2026年上半期のG1も残すところあと2つ。来週末の宝塚記念を前に行われるのが、春のマイル王を決める安田記念だ。

 今年のG1を改めて振り返ると、穴党には非常に厳しい平穏決着が目立つ。日本ダービーまでの10レースのうち、実に8レースで1番人気が勝利。他の2レースを勝ったのも、2番人気コスタノヴァ(フェブラリーS)と5番人気ジュウリョクピエロ(オークス)と、上位人気に推された実力馬だった。

1番人気が席巻する異例の春G1戦線

<安田記念>1番人気はガイアフォースかトロヴァトーレか…穴で...の画像はこちら >>
 また、1番人気に支持されて馬券圏外に沈んだのはオークスのスターアニスのみ。先週のダービーを制したロブチェンを含めて強い馬が強い勝ち方をしているのがこの春のG1の特徴である。

【8-0-1-1】……。ここまで圧倒的な成績を残されると、無条件で1番人気の馬を買っておけばよかったと思わざるを得ない。

 ただし、今年の安田記念は昨年の覇者ジャンタルマンタルや、アドマイヤズームが不在で、混沌とした状況に陥っている。問題は、どの馬が1番人気に推されるかだが、おそらくガイアフォースとトロヴァトーレのどちらかになりそう。

 ガイアフォースは4歳時から毎年安田記念に出走しており、過去3回は4着、4着、2着と堅実に走っている。7歳を迎えたが、メンバーレベルがやや落ち着いた今年は絶好のチャンスだろう。鞍上の横山武史騎手は3年以上もG1勝利から遠ざかっており、是が非でもモノにしたいはずだ。

ガイアフォースかトロヴァトーレか…注目の1番人気争い

 一方のトロヴァトーレは、実績ではガイアフォースに劣るが、G3を2連勝中と勢いに乗る。何より鞍上C.ルメール騎手の存在が心強い。
今年のG1でも3勝2着2回としっかり結果を残しており、単純に“ルメール騎手だから買い”と判断してもいいくらいだろう。

 ガイアフォースとトロヴァトーレのどちらが1番人気に支持されるかは、締め切り直前まで見極めたいところ。そこで思い出されるのが、同じような混戦模様で迎えた先月のNHKマイルCだ。

 同レースは上位6頭が単勝オッズ10倍未満と人気が拮抗。前売り段階ではダイヤモンドノットとエコロアルバが1番人気を争い、やや離れた3番人気がロデオドライブという情勢だった。

NHKマイルCで起きた“直前オッズ逆転劇”

 そして投票締め切りの数分前までは、ロデオドライブが3番人気だったのだが……。

 結果はご存じの通り、D.レーン騎手騎乗のロデオドライブが外差し馬場も味方につけて、ハナ差で勝利。1番人気によるG1連勝も止まったかと思われたが、なんとレース直前にロデオドライブが1番人気に浮上していた。

 実はこの急激なオッズの動きは、締め切り直前に大量の資金が流入したためとみられ、近年増加しているAIを活用した自動投票との関連を推測する声もある。これにはさまざまな受け止め方をしたファンもいただろう。

 今週の安田記念は締め切り直前のオッズを見て、過剰な動きがあれば、その馬は外せない……。そう思いつつも、穴馬探しは怠らない方針だ。

今年のG1で存在感を増すサンデーサイレンス「3×3」

 そこで注目したいのが、今年のG1戦線で存在感を放っている“ある血統”だ。

 今年上半期のG1戦線で、大きな話題を振りまいた2頭を選ぶとすれば、天皇賞・春でハナ差の2着に入ったヴェルテンベルクと、今村聖奈騎手とのコンビでオークスを制したジュウリョクピエロだろう。


 実はこの2頭には共通点がある。それが、どちらもサンデーサイレンスのクロス持ちであること。しかも「3×3」という、かなり濃いインブリードが施されている。

 血統ファンの間で「奇跡の血量」と呼ばれることもある「4×3」や「3×4」は枚挙にいとまがないが、より血の濃い「3×3」は危険な配合と呼ばれることもある。実はサンデーサイレンスの「3×3」を持つ馬は長らくJRAのG1を勝つことができなかった。

 そのジンクスを打破したのが、昨年の天皇賞・秋を制したマスカレードボール。そして今春はヴェルテンベルクがクロワデュノールにあと一歩に迫るとともに、ジュウリョクピエロが戴冠を果たした。

 先週のダービーはサンデーサイレンスの3×3のクロスを持つ馬はいなかったが、その直後に行われた目黒記念でファイアンクランツが優勝。同馬もまた、同配合の持ち主だった。

安田記念で狙うべき“サンデー3×3”の伏兵

 昨秋から猛威を振るうサンデーサイレンスの3×3。安田記念には2頭の特別登録があったが、そのうちの1頭、セフィロは残念ながら回避。しかし、もう1頭のセイウンハーデスが出走を予定している。


 ガイアフォースと同じ7歳馬のセイウンハーデスは、3歳春にプリンシパルSを勝利し、日本ダービーにも出走した実力の持ち主。4歳の夏に七夕賞を制し、これからというタイミングで屈腱炎を発症したが、1年以上のブランクを経て復帰すると、休み明け3戦目となった昨年のエプソムCを制覇した。

 その後は天皇賞・秋で0秒4差の7着、前走・大阪杯でも同じく0秒4差で5着と、G1で差のない競馬をしている。

 久々となるマイルの距離がどう出るかだが、管理する橋口慎介調教師は「G1を勝つならここしかないというぐらいの条件のレース」と色気十分。今年の安田記念は発走直前のオッズを見極めつつ、サンデーサイレンス「3×3」の勢いに乗るセイウンハーデスの激走に期待したい。

文/中川大河

【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。
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