中国新聞社電によると、台湾先住民のパイワン族の子3人が5日、福建省の福州市内で、伝統の「鼻笛」の響きを披露した。

 パイワン族は台湾南部に住むインドネシア系民族。
社会の変化とともに、伝統文化も失われつつあり、「鼻笛」の演奏者もほとんどいなくなった。現在は、老人が子どもに教えることで、保存に努めているという。

 台湾の先住民族は、戦前の日本が1935年に「高砂族」を公式名称とした。中国本土や台湾当局は「高山族」、「山地同胞」などと呼ぶ。実際には、十数の民族からなる。中国政府は台湾先住民族を「中国の55の少数民族のひとつ」と認定し、「高山族」を正式名称としている。中国新聞社は同記事でパイワン族を「台湾原住民」と紹介。「高山族」の名称を使わない報道は、中国大陸でやや珍しい。

**********

◆解説◆
 台湾先住民は、世界的にみても極めて貴重な伝統音楽を残していた。特に、ポリフォニック(多声部)な構成の合唱は、さまざまなパートの旋律を同時進行させる点で、「西洋音楽に匹敵する複雑さ」などと評価されている。他にも、口琴(ジューズ・ハープ)や管楽器の音楽も発達した。

 部族内での団結を高めるため、音楽が特異に発達したと考えられている。
譜面はなかったが、幼少時から音楽に慣れ親しんだことで、完璧な純正率による音感を身につけた人も多かった。しかし、部族社会が現代化したことで、伝統的な音楽は急速に失われつつある。

 世界的にみれば、鼻の息で演奏する管楽器を持つ民族は、それほど珍しくない。多くの場合、「霊」や「心」と強く結びつくとみなされる音楽の演奏で用いられている。(編集担当:如月隼人)

【関連記事・情報】
鼻で笛吹く芸人が、旧正月の祭りに花添える-河南・鄭州(2010/03/01)
中国対日観:驚き! 楽器にもキッチリ“礼”尽くす国(2009/02/24)
キン族の音楽家、伝統の「一弦琴」で妙なる音色を披露(2008/11/22)
湖北で世界民族楽器展、国際的視野で文化を考える試み(2008/11/17)
「美女の里」で8日から伝統楽器の芸術祭-広西・龍州(2008/05/01)
編集部おすすめ