MoritaSaki=人間の真ん中
ーMoritaSaki in the poolは当初、Rikuさんがソロで楽曲制作をするところから始まったプロジェクトだそうですね。
Riku:当時はコロナ禍で、仕事をするでもなくフラフラするだけの生活をしてたんですけど、正直それがめちゃくちゃ最高だなと思ってて。もちろん大変な思いをした人もいましたけれど、俺にとってはすごくナチュラルな日々だった。で、すごく暇だったから、この毎日の素晴らしさを何かの形にして残さなきゃいけないと思って始めたのがMoritaSaki in the poolです。
その時に感じてたのが、「人間を作りたい」っていうこと。そもそも「法人」っていう概念がすごい面白いと思ってて。一人一人の人間を細胞に見立てた一つの有機体を作って、それを法「人」って呼ぶ感覚に惹かれるんですよ。で、同じことを最小単位で純粋に行えるものがバンドだなって考えて。
ーバンドのプロフィールなどにも記載されている、5箇条のインストラクションですね。
Riku:そうです。バンドにはルールがなさすぎる。自分はあんまりルールがない遊びをするのが得意じゃないというか、ルールを破ることが得意なので。やっぱり先に枠組みがあった方が、そこからどう遊ぶかを考えられるなと。
左からTaiga Ninomiya (Gt), Natsumi Heike (Vo, Ba), Riku Ishihara (Vo, Gt), Maki Shibata (Dr)
ーシューゲイズ的なサウンドを選択したのはどういう理由からなんですか?
Riku:煮込み料理みたいに、何を入れても新しい現在の状態が発生するからですかね。汁気のない料理だと、やったことがやったままに見えすぎてしまうし、混ざらないこともある。でも煮込み料理はごちゃっと混ざったマーブル色で完成形になる。
シューゲイザーのマキシマムな音像は、何を混ぜても何を弾いてもそれぞれ違う音が出るし、聴く人によって何が耳に入ってくるかも違う。そういう幅が面白いなと思いますし、個人よりも集合のイメージが持てる音楽だと思いますね。
ーバンド名の「pool」にも、音像のイメージが託されているように感じます。
Riku:そうですね。コロナ禍は毎日プールに通ってたし、そうでない時も、環境音にリヴァーブをかけられるソフトを作ってスマホに入れて、イヤホンをしながら街を歩いて過ごしてました。プールって、めちゃくちゃ音が最高なんですよ。リヴァーブがすごく気持ち良くて、水をバシャバシャする音やちょっとした喋り声が反響して、意味わかんない音になる。レコーディングの時にも、エンジニアの方に「天井が高い屋内っぽい音でお願いします」って頼んだりしますね。
ーで、そんな「pool」にいるのが「MoritaSaki」なわけです。散々尋ねられた話題だとは思いますが、MoritaSakiというメンバーはバンドにはいませんよね。
Riku:すごく普通の友達なんですよ。俺は県を跨いだ遠い高校に通ってたんですけど、隣の駅で乗ってくる珍しいヤツがいて、それがMoritaSakiだったんです。
ー活動を続けていく中で、当初思い描いたイメージと実際のバンドの形は離れていきましたか?
Riku:前作の1stアルバム『Love is Over!』(2024年)が最初のイメージを強く描き出したもので、そこから先で何をしていくか、というのが今回の2ndアルバムかなという気がします。一言で言うなら、「得意なことをやらなきゃいけない」。最近は、あえて縛って遊ぶんじゃなくて、子どもの頃からやり続けてきた得意技を使っていくべきなのかなと思うようになりました。
『Love is Over!』収録「MIRRORS EDGE」
ーこれまであったある種の天邪鬼を手放していくフェーズだと。その変化はどのようなきっかけで生まれたものなのでしょう?
Riku:リスナーとの関係において言えば、もっと色んなことを一緒に共有したいと思ったから。
ーなるほど。リスナーとの共有という話もありましたが、音楽をインタラクティブなものとして捉えているのもMoritaSaki in the poolの大きな個性だと思います。たとえば曲名でトラックを削除するように要求したりだとか(『Love is Over!』収録曲「Portraits (Delete this from your device once youve listened.)」)。表現がバンド内で閉じていないことはRikuさんにとって大事なことですか?
Riku:すごく大事です。自分が一番盛り上がるのって、仲間が増える時なんですよ。作品が完成した時よりも、道中でプロジェクトチームが大きくなる時の方がアツい。
ーそうして人の手でこねくり回されてこそ作品が完成するというか。
Riku:そうですね。完成してから色んな歴史が乗っかっていくことこそ音楽の良さだと思うので。音楽に限らず、あらゆる物の良さは人にどう接したかの中で培われていくものなんだけど、今の時代ってそれが無さすぎるんですよね。サブスクで出会った音楽を、その時だけ気に入って聴くけど、すぐに忘れちゃったりとか。そういうのって残念だし、もっと楽しめる余地があるのにもったいない。やっぱり、拡張するのが面白いんですよ。だから現代アートが好きなんですけど。
ーええ、まさに現代アート的な手法を用いているバンドだと思います。
Riku:そもそもシューゲイザーが内省的な音楽だと思ってなかったです。過剰さの先にある外向きの音楽で、風や波のようなアウトドア性を感じてたんで。
自分で作ったルールを破るのが一番面白い
ーそれではニューアルバム『KIDCORE SCULPTURE』の話に移りましょう。制作はいつ頃始まったんですか?
Riku:1年間ぐらい、下手したらそれより前からずっと録ってて、完成したのが今年の1月とか2月なんですよ。今までの作品はもうちょっと短期のスパンで、かかったとしても4カ月くらいだったから、今回はもう大難航。ベースを一度入れたにも関わらず全部バラして録り直したり、ギターはそれを3回くらいやったり。俺がやりたいグルーヴがハッキリしてたから時間がかかりましたけど、最終的には良い感じの地点に辿り着きました。
ープロダクションはこれまでになくクリアで、平たく言うと聴きやすい音像に仕上がっています。それは最初から狙っていたこと?
Riku:そうですね。だからごまかしが利かなくて、神経質になる必要があったんだと思う。多少のズレが許容される音じゃなくなってしまった。それでもパワフルな作品にしたくて。優しくて温かい音楽だと思われたいわけじゃないし、自分にはそんな風に聴こえてないのに、そう言われてしまったらズレてるなと思ったんです。
ーRikuさんにとっての聴こえ方とバンドのパブリックイメージを擦り合わせるという狙いもあるわけですね。「幼さを『ノスタルジー』や『未熟』としてではなく、現在進行形の身体・感覚・表現として『彫刻』した作品」というコンセプトは、そういった音像の展望より後に生まれたものですか?
Riku:いや、これはずっと考えてたことですね。俺は、子どもを「未成熟な大人」とする考え方に猛反対してて。子どもと大人は違う存在だってジャン=ジャック・ルソーが言ってるんですけど、俺は自分をルソーの生まれ変わりだって語ってた時期があるくらい、彼のすべてに共感できるんです。
それで、バンドをやっていると「まだ子どもだね」みたいなことを言われることがちらほらあって。褒め言葉として言ってる人も、「まだまだだね」っていう意味で言ってる人もいると思うんですけど、「そうじゃないのにな」って思うんです。「『こうなるべき』があって、そこに向けての途中の状態である」は、違うじゃないですか。その時その時にしか切り取れないものがあるし、大人にも幼さというパーツがあるし。そういうことを考えながら曲を作ってました。
それと、さっきも話したように子どもの頃から得意にしていたことを大事にしたいなって、1stアルバムのリリース以降から思うようになったんですよね。「俺って子どもの頃はこういうやつだったのにな」とか、失われてしまった姿を見つめて。
ーそれは噛み砕くと、音楽的なルーツをもっとダイレクトに楽曲に反映させようということ?
Riku:「どういう音楽を作ろう?」と考える時、その幅を広くするために、自分の過去の嗜好を参照することは確かに多くなったと思います。
ーあえてハッキリと言うならば、これまでも指摘されてきたであろうART-SCHOOLやSUPERCARからの影響が、今作はより鮮明に表れているような気がして。
Riku:ああ、そうなんですね。それは良いことかもしれない。「ART-SCHOOLっぽい」「SUPERCARみたい」っていうのは、それがわかりやすいし、それを求めている人がいるから言われるわけじゃないですか。だから色んなことを経由した結果としてその一面が強固になったのであれば、それは成功なんじゃないかなと、今思いました。
俺としてはどっちも特に意識してなくて、離れようとも強調しようともしなかったです。拾ってくるところを増やしたっていう意識だけがあって。「そうなんだ」って言われるだけだと思うんですけど、GReeeeNとかを参照してるんですよ。
ーわからなくはないですよ。時代の空気感とか、J-POPのテンション感とか。で、インプットの幅が広がったのはもちろん、それ以上にアウトプットの方法が大きく変わったように感じられます。だって、例の「指示書」を無視する場面もあるじゃないですか。
Riku:はい。ボーカルをユニゾンではなく分けたりとか。「怒られないルール違反」「面白がられるルール違反」の究極の形が、自分で作ったルールを自分で破ることだと思いました。
ーそれも子どもの遊びっぽい。小学生の時、自由帳をハサミで切って自作のカードゲームを作って、結局は自らゲームバランスを崩壊させるような強力なカードを考案したことを思い出しました。
Riku:そういうのが人間の営みとして一番面白いですよね。みんな大人になると、自分で作ったルールに絡め取られることがよくある。
ー僕は『KIDCORE』という言葉を「幼さを美学化させたもの」と解釈したんですけれど、これっていわゆるY2Kリバイバルみたいなものとは少し異なりますよね。
Riku:そこからさらにメタの視点というか、Y2Kリバイバルというレディメイドな概念を拾って、そこに別の意味を付けて再配置してる感覚に近いと思います。そうすれば、そこからさらに外側の拡張した世界を描けるよねっていう。
俺ら自身をストリーミングできるようにしたい
ー『KIDCORE』についてはよくわかりました。で、さらに『SCULPTURE』(彫刻)に繋がるのが面白いなと。浮かび上がったり滲み出たり包み込んだりするのではなく、削り出して完成したアルバムっていう感触が確かにある。
Riku:やたらとマキシマムだったもののどこを削って形にしていくかという制作だったので、このアルバムに対して彫刻という感覚を抱くのはそういうことだと思います。これからは、物を作る上で100から削り出すか、それとも0から積み上げるかというどちらの手法を使うかをみんなで考えていかないといけない時代に突入するっていう感触があって。
ーそれは、AI時代のクリエイターとしての感覚ですか?
Riku:そうですね。たとえばAIで動画を作る時、現状は2通りの方法があると思ってて。一つは普通にポン出し。「バスケットボールをする動画を作って」と指示して、そこに「もうちょっとこうしてください」って、言葉で壁を立てて完成形を縮めていくことで徐々にフォーカスを合わせていく方法。
で、俺が最近ずっと使ってるのがもう一つの別の手法。まずは動画じゃなくてコードを書かせるんですよ。そうすると、無限のリソースの中からバスケットボール風の概念を削り出していくんじゃなくて、0から数値で積み上げ始めるんです。そうすると、こちらの指示もイメージの話じゃなく実際的に詰めていける、みたいな。ただAIに100から削り出させるだけじゃなくて、どっちのやり方がやりたいことに適しているかを考えるのが大事なんじゃないかっていうのが、俺の最近のトピックで。
そう考えると、彫刻って面白いなって。人間が営みの中でずっとやってきたことでもある。頭の中の膨大な情報量から、どう削り出して表現するか。で、だんだん全部のものが削り出されたもののようにも感じてきて。この世っていう全体から自分が削り出されてるような。最近、そういう心境の変化があって、初めて冷蔵庫を友達だと思えるようになりました。
ーそこに着地するんだ(笑)。AI生成と彫刻と料理……。
Riku:削り出すべきか、積み上げるべきか、全部のものに対して考える必要があるってことです。で、私は今回削り出しましたよっていう。
ーなるほどね。他にも色んな仕掛けがあるアルバムだから、訊きたいことがたくさんあるんですよ。たとえば、なんで「SUNDAY DIVER」のギターソロでBUMP OF CHICKEN「天体観測」のリフを引用してるんだろう、とか。
Riku:おっ、すごい。よくわかりましたね。ニノがBUMP大好きなので、「気付いてくれるかな?」と思いつつ取り入れて渡したっていう。リスナーに対してのギフトを考える前に、メンバーとのやりとりでもサプライズを用意して楽しくしたいじゃないですか。仕事のように曲を作るんじゃなくて、友達に対する贈り物のように制作したいので。気付いてくれて嬉しいです。
ーあと、クロージングトラックが「BANANA FISH」で、以前にも「Salingers Choice」という曲があったから、アメリカ現代文学からの影響は大きいのかな、とか。
Riku:サリンジャーはむしろ嫌いですね。嫉妬してます。作品どうこうじゃなくて、生き方が羨ましすぎるから(笑)。理想を言うなら俺だって、伝説の作品を数本残して隠遁生活を送りたいですからね。
ーそしてアルバムの初回盤にはオリジナルクエストゲームのアクセスカードが特典として付属するそうですが、これも『KIDCORE SCULPTURE』という作品の一部という認識ですか?
Riku:はい。素通りできない体験を確保したくて。動画とか音楽が勝手に流れていくのに対して、ゲームは触らないと進まないですからね。で、そこに自分たちのキャラクターを登場させて、同じ時間を共有しながら一緒に遊んでるような状況を作ったと。音楽を誰もが自由なタイミングでも聴けるように、俺ら自身をストリーミングできるようにしたいって感じですかね。
ーほう。
Riku:境界を曖昧にしたくて。操作してるのはリスナーで、動いているのは俺たち。つまりリスナー=俺たち、だけど俺たちは本物ではない、みたいな。
ーかつてSNSでサポートメンバーを募り13人体制でライブをしたことがあるそうですが、そういう内輪ノリの輪郭を破壊するような遊び方の一つってことですよね。
Riku:そうです。内輪をストリーミングに同期させる感じ。
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ーすごい発想だ。さて、6月には東阪でワンマンツアーがあります。どんなビジョンを持っていますか?
Riku:制作が長引いたのはライブでの演奏に対してずっと悩んでいたからというのもあるので、今までとはまったく違う演奏になるんじゃないかと思います。今作の制作を通して、各パートが曲の何を支えているのかという役割が大きく変わったんですよ。それがわかりやすく表れるツアーになるんじゃないかな。
ー最後に、今後企んでいることがあれば。
Riku:一つ考えてるのは、新しい作曲ツールを作ることですね。新しいDAWを作りたい。全然、やるかどうかはわかんないですけど。あと、楽曲に関しては当初からいつかシンセを入れるって言ってるんですよ。ただ、それまでの時期を可能な限り引き延ばしたいとずっと思ってて。最近はシンセに心を奪われすぎてるのでちょっと怪しくなってきたかな。逃げ切れないかもしれない(笑)。シンセが追いかけてくるから、頑張って逃げてる状況です。
Riku Ishihara
MoritaSaki in the pool
2ND FULL ALBUM『KIDCORE SCULPTURE』
発売中
価格:3,000円(税込)
再生・購入:https://ultravybe.lnk.to/KIDCORE_SCULPTURE
https://moritasaki.bandcamp.com/
■初回限定特典
BONUS GAME ACCESS CARD《FIND THE LOVER DUCKS》
メンバーを操作して遊ぶことができる、本作オリジナルのクエストゲームへのアクセスカードが付属
RELEASE ONE-MAN TOUR
2026年6月14日(日)大阪・LIVE SPACE CONPASS
2026年6月27日(土)東京・GARRET udagawa
時間: OPEN 17:30 / START 18:00
チケット(1D別)
一般:4,000円 U22:2,500円(※LivePocketのみの取り扱い)
■チケット購入
大阪:https://linktr.ee/KIDCORESCULPTURE__OSAKA
東京:https://linktr.ee/KIDCORESCULPTURE__TOKYO
■来場特典
EXCLUSIVE GAME ACCESS CARD 《MoritaSaki in the Fight》
バンドメンバー喧嘩シミュレーター(二人対戦型格闘ゲーム)
https://linktr.ee/moritasakiinthepool0916


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