8月20日(日)、日中の気温が37度にまで上がった岐阜市の岐阜メモリアルセンター長良川競技場で、「EXILE CUP2023」東海大会が行われた。EXILE CUPは小学4年生から6年生のフットサル大会で、新型コロナウイルス感染症の影響により今年が4年ぶりの開催。
東海大会は岐阜、愛知、三重、静岡の4県から48チームが集まり熱戦を繰り広げた。

 9時に始まった開会式では、元サッカー日本代表ラモス瑠偉さん、EXILE/FANTASTICSの世界さんと佐藤大樹さんが登場した。サッカー経験者の佐藤さんは、早朝から蒸し暑く快晴の天気を見て「水分補給をしっかりして、優勝を目指して頑張ろう!」とアドバイス。世界さんは「優勝を目指して頑張れますか?」と明るく子どもたちに問いかけ、全員が「はい!」と大きな声で返事をした。



 また、長良川競技場を本拠地とするFC岐阜で2年半監督を務めた経験があるラモスさんは「岐阜に入った昨日から、皆さんがどんなプレーをするのかワクワクしていました。日頃のトレーニングの成果を発揮して楽しくプレーしてほしい。
優勝を目指して一生懸命やることが一番大事」と、選手たちを激励した。

 その後、全員で行ったウォーミングアップでは、EXPG STUDIOに所属するEPIインストラクターのMoemiさんが見本を演じながら、EXILE TETSUYAさん監修のもと日本サッカー協会が開発した「クラッキ!ダンス」で体を動かした。この日初めて「クラッキ!ダンス」と触れる子どもたちも多かったが、子どもの成長に必要な動きを取り入れたダンスを楽しそうに踊っていた。



 そして、いよいよ予選リーグがスタート。4チーム12ブロックに分かれた予選リーグは、各ブロックの1位と、2位の成績上位4チームが決勝トーナメントに進出できる。暑さを考慮して連戦にならないように対戦カードが組まれたり、給水エリアが設けられたりと熱中症対策が施されるなか、renacer(愛知県)のように「この地方は特別に暑いから」という保護者のアイデアで、暑さ対策として園芸用の大きな霧吹きを用意するチームもあった。


 予選リーグで素晴らしい戦いを見せたのは、ラピド名張フットサルクラブ(三重県)とFCラセルバ(岐阜県)の一戦。前半にラピド名張フットサルクラブが先制すると、すぐにラセルバが取り返す白熱した展開になる。その後も一進一退の攻防が続き、ラピド名張フットサルクラブは背番号11、奥中篤人君が見事なマルセイユルーレットからラストパスをフリーの味方に出してゴールを演出。再びリードを奪うと、ラセルバもゴレイロからのパスを受けた大平琉夏君が、フェイントでDFをかわしてシュートを決める。両チームの選手は“止める・蹴る”の基本技術だけでなく、チームとしてゴールを挙げる方法の共通理解度も高かった。後半も両チームのゴレイロが好セーブを見せつつ、3度目のリードを奪ったラピド名張フットサルクラブに対し、ラセルバも執念で追いつき、前後半合わせて14分の激闘は3-3のドローで決着した。


 他のグループにも特徴的なチームが多く見られた。金山フットボールクラブ(岐阜県)は女子5人と男子1人の6人構成で参加。唯一の男子プレーヤーがゴレイロを務め、フィールドプレーヤーはすべて女子だった。大矢知サッカー少年団B(三重県)との対戦は、前半の2分間で2点を先行される苦しい展開。しかし、金山フットボールクラブは3分と4分に立て続けにゴールを決めて追いつく。その後、再びリードを許して2-4で敗れたが、フィジカル面でのハンデを乗り越えて同点に追いついた姿は印象的だった。
ゴレイロを務めた加藤真輝君は「暑くて疲れたけど、楽しくできました」と笑顔を輝かせた。

 子どもたちの笑顔は、試合以外のところでも見ることができた。ウォーミングアップゾーンではラモス瑠偉さんがチームのボール回しに混ざる姿があった。ラモスさんの足技は今も健在で、巧みなフェイントで子どもたちを驚かせ、「攻守の切り替え!」、「足下にパスを」などアドバイスを送っていた。子どもたちとの交流を終えたラモスさんに話を聞くと、ゆかりのある岐阜への思いを語ってくれた。「今の子どもたちは本当にうまくなっている。
こうした子どもたちが岐阜のサッカーのレベルを上げて、将来はFC岐阜で活躍してくれたら、岐阜がもっともっと盛り上がる」。

 午後になり、決勝トーナメントに進出する16チームが出揃うと、決勝トーナメントの対戦カードを決める抽選会が行われた。ラモスさん、世界さん、佐藤さんのサインが入ったボールを各チームが選択し、ボールの裏に貼ってある番号をキャプテンが読み上げて対戦相手が決まると、会場は大いに盛り上がった。

 白熱した決勝トーナメントを制して決勝に駒を進めたのは、MARIO FUTSAL SCHOOL(静岡県)とMFC.VOICE(愛知県)。MARIO FUTSAL SCHOOLは決勝トーナメントを3-0、1-0、1-0と粘り強い守備で勝ち上がり、MFC.VOICEは6-1、5-0、4-0と圧倒的な攻撃力で勝ち進んできた。



 決勝戦では、MFC.VOICEがトーナメントの勢いそのままに、序盤から猛攻を仕掛けた。
対するMARIO FUTSAL SCHOOLはゴレイロを中心にしのいでいたが、超攻撃的なMFC.VOICEが4分にセットプレーから直接ゴールを決めて先制。さらに2分後にもミドルシュートのこぼれ球を押し込んでリードを広げた。後半も攻撃の手を緩めず、10番の加藤丈貴君のハットトリックとなるゴールなどで3点を追加。予選からの7試合で51得点、3失点という圧倒的な攻撃力で優勝を決めた。

 試合後、MFC.VOICEのキャプテン・松下祥大君とハットトリックを達成した加藤君が大会を振り返り、決勝大会への意気込みを語ってくれた。「準決勝までたくさん点が決まっていたので、決勝もたくさん点を取るという気持ちで臨んだ。優勝できてうれしいし、全国大会も優勝できるように頑張りたい」(松下君)。「チーム一丸となって練習してきて、その成果が出たと思うのでめちゃくちゃうれしい。全国大会でもたくさん点を取って優勝したい」(加藤)。

 また、チームを率いた勝田直弘監督は主催者への感謝、全国大会に向けた選手への期待を話してくれた。「フットサルで全国につながる大会は少ないので、EXILE CUPが復活したのはとてもうれしい。サッカーでも全国大会に出ている選手なので、気負うことなくやってくれるはずです」。

 突き刺すような日差しのなか、最後まで奮闘する子どもたちの姿を見たEXILEの世界さんは「子どもたちがみんな一生懸命で、その姿を見ることができてすごく楽しかったし、キッズたちの熱量がすごかったですね」と興奮気味に話した。一方、積極的にボール拾いを手伝っていた佐藤さんは今後に向けた期待感を話してくれた。「僕らは『Dreams for Children・子どもたちに、夢を。』というテーマを掲げて、未来を担う子どもたちの夢を応援したいと思っています。この大会が10年20年と続いて、僕たちEXILEメンバーが毎年そこに関われるように一緒に盛り上げていきたいです」。

 EXILE CUP決勝大会は9月17日に愛媛県今治市で行われる。東海地区からは高い攻撃力を誇るMFC.VOICEが参戦する。

文=斎藤 孝一 写真=Kaz Photography