FIFAワールドカップ26を目前に控えたサッカー日本代表は、5月31日に国立競技場で壮行試合を行いアイスランドに1-0で勝利した。翌々日の6月2日に事前合宿地メキシコのモンテレイに、8日にアメリカのナッシュビルへと移り、ワールドカップの開幕を待つことになっている。

サッカー日本代表、「1-0勝利」は“新ルール”の恩恵が。アイ...の画像はこちら >>

本番前最後の試合は見どころ十分

アイスランド戦は壮行試合ということもあり、興行的な側面が強く試合自体の見どころは少ないと予想されていた。実際に吉田麻也の代表引退試合といった文脈も加味されてお祭りムードは色濃く出ていた。それでも、森保一監督は本大会でも想定しているシステムを試したりと、試合内容でも想像以上に見どころのある一戦となった。

まず、ひとつ目の注目ポイントとして、フォーメーションの試用が挙げられる。吉田が先発したとはいえ、布陣は見慣れた3-4-2-1で、前半14分に吉田に代わって伊藤洋輝が入り、ワールドカップを戦うメンバーがそろう本当の先発になった。前半いっぱいはこれまでどおりのシステムで、遠藤航ら負傷明けの選手らの実戦におけるコンディションを確認した。

後半に入り、菅原由勢と長友佑都らが投入された。フォーメーション上の変化はなかったものの、サイドにDFが本職の2人を置いて守備的意識を高めた形に変更した。とはいえ、菅原も長友もこれまでとは異なり、相手の最終ラインに影響を及ぼすほど高いポジショニングであったため、守備固めのためだけの戦術というわけではなさそうだ。

新ルールが適用され、数的優位な状況に

そして後半28分に後藤啓介、塩貝健人らを投入すると、先に出場していた小川航基と塩貝の2トップに変更。同じく先に出場していた瀬古歩夢を1ボランチにして、後藤と久保建英がシャドーのポジションに入る3-3-2-2へと形を変えた。連係・連動という点では完成度が低すぎるが、得点を取りにいく際に採用するシステムとして想定されていることだろう。

特に3つ目のシステムにおいてはまだまだで、これからの合宿で戦術とともにその精度を高めていくものと思われる。しかし、ベースの布陣をこの3つとして相手を考慮した戦術やそのときの状況に合わせて使い分けていくことが見えてきた。


その他に見どころとなったのは、今大会から採用される新ルールの影響だった。中継を見ていた人たちは実況や解説があったので気づいていると思われるが、日本が得点を挙げたときは相手のアイスランドは1人少ない状況だった。その数的優位な状況を生かして日本は得点し、試合に勝つことができたといっても過言ではないほど、新ルールが試合の結果に大きな影響を及ぼした。

各場面で「時間稼ぎ」ができなくなった

今大会ではいくつかの新ルールが採用されることになっているが、アイスランド戦で影響を及ぼしたのは交代時の規定になる。第4審判員が交代のボードを掲げてから退く選手は10秒以内にピッチの外へと出なければならなくなった。違反した場合は代わって入る選手が60秒以上経過してアウトオブプレーになるまで入れなくなる。GKの交代や主審の事前承認があった場合は例外と認められており、今回の試合であったように吉田麻也の交代時がまさに事前承認による例外パターンだった。

今回は日本に有利に働いたが、本大会では気をつけなければならない教訓として印象深いシーンとなった。

そもそも勝っているチームの時間稼ぎを防ぎ、実際にプレーしている時間(アクチュアル・プレーイング・タイム)を増やすことを目的として新設されたルールになる。その他にも、スローインやゴールキックを基本5秒以内に行わなければならず、行われなかった場合は相手ボールとなり、ゴールキックの場合は相手のコーナーキックになる。また、ゴールキーパーが手や腕で8秒以上ボールをコントロール下においた場合は、相手のコーナーキックになることになった。

これら時間制限のルールでは、いずれの場合も主審が秒数のカウントダウンを行っているので、ぜひ注目して見てほしい。

審判員によって差が生じる可能性が

近年、サッカーの競技規則を考え直す際にアクチュアル・プレーイング・タイムを増やしようという考えのもとで、新ルールがつくられている。2022年のカタール大会では交代やプレー再開時に浪費された時間を厳密にアディショナルタイムに加えていた。
それによってアクチュアル・プレーイング・タイムはその前のロシア大会より5分弱ほど増えたのだが、実際の試合時間は平均で5分半ほど伸びたという結果になっていた。そこからさらなる改善を求めたのが、今回採用された前述のルールになる。

アイスランド代表のグンラウグソン監督は試合後に「新しいルールは嫌い」とコメント。「どういう試合であっても観客は1人欠けた相手と戦っている試合は見たくないと思う」と、本質的に問いかけた。

そもそもアクチュアル・プレーイング・タイムを増やそうというのも手段のひとつであったはずなのだ。本質はアンフェアなプレーを減らして、競技自体を楽しんでもらおうというのが主目的であったはずだ。個人的にはプレー間の“間”もサッカーの一部であり、それも含めて楽しめればいいと考えているので、今回の改正には賛成しかねている。

しかも、「プレーを行うように合図し、その後目で見てわかるようにシグナルを送り開始する」と記載されていることからもわかるように、主審の主観による判定の余地が残されている。交代のルールも同様に曖昧さは残されていて、明文化されたように見せて、審判員によって差が生じる可能性がある状態となっている。

VAR導入時と同様に賛否両論さまざまな意見はあると思うが、採用されることは決定事項であるため、不利に働かないように十分な対策が必要である。実際に日本代表は事前に対策を講じており、アイスランド戦ではしっかりと実践できていた。それでも思わぬかたちで試合に影響を及ぼすことが発覚し、本大会でも注目すべきポイントとして露呈した。


気付けば開幕まであと少し

さて、今回は本大会でも見どころとなる日本代表のシステムと新ルールについてピックアップしたが、その他にもFIFAワールドカップには見どころがたくさんある。あっという間に6月となり、各チームの登録メンバーもすべて確定した。

日本代表のほかにも、6大会連続出場がかかるポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウド、アルゼンチン代表リオネル・メッシら希代のスターらの活躍も見どころといえる。また、出場国が増え試合数が増えたことで、単純に楽しめる試合が増えたと考えられる。挙げ出すとキリがないが、とにかく大会を楽しみたいし、楽しんでほしい。

<TEXT/川原宏樹 撮影/松岡健三郎>

【川原宏樹】
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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