ギターの音が出ない――。だが、この日の安田章大は違った。
「アカペラでいくわ。これもフェスやから」。マイク一本で即興の歌を紡ぎ始めた瞬間、横浜アリーナは静寂に包まれた。そして曲が終わると満員の観客から湧き上がったのは、割れんばかりの拍手と歓声だった。
5月2日に横浜アリーナで開催された『The ONE~一音一生~』。SUPER EIGHT の安田章大が総合プロデュースを手がけたこの音楽イベントは、一つのグループではなく同じ事務所の後輩グループのWEST.、Travis Japan、B&ZAI が垣根を超えて集結。26曲、139分間にわたるステージで証明されたのは、「音楽でつながる」ことの本当の意味だった。
開演と同時に全出演者がステージに登場。オープニングで SUPER EIGHT の「ズッコケ男道」が炸裂すると、会場のテンションも急上昇。トップバッターとなった B&ZAI は、先輩グループの楽曲を生演奏でカバー。音大卒の矢花黎がベースを刻み、事務所で初めて博士号を取得した本高克樹がキレキレのダンスを見せる。バイオリン、ギターを手にした8人が奏でる「SHAKE」(SMAP)では、菅田琳寧のサックスソロが会場を震わせた。
B&ZAI
ボーカル橋本涼が「昨日、ある先輩に惚れ込んでしまって……」と切り出すと、「めちゃくちゃ出づらいわ!」とツッコミながら安田が登場。川﨑星輝から「安田さんのような大人を目指したい」と言われると、「いやいや、横山さんとか村上さんとか、もっとマシな人がいるやろ。丸山だけはやめとけ、メンタルが不安定やから」と話すと会場から笑いが起きた。9人編成に膨れ上がったバンドで演奏されたのは「象」。世代を超えて音を重ね合いながら演奏する姿にファンも熱狂した。
Travis Japanからは宮近海斗、松倉海斗、川島如恵留が参加。リーダー宮近が「俺たち、生バンドでやること滅多にないんですよ」と明かすと、会場からは意外そうなどよめきが。「似合ってるって思う人?」という問いかけに大歓声が返ると、宮近は天井に向かって「聞こえてますかー! 上の偉い人たち!」と叫び、笑いと拍手を誘った。同事務所のレジェンド・少年隊の楽曲を立て続けにカバーした3人は、事務所の歴史を体現するようなダンスを披露した。また、デビュー曲「JUST DANCE!」では、バンドサウンドに乗せて白スーツの3人のパフォーマンスも新鮮だった。
Travis Japan
そして圧巻だったのが、安田作詞作曲の「Dye D?」。3人の背後から安田、B&ZAI の菅田、川﨑、稲葉通陽が次々に現れ、7人編成に。
変拍子の複雑なリズムに乗せた息の合ったダンス、そして松倉が決めゼリフ「Dye D…」を放った瞬間、会場からは歓声が起こった。
後半戦を引き継いだのは、WEST. の重岡大毅、神山智洋、濵田崇裕。濵田がアコースティックギターを抱えて披露した「あじわい」では、「初めての人にもこういう曲があるって知ってほしくて」と丁寧に紹介。演奏後には神山が「酒飲めへんけど、今日は飲みたい気分になった(笑)」とリラックスした様子で、3人だけだからこそ生まれる親密な空気感があった。重岡のピアノ、神山のエレキギター、濵田のアコギという3人編成で奏でられた「間違っちゃいない」では、「ラララ~」とメンバーと観客の声が重なって会場が一体に。
WEST.
続いて登場したのは、“アイドル音楽フェス”発起人・安田。しかし、1曲目から冒頭で紹介したギターの音が出ないというトラブル。だが安田は一切慌てず、「アカペラでいくわ。これもフェスやから」と即座に切り替えた。この日の感謝を綴った即興の歌詞とメロディを歌い上げた。続けて、SUPER EIGHT の「喝采」をアカペラで熱唱すると、会場は静まり返り、安田の声だけが響いた。歌い終わると、割れんばかりの拍手に包まれた。
その後、自らを”eighter”(SUPER EIGHT ファン)と公言する神山が加わり、安田のソロ曲「わたし鏡」をデュエットで歌い上げる姿は、”音楽仲間”としての絆も感じさせた。
安田章大
「友達を呼ぶわ」という安田の一声で現れたのは、共同プロデューサーの大倉忠義。大倉は「アカペラほんまに良かった。ヤスやなかったらゾッとするけど」と感想を伝えたあとに自身のソロ曲「まもりたい」を安田のギター伴奏で披露。歌い終えると「『出てくれへん?』って言われて断ったんやけど、まあ1曲くらいならって……」とマシンガントークを繰り出し、安田が「歌い終わってから、めっちゃ喋るやん!」と笑いながらツッコんだ。大倉を送り出した安田が、「22年間、一緒に何かを作り続けられる幸せ」と語りながら歌った「友よ」。歌の終盤には、「袖にいるみんな、もう出てきていいよ」と呼び掛け、「Can do! Can go!」(V6)などを披露した。
The ONE
そしてラストに披露されたのが、このイベントのために書き下ろされた「The one day~また明日~」。安田の「焦らなくていい、飾らなくていい、何度でもやり直せる」というメッセージが込められた歌詞を、全員で合唱して幕を閉じた。最後の挨拶で安田は「推しが違っても、その愛を共有し合ってほしい。みんな仲良くしてな」と全ファンに呼びかけ、「絶対にまた『The ONE』やるから! また会いましょう!」と再会を誓った。
音楽が生んだ”つながり”は、確かに未来へと続いている。
取材・文/吉岡 俊 撮影/後藤 巧