今回は、過去に大きな反響を呼んだ実録エピソードから、マナー違反に対して勇気を出して注意したものの、予想外の事態に言葉を失った2人の事例をご紹介します。音漏れを指摘した女性を待ち受けていた「まさかの反応」や、座席を占領する女性が見せた「呆れた行動」。そこには、公共の場での「正義」の難しさが浮き彫りになっていました。
記事後半では、最新の「2025年度 迷惑行為ランキング」を紐解き、数字から見える現代特有のマナー違反の正体に迫ります。急浮上したスマートフォン等の使い方や、意外な順位を見せた「車内での化粧」「音漏れ」への世間の厳しい視線についても解説します。
【エピソード1】「音、漏れてますよ」丁寧に伝えたはずが…
佐野美咲さん(仮名・20代)は、いつものように朝の満員電車に乗り込んだ。
「吊り革につかまって、スマホでニュースを見ていました。とくに変わった様子もなくて、いつも通りの朝でした」
しかし、目の前に立っていた30代くらいの男性が、ヘッドホンをつけたままスマートフォンで動画を見始めたという。
「最初は気のせいかと思ったんです。でも、明らかに“音漏れ”してて、ヘッドホンのはずなのにセリフまで聞こえてきたんです」
その男性は、どこか清潔感のない服装で、アニメ系のキーホルダーがついたリュックを背負っていたそうだ。駅に着くたびに混雑が増し、音漏れはさらに目立つようになった。
「周りの人たちも、眉をひそめたり、目線をそらしたりしていましたね」
迷った末に、佐野さんは“なるべく柔らかめに”声をかけることにした。
「ちょっと音、漏れてますよ」
注意というより、本人が音漏れに気づいていないだけかもしれない……そんな思いでかけた一言だった。
「うるせぇな」返ってきたのは怒鳴り声
しかし、返ってきたのは“まさかの反応”だった。
「は? うるせぇな、お前に迷惑かけたか?」
男性は目を見開いてにらみつけてきたという。想像していなかった逆ギレに、佐野さんは言葉を失った。
「一瞬、頭が真っ白になって、なにも言えませんでした」
電車内は静まり返り、周囲の乗客も気まずそうに目を逸らしていたという。誰もフォローをしてくれることはなく、その沈黙が逆に佐野さんを苦しめた。
「“私が悪いの?”って気持ちになっちゃって……。なにも言わないほうがよかったのかなって思いましたね」
「最近、“ちょっとした注意”が逆にトラブルになることが多いって聞きますけど、本当にそうなんだなって。だからって何も言わないのも違うし、むずかしいですよね」
その日以来、佐野さんは今も心にわだかまりを抱えながら、毎日通勤している。
【エピソード2】「荷物邪魔ですよ」の注意で変わるかと思いきや…
そんななか、ふと目に入ったのは、座席にゆったりと座る女性だった。
「はじめは誰かが座ってくるのかと思ったんですけど、明らかに“誰も座らないで”という雰囲気で、荷物が置いてありました」
さらに驚いたのは、その女性が手鏡を取り出し、堂々とメイクを始めたことだった。
「マスカラ塗って、アイシャドウ塗って、パウダーもはたいて……。もう完全に“自分の部屋”って感じでしたね」
周囲の乗客は窮屈そうに立っていたが、ついに我慢できなくなった岡本さんは、声をかけることにした。
「すみません、荷物が邪魔ですよ」
女性は一瞬ギョッとした表情を見せたものの、すぐにバッグを膝の上に抱え直した。
「そのときは、“やっと少し空間ができた”って、正直ホッとしました」
再び広げられた“私物エリア”
しかし、次の駅に到着すると、女性は何事もなかったようにバッグを座席に置き、メイクを再開したのだ。
「もう呆れて、なにも言えませんでした。“注意しても無意味”なので、諦めました」
周囲の人々も同じように、女性を避けるように立っていたという。
「たった数分のことなんですけど、本当にストレスでした。公共の場で自分だけが快適に過ごせればいいっていう態度、信じられません」
電車を降りた岡本さんは、思わず深いため息をついた。
「電車内で “自分の部屋”みたいに振る舞う人が、最近増えた気がします。これが日常にならないでほしいですよね」
電車では個人のマナーが大いに問われる。だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。
■ 数字が語る「マナーの断絶」と、注意することの難しさ
今回のエピソードで共通しているのは、勇気を出して一歩踏み出した側が、結果として精神的なダメージを負ってしまうという不条理です。なぜ、これほどまでに「当たり前の注意」が通じないのでしょうか。最新の統計からその背景を探ります。【駅と電車内の迷惑行為ランキング(総合)】
(5,202名の方から回答、最大3つまで)
1位:周囲への咳やくしゃみ(34.7%)
2位:座席の座り方(31.9%)
3位:騒々しい会話・はしゃぎ(30.2%)
4位:扉付近での滞留(27.6%)
5位:スマートフォンの使い方(21.6%)
6位:強い香り(21.5%)
7位:荷物の持ち方・置き方(20.1%)
8位:乗降時のマナー(20.0%)
9位:ゴミ・ペットボトルの放置(12.9%)
10位:酔っ払った状態での乗車(12.5%)
11位:イヤホンからの音もれ(9.8%)
12位:優先席のマナー(8.9%)
13位:車内での化粧(7.9%)
14位:混雑した車内での飲食(7.5%)
15位:その他(6.3%)
16位:エスカレーターの利用法(6.2%)
17位:電子機器類の操作(3.4%)
18位:特になし(0.6%)
(出典:日本民営鉄道協会「2025年度 駅と電車内のマナーに関する調査」)
① 「座席の座り方」と「車内での化粧」の根深い相関
エコバッグで席を占領し、メイクに励んでいた女性のエピソード。ランキングを見ると「座席の座り方(詰めない・荷物を置く等)」は、2025年度も2位(31.9%)と高い数値を維持しています。さらに「車内での化粧」も前年の14位から13位へとじわり順位を上げました。今回のケースのように、「座席に荷物を置く」ことで自分のパーソナルスペースを確保し、そこを拠点にしてメイクを完結させる。そんな公共空間の私物化が、周囲の乗客にとってどれほどのストレスになっているか、数字が如実に物語っています。
② 逆ギレを招く?「音漏れ」と「スマホ操作」への厳しい視線
音漏れを注意されて逆ギレされたエピソードも、決して他人事ではありません。2025年度の調査で注目すべきは、5位の「スマートフォン等の使い方(21.6%)」の急浮上です。前年の9位から一気に順位を上げました。スマホでの動画視聴が一般化した今、本人は「小さな音漏れ」のつもりでも、周囲にとっては「静寂を切り裂くノイズ」として、前年以上に敏感に捉えられています。「ヘッドホン・イヤホンからの音もれ」自体も11位にランクインしており、デジタルマナーへの不満は確実に高まっています。しかし、勇気ある指摘に対して「うるせぇな」と逆ギレされてしまえば、注意した側が「言わなければよかった」と後悔する負の連鎖が生まれてしまいます。
③ 「強い香り」という目に見えない侵食
また、至近距離で漂う「ニオイ」にストレスを感じる人も少なくありません。ランキング6位には「強い香り(21.5%)」が入っており、香水だけでなく化粧品や柔軟剤の香りなど「空間の侵食」として忌避される時代になっています。殺伐とした空間を乗り切るために必要なのは、お互いを監視し合うことではありません。しかし、注意が逆効果になるリスクがある現代において、私たちはどう振る舞うべきなのでしょうか。
エピソードに登場した岡本さんが漏らした「これが日常にならないでほしい」という切実な願い。その答えは、一人ひとりが「自分の快適さ」の裏側に、誰かの「我慢」が隠れていないか、ほんの少しだけ想像力を働かせることにしかないのかもしれません。
<取材・文/chimi86 再構成/日刊SPA!編集部>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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