大谷翔平は投手として開幕から無双状態を続けているが、打者としては明らかに精彩を欠く期間もあった。それでも先週あたりからようやく調子を取り戻し、得意の暑い時期に向けて本塁打も量産態勢に入ってくるだろう。
ここ数試合は一発を食らうシーンが多かった山本由伸も、日本時間25日(以下同)のブリュワーズ戦で7回1失点と好投。92球、3奪三振の省エネ投球を見せ、約3週間ぶりとなる今季4勝目を飾った。
佐々木朗希が復調。防御率が大幅良化
そして、3人の中で最も上積みを期待されている佐々木朗希も、徐々にメジャーの水に慣れつつある。24日のブリュワーズ戦で今季9度目のマウンドに上がった佐々木は、初回にいきなり3失点の乱調。自身の失策も絡む最悪の立ち上がりとなったが、相手の走塁ミスに助けられる幸運がリズムを変えた。
2回も走者を背負ったが、ピンチを断ち切ると、それ以降は高い修正能力を見せた。2回途中から5回まで10人の打者を完璧に抑えると、その間にドジャース打線が逆転。佐々木に今季3勝目が転がり込んだ。
佐々木の復調はシーズンにおいても言えること。
ところが5月に入ってからは一転、ここまで4試合に登板し、防御率3.52と大幅良化。与四球率も4月までの5.16から、5月は1.96まで改善し、課題だった被本塁打の数も7本から2本へ大きく減らしている。
今春に新球種“スライダー”を習得
ロッテ時代から160キロを超えるフォーシームを最大の武器としていた佐々木。日本では、フォーシームに加えて、鋭く落ちるフォークだけでも十分抑えることができていたが、メジャーではそうはいかなかった。どれだけ速いフォーシームを投げても、甘いコースに入れば、いとも簡単に柵越えを許してしまう。特に1年目の昨季はメジャーリーガーのパワーをまざまざと見せつけられた。メジャーの公式球にまだ慣れていない部分もあったとはいえ、メジャーで生き残るためには第3の球種を習得する必要があるのは火を見るよりも明らかだった。
そして昨季オフから今春にかけて取り組んだのが、新球種“スライダー”の習得だった。キャンプ時はカットボールとも、ジャイロ回転のスライダーとも呼ばれたが、米公式データサイト『Baseball Savant』によると、その球種はスライダーに分類されている。
スプリットとフォークの“使い分け”が復調のカギに?
そして同サイトを改めて確認すると、驚くべき事実が——。今季、佐々木は開幕から800球以上を投じているが、球種は4つに分類されている。スライダーは“第3の球種”のはずだったが、いったい何が増えたのか。
『Baseball Savant』には、今季佐々木が投じた球種として、フォーシーム、スライダー、フォーク、スプリットの4つが記載されている。フォークとスプリットの境界線はやや曖昧だが、その球速とスピン量を見れば違いは明らか。スピン量が少なく鋭く落ちるのがフォークで、スピン量が多く、打者の手元で小さく落ちる球種がスプリットに分類されている。
佐々木の例でいえば、フォークの平均球速は85.1マイル(約136.9キロ)、スピン量は593回転/分。平均落差は40.7インチ(約103.4センチ)である。
一方で、スプリットは平均球速が90.0マイル(約144.8キロ)でちょうどフォーシームとフォークの間。スピン量は997回転/分、そして平均落差は32.5インチ(約82.6センチ)となっている。
佐々木はこの2つの球種をうまく使い分けることで、投球の幅を広げることに成功。特に復調気配を見せはじめた直近1か月ほどは、打者の手元で小さく落ちるスプリットを投げる頻度を増やしている。実際に前回の登板時もフォークは1球だけで、落ちる球のほとんどがスプリットだった。
スライダーが“最大の武器”に進化
そんな佐々木にとって、最も効果的な球種となっているのは、もう1つの球種である。それが第3の球種改め、第4の球種となったスライダーだ。今季のスライダーの投球割合は約20%を占めるが、その空振り率は他の3つの球種よりも高く、40.8%に達する。
投球配分の微修正で2連勝、さらなるステップアップに期待
ただ、開幕直後は高い頻度で投げていたスライダーだが、一時的にその頻度を大きく減らしていた。意図的だったかどうかは定かではないが、2試合前のエンゼルス戦から再びその割合を増やし、その後、2連勝を飾ったのは偶然ではないはずだ。この時期に微修正を施すモデルチェンジを図っていた可能性もある。昨季まで球種の少なさが懸念されていた佐々木。今季は4つの球種を操ることで、さらなるステップアップを果たそうとしている。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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