マンジャロといえば、もともと2型糖尿病の薬でありながら、その”痩せる副作用”が注目され、ダイエットの常識を覆しつつある存在。自由診療で手軽に打てるクリニックが急増する一方、個人売買のトラブルや副作用への不安も噴き出し、賛否が分かれている。
遺伝子学に強い医師の岡博史氏は自らも打ち、5か月で13キロ落としたという。一方、実業家の金森重樹氏は薬を一切使わず、糖を断ち脂を大量に摂る「断糖高脂質食」で、2か月で約30キロ痩せた実績を持つ。アプローチの違う二人に、マンジャロとダイエットについてじっくり語り合ってもらった。

薬を使ったダイエットはアリかナシか

話題のダイエット薬「マンジャロ」はアリかナシか。13kg減の...の画像はこちら >>
――マンジャロはもともと糖尿病の薬で、その副作用で痩せることは広く知られていると思います。では、痩せる目的であえてこの薬を使うのはアリかナシか。まずは、その是非からお聞かせください。

岡:私は”アリ”だと思っています。というのも、自分でも打ってみたんです。数か月で13キロ落ちました。何がすごいって、我慢がいらない。食欲がスッと消えて、食べたくないから食べないだけ。軽い吐き気などはありましたが、体重が落ちたおかげで睡眠時無呼吸症も、健診の数値も、悪かった膝の痛みまで良くなった。正しく使えば、とてもいい薬だと思っています。


金森:僕はまた少し違う立場でしてね。使うなとは言いませんが、”そもそも要らない”と思っているんです。断食と断糖高脂質食でやれば、放っておいても体重は落ちていく。ただ、血糖が一気に動くのは体に負担ですし、ああいうGLP-1系の薬では、海外で視力への影響が報告された例もある。まれだとしても、そのリスクをわざわざ取らなくても、食で落とせるのに、というのが正直なところで。

岡:その「危険だ」という話こそ、中身を切り分けたいんです。「マンジャロで2人亡くなった」とよく言われますよね。ただ、報じられた範囲を見ると、いずれも高齢で重い糖尿病のある方で、本来は勧められない使い方だった。薬のせいと決めつけられる話ではありません。本当に問題なのは、個人輸入や、買った人が他人に転売するほう。マンジャロをダイエット目的で使えば、確かに全額自己負担の自由診療です。

 ただ、この同じ成分が、去年、肥満症の薬「ゼップバウンド」として保険で使えるようになった。
薬の位置づけ自体が、いま動いているんですよ。もっとも保険で使うには、高血圧や脂質異常症といった持病があって、半年きちんと食事と運動をしても効果が出なかった人、といった厳しい条件がつきますが。

金森:医師の診断のない闇流通が問題であって、薬そのものに罪はないと。そこは同意します。ただ、僕が言いたいのはその一歩手前で、薬に頼らずとも食で落とせますよ、という話なんです。

岡:ええ、金森さんのように自力でやり切れる方なら、それが一番いいと思います。でも、ダイエットって辛いじゃないですか。その辛い部分を薬が助けてくれるなら、使う手もある。僕らみたいな一般人からすると、断食はやっぱりハードルが高い。そういう人にとって、薬は立派な武器になるはずです。

話題のダイエット薬「マンジャロ」はアリかナシか。13kg減の医師と2か月で30kg痩せた実業家が語る“痩身の極意”
糖を断ち、脂を摂る「断糖高脂質」に着目した金森氏。わずか2か月で30㎏の減量に成功した

太りやすい体質は遺伝で決まるのか

――そもそも、太りやすさはどこまで生まれつきなんでしょうか。

岡:双子を使った研究では、太りやすさの4~7割は遺伝だとされています。たとえば”倹約遺伝子”を持つ人は、日本人のおよそ3人に1人。
飢餓に備えて脂肪をため込みやすい体質です。ただ、これは”運命”ではなく”傾向”の話でして。残りの半分ほどは環境、つまり食べ方で決まる。だから私は、遺伝子を調べて自分の型を知り、それに合ったやり方を選ぶのがいい、と考えています。

金森:どこまでいっても半分は食事なんですね。やっぱり、倹約遺伝子だろうが何だろうが、糖を断てば体は落ちていく。太る大きな原因は、インスリンの出しすぎなんです。パンやご飯で血糖を上げて、インスリンをだらだら出し続けるから、脂肪がたまるわけですから。

岡:それに、遺伝子を知るのは”諦めないため”でもあるんですよ。「どうせ太る運命だ」と投げてしまう人に、これは確率であって運命じゃない、と伝えてあげられる。

金森:諦めるな、というのは僕もまったく同じ気持ちですね。そのために自分を知るのはあってもいいプロセスだと思います。
また面白いのが、”食を変える”の効き方すら、実は生まれる前の環境で違ってくるかもしれないんです。有名なのが、第二次大戦下のオランダの飢餓。母親が飢えた状態でお腹にいた子どもは、大人になってから太りやすく、糖尿病にもなりやすかった。胎児のうちに「これは飢える世界だ」と体が刻み込む。だから、生まれつきだけでも、食べ方だけでもない。両方が絡んでいるかもしれないわけです。

太れるものなら、太ってみろ!金森式の神髄とは?

――金森さんの食事法、「断糖高脂質」とは具体的にどんなものですか。

金森:基本は1日1.5食。1食はタンパク質を摂っていい。残りの0.5食は、脂と飲み物でつなぐ。糖を断って脂をたっぷり摂ると、食欲を抑えるホルモンが出て、自然に食べたくなくなるんです。だから薬で食欲を消さなくても、勝手に収まる。
「ご飯を食べないと頭が働かない」とよく言いますが、あれも僕は違うと思っていて。糖がなくても、脂を燃やしてできるケトン体が、ちゃんと脳を動かしてくれます。

話題のダイエット薬「マンジャロ」はアリかナシか。13kg減の医師と2か月で30kg痩せた実業家が語る“痩身の極意”
金森さんの定番高脂質食、ブリスケを煮込んだスープ。「飲む点滴」と表現するほど、体に必要なものが濃縮されている
岡:インスリンを無駄に上げない、食べる回数を減らして内臓を休ませる。それはとても理に適っていると思います。

金森:しかも僕の場合、食事だけじゃないんです。いまバヌアツにいて、上半身は裸で暮らしている。わざと体を寒さに当てると、脂肪が燃えやすくなる。人類は歴史の9割以上を狩猟採集で生きてきたわけで、農耕で糖質を食べ出してから、体が追いつかなくなった。だから庭にアボカドが実れば、腹一杯それを食べる。旧石器時代の食べ方に、できるだけ戻すということなんですよ。

岡:徹底されていますね。ただ、脂を摂りすぎると、人によっては悪玉コレステロールがぐっと上がることがある。
数値が悪化する方には、医師という立場からは止めないといけなくはなってきますが(笑)。

金森:ただ、大きな流れは変わってきていますよ。今年1月、米保健省長官のRFKジュニアが「飽和脂肪との戦いは終わった」と言った。”糖を減らせ”から”脂を見直せ”へ、時代がようやく追いついてきた気がします。

岡:その転換は、私も興味深く見ています。ただ、あの方針でも、飽和脂肪の摂取上限そのものは据え置きなんですよ。「脂は好きなだけ」まで認められたわけではない。皆さんにはそこを勘違いしてほしくはないですよね。

* * *

 薬に頼るかどうかは、どこまでいっても自己判断であり、医師の処方なく使用するのはご法度だ。二人に共通するのは、どこまでいっても大切なのは食事だということ。しかし、食に関する“意志の強さ”も、もしかしたら遺伝によって個人差があるのかもしれない。

金森重樹氏 1970年生まれ。東京大学法学部卒。実業家。糖質を断ち脂質を大量に摂る食事法「断糖高脂質(金森式)」を提唱し、自ら2か月で約30キロ減量したと語る。現在はバヌアツ共和国在住。近著に『なぜヒトは脂質で痩せるのか』(扶桑社新書)

岡博史氏 1971年生まれ。慶應義塾大学医学部卒、医学博士。医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長。皮膚科・美容外科を経て、NIPT(新型出生前検査)など遺伝子検査に基づく医療を国内で展開する

【金森重樹】
行政書士・不動産投資顧問。東京大学法学部卒。25歳のときに1億2000万円の借金を負うも、マーケティング技術を活用して35歳で完済。その後、行政書士として脱サラし、現在は不動産、ホテル、福祉事業など年商100億円の企業グループのオーナーに。マイナスから超富裕層へと這い上がる。「徹底して理詰めで事に当たる」のがモットーで、長寿やダイエットに関心を持ち、わずか2か月で90kg→58kgの減量に成功。その理論の根幹を成す「断糖高脂質食」をはじめ、栄養学や人類学にまで領域を広め「脂で痩せる」という独自メソッドのブラッシュアップに余念がない 。著書は『なぜヒトは脂質で痩せるのか』(扶桑社新書)、『運動ゼロ空腹ゼロでもみるみる痩せる ガチ速”脂”ダイエット』、『ガチ速“脂”ダイエット 極上レシピ大全』『120歳まで元気に生きる 最強のサプリ&健康長寿術』。公式X:金森重樹@ダイエットonlineサロン@ShigekiKanamori
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