―[その判決に異議あり!]―

弁護士が刑務所に服役中の被告と接見した際、会話を録音した音声記録を事後チェックされるのは違法だとして訴えた裁判で、岡山地裁は4月15日、刑事訴訟法39条違反だと認定した。だが、法務省通達に従った職員に違法の認識はなかったとして、国賠請求は棄却した。

“白ブリーフ判事”こと元裁判官の岡口基一氏は、「岡山刑務所 接見記録“検閲“黙認判決」について独自の見解を述べる(以下、岡口氏の寄稿)。

法務省のお達しだからお咎めなし!? 接見会話の“事後検閲”を許すな

「刑務所による接見録音のチェック」は違法か適法か。元裁判官が...の画像はこちら >>
 またも“裁判官ガチャ”の悲劇が起きた。今回、紹介するのは、国による明らかな「違法」行為を、「適法」としてしまった岡山地裁判決である。

 被告人が刑務所で勾留されている場合、弁護人は刑務所内で被告人と面会する必要がある。そして当然のことながら、そういった面会の様子は秘密とされなければならない。そうでなければ、被告人は弁護人と自由に会話できず、防御権が侵害されるからだ。刑事訴訟法39条がこれを定めているが、同条は憲法34条(抑留および拘禁の制約)に基づくものであり、被告人にとっては憲法に保障された正当な権利と言ってよい。

 弁護人は面会中に被告人との会話を録音することがある。そして、録音内容について刑務所職員が事後的にチェックすることは許されない。そのような検閲行為が認められれば、面会の秘密が守られないどころか、その様子が捜査機関側に筒抜けになるからだ。

 ところが、法務省は全国の刑務所に対し、この事後的チェックを行うよう通達を出している。つまり日本では、憲法違反の疑いすらある重大な違法行為が、長年にわたって黙認されてきたということだ。岡山刑務所の職員も、この通達に従って、接見時の録音について事後的チェックをしたが、これを当該弁護人が、行為は「違法」だとして国家賠償請求訴訟を提起した。
これが今回取り上げる事件だ。

 驚くべきことに岡山地裁は、この録音内容の事後的チェックを「適法」とする判決をした。その理由が、また呆れたものだった。

重大な違法行為を適法とする“裁判官ガチャ”

 岡山地裁は、刑務所職員による録音内容の事後的チェックが、刑事訴訟法39条に違反すること自体は認めている。つまり、法令違反ではある。だが、職員らは法務省の通達に従っただけであり、この通達が違法であるとの認識を持つまでには至らなかった。だから、職員の行為は違法ではない──そう結論づけたのだ。

 これは、憲法違反の疑いすらある重大な違法通達であっても、それが法務省の出したもので、現場で定着してしまえば、権利が侵害された国民が救済されなくても構わない。そう言っているに等しい。

 他方、国民は日々の生活の中で、少しの認識不足であっても、違法行為をしてしまったら、「知らなかった」という言い訳は一切通用しない。

 本欄では繰り返し“裁判官ガチャ”の問題を取り上げてきたが、こうした独自のトンデモ見解で、公権力による重大な違法行為を適法とし、国を勝たせてしまう裁判官まで現れた、ということだ。

 我々が、(知らず知らずのうちに)違法な行為をして逮捕起訴されても、この裁判官に当たれば、無罪放免で許してもらえるかもしれない。


 幸い、この判決は地裁のもので、まだ広島高裁で是正できる。その広島高裁には、過去に同様の事件が係属した。法務省の通知自体が刑事訴訟法39条に違反するものであったのに、拘置所職員がその通知に従ったことで、被告人と弁護人の面会の秘密が侵害されたとして、当該弁護人が国家賠償請求訴訟を提起した事件である。広島高裁の裁判官は、この通知に従った拘置所職員の行為を「違法」と判断した。今回の事件も、広島高裁で是正されることが望まれる。

<文/岡口基一>

―[その判決に異議あり!]―

【岡口基一】
おかぐち・きいち◎元裁判官 1966年生まれ、東大法学部卒。1991年に司法試験合格。大阪・東京・仙台高裁などで判事を務める。旧Twitterを通じて実名で情報発信を続けていたが、「これからも、エ ロ エ ロ ツイートがんばるね」といった発言や上半身裸に白ブリーフ一丁の自身の画像を投稿し物議を醸す。その後、あるツイートを巡って弾劾裁判にかけられ、制度開始以来8人目の罷免となった。著書『要件事実マニュアル』は法曹界のロングセラー
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