better Man」の歌詞になぞらえ、「次の曲は”Can't find a better kid”だよ」とジョークを飛ばす1コマも。そんな「Better Man」はもう大合唱に次ぐ大合唱で、演奏中に感極まったエディはしきりに「ナゴヤ!」を連発し、「誰かが東京・大阪・京都だけツアーして、名古屋はスキップしなよって言ってたんだ。でも、それは大きな間違いだった!(意訳)」と宣言。23年の空白がウソみたいに埋まった瞬間である。

名古屋が引き寄せた奇跡と、ギタリスト=エディ・ヴェダーの”覚醒”

本編後半では、エルトン・ジョンやスティーヴィー・ワンダー、リンゴ・スターらも客演したソロ3作目『Earthling』(2022年)のレコーディング時の風景を述懐するエディ。この作品はレッド・ホット・チリ・ペッパーズのチャド・スミスがドラムを叩いているのだが、彼の友人が「Try」で「レッツ・ゴー・チャド!」と叫ぶ声が収録(原曲の2分29秒あたり)されていることを語ると、どこからともなく「レッツ・ゴー・チャド!」のシャウトが。さすがのエディも驚いたようで、「ケンジ、君かい?」と客席に語りかけると、2階席にその声の主ことケンジさんが手を振っているのを発見。「久しぶりだね、来ているなんて知らなかったよ(笑)。レコーディングにも参加してくれてありがとう。
あれは俺も大好きなパートでさ。みなさん、ケンジ・フジタです!」とオーディエンスに紹介したシーンは、間違いなくこの夜のハイライトだろう。補足すると、ケンジさんはレッチリの『母乳 - Mother's Milk』(1989年)時代の来日公演でアンソニー・キーディスに故ヒレル・スロヴァクの絵を渡してメンバーに気に入られ、レッチリが2006年に『ミュージックステーション』に出演した際も「名古屋の友人」としてフリーが名前を挙げるなど、レッチリ界隈では名の知れた人物。パール・ジャムとレッチリの絆を感じられて、個人的にも胸熱な光景だった。

「今日はバンドがいないんだけど、コイツが代わりに演奏するよ」と言ってオープンリールを再生すると、爆音で「Long Way」のイントロが流れ出す。まさかのカラオケ仕様に思わず笑ってしまったが、ハンドマイクになったエディがディナーショーよろしく客席を(前列のみだが)練り歩いたのにはビビった。とにかくオーディエンスとの距離感が近いのが「AN EVENING WITH EDDIE VEDDER」の特徴で、曲間でたびたび最前列のファンにピックを手渡しでプレゼントしていたため、この後のツアーに行く予定の読者は必死でアピールしてみよう。祝祭感に満ちた空気のまま、再びアコギを手にしたエディはパール・ジャムのデビュー・アルバム『Ten』(1991年)から「Porch」を披露。その爆発的な疾走感と熱量たるや、バンド本体を凌駕する勢いだった。アンコールでは、昨年ジャック・ホワイトの来日公演にて飛び入り共演した以来となるニール・ヤングの「Rockin in the Free World」(もはやニール本人よりも累計演奏回数が多い)と、再び『Into the Wild』から「Hard Sun」の2曲をピックアップ。「Rockin in~」ではドナルド・トランプ政権への批判も滲ませながら、サビを《We gotta~》に変えて「この自由な世界を俺たちで守ろうぜ」と声高にぶちまける。クソみたいな日常を生き抜くには、エディのような歌声と反骨精神が不可欠なのだ。
近くにいた日本人男性のファンも思わず、「⋯⋯すごいわ」と声を漏らす。心の中でガッチリ握手した。

パール・ジャムのエディ・ヴェダー来日公演が開幕 初日・名古屋のハイエナジーで奇跡的な熱演


──それにしても、今回初めてソロのフル・セット公演を見て、「ギタリスト」としてのエディ・ヴェダーの表現力には度肝を抜かれた。パール・ジャム本体ではストーン・ゴッサード&マイク・マクレディという鉄壁のギタリストが脇を固めているし、ツアーにはさらに元レッチリのジョシュ・クリングホッファーも参加したりするので、エディのギター・プレイがフィーチャーされることは珍しい。しかし、名古屋で見せつけられた鬼気迫るほどの熱演は、文字通り身体とギターが一体化しているかのように美しく、獰猛で、涙が出るほど素晴らしかった。日本語も交えてファンやプロモーターらへの感謝を述べてからのフィナーレ「Hard Sun」では、ピート・タウンゼントよろしくウィンドミル(風車)奏法まで再現。永遠のギター少年たるエディの”覚醒”が間近で体験できることも、本ツアーの魅力のひとつなのかもしれない。

ちなみに、「AN EVENING WITH EDDIE VEDDER」は演奏中の写真撮影・録画・録音が一切禁止である。大阪・京都・東京に訪れる読者はぜひ、『イントゥ・ザ・ワイルド』と『マター・オブ・タイム』を見て、先行物販には早めに並び(残りの公演では日本人アーティストのヨシダ・ケンタロウやKOJIMANらがポスターを手がけるとか)、2時間だけスマートフォンをしまって、全身全霊でエディの歌と演奏に酔いしれてほしい。

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パール・ジャムのエディ・ヴェダー来日公演が開幕 初日・名古屋のハイエナジーで奇跡的な熱演


Photo by Kazuhisa Niizawa

パール・ジャムのエディ・ヴェダー来日公演が開幕 初日・名古屋のハイエナジーで奇跡的な熱演

エディ・ヴェダー来日公演
AN EVENING WITH EDDIE VEDDER JAPAN TWENTY-TWENTY SIX
2026年4月16日(木)大阪・フェスティバルホール
2026年4月17日(金)京都・ロームシアター京都 メインホール
2026年4月20日(月)東京・東京ガーデンシアター
公演HP:https://www.creativeman.co.jp/artist/2026/04eddievedder/

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エディ・ヴェダー来日記念盤
『アースリング(ジャパン・ツアー・エディション)』
日本独自企画2CD/SHM-CD仕様/ポスター封入
発売中
再生・予約:https://umj.lnk.to/EddieVedder_Earthling

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パール・ジャム
『武道館ライヴ!』
発売中
2CD/4,400円(税込)/SHM-CD仕様
再生・予約:https://umj.lnk.to/PearlJam_bl
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