SNSで見かけた料理がおいしそうで、そのお店に行ってみた。そんな経験がある人も多いのではないでしょうか。
ただ、SNSは便利な一方で、トラブルの入り口にもなっています。消費者庁の消費者白書によると、SNSが関係する消費生活相談は、2025年に10万1045件。1日あたりにすると約280件で、5年間でおよそ2倍に増えています。飲食店にかぎった数ではありませんが、お店の人にとっても、SNSで紹介してもらえるのはありがたい反面、思わぬトラブルにつながることがあるのかもしれません。
今回ご紹介するのは、過去に大きな反響を呼んだ人気記事から、「インフルエンサー」を名乗る女性客に無料サービスを求められた、カフェ店主の話。
記事の後半では、お店がインフルエンサーに無料で料理を出して投稿を頼んだ場合に、どんなルールがあるのかも調べてみました。
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経営する飲食店にインフルエンサーが来店
出世したり、知名度が上がっていったりすると、まわりからチヤホヤされて変わってしまう人も少なくありません。
そしてときには非常識なことを当たり前だと思い込み、周囲に迷惑をかけてしまうこともあるようです。
※画像は生成AIによるイメージです
ある日、
藤高昇さん(仮名・41歳)が経営する店に、「私は、A子という名前で活動しているインフルエンサー」と名乗る女性がやってきた。ランチタイムが終わるギリギリの時間。入店した女性はぐるりと店内を見回し、ある提案をしたという。
「
彼女は『いい雰囲気のお店なので、ぜひ宣伝したい』と、嬉しい申し出をしてくれました。脱サラをして、夢だったカフェをはじめたばかりの頃。
宣伝してもらえるのはありがたいと思っていると、店内の黒板を見て『アレとアレと、アレ、おいしそうですね』と言うのです」
※画像は生成AIによるイメージです
藤高さんが「1人で食べるにしてはすごい量ですよ」と忠告しても、女性は「でも、写真撮りたいし」と回答。そこで「ありがとうございます」と言い、厨房にオーダー。インフルエンサーは、店内の様子や料理をバンバン撮影したのだとか。
料理やドリンクをたくさん注文
※画像は生成AIによるイメージです
「お客さんもいなかったので、ちょうどよかったです。料理も『おいしい、おいしい』と食べてくれ、店のコンセプトや料理の食材など、いろいろと興味を持って質問してくれました。
また、店内の雰囲気や飾ってある雑貨や小物類も褒めてくれ、印象良かったです」
※画像は生成AIによるイメージです
※画像は生成AIによるイメージです
しかも、女性が注文してくれた料理は単品ばかり5品、ドリンクが2品の合計7品。かなりの金額だった。また、食べるのに時間もかかり、2時間近く店内に滞在。ランチタイムのあとはいったん、店を閉めて休憩していたが、その日は休憩時間も返上で女性に付き合った。
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「
女性は食事が終わると、僕の妹が作ったハンドメイド雑貨を展示販売しているスペースへ歩み寄り、『カワイイ!』と言います。そして、『コレとコレと、コレが欲しい』といくつか手に持ってくれたので、とてもありがたいと思いました」
「あのぉ、お会計」と声をかけると…
※画像は生成AIによるイメージです
あんなにたくさん注文して、雑貨まで購入。そのうえ、お店を紹介してくれるなんて神様のようだと感じていた藤高さん。感謝の気持ちでいっぱいになりながら、いよいよ会計しようとしたときのことでした。
「僕がレジに立っても、彼女はまったく寄ってきません。
そして、『今日は、ありがとうございました。インスタに載せておきますね』と、なぜか帰ろうとしています。
『あのぉ、お会計……』と思わず声をかけると、『え、お会計って?』と、女性はキョトン」
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藤高さんは思わず「いやいや」と心の中でツッコミながら、「お食事代とハンドメイド雑貨の代金です。まだお支払いいただいていないので……」と、遠慮気味に伝えてみる。すると、「
えっ、お金いるの? 私、インフルエンサーなのに?」と態度が急変。
有償だと伝えると女性は逆ギレ
※画像は生成AIによるイメージです
「当たり前だろ!と言ってやりたい気持ちをグッと我慢し、『申し訳ございません。当店では無料提供や無料サービスなどはおこなっていません』と伝えると、彼女は数十秒の間を置き、
『じゃあ、いくらよ?』と怒りを露わにした超不機嫌な声と態度で聞いてきたのです」
食事代と雑貨代をレジに打ち込み伝えると、「あ、これはいらない」と、雑貨をレジ台に置き、そーっと藤高さんのほうに押しやったのだ。妹さんが仕事の合間を縫って、一生懸命作った雑貨。これにはさすがにイラついたという。
※画像は生成AIによるイメージです
「
それでも平静を装って、あらためて食事代だけを伝えたのですが、女性は現金をバシンと置いてこちらをニラみつけてきたのです。ゾクっとして、変なことを書かれたら削除依頼も必要かもと、『インスタ、僕も見たいのですが、どちらに載りますか?』と尋ねました」
インスタのフォロワーは1000人ちょっと
※画像は生成AIによるイメージです
面倒くさそうな態度でインスタの画面を見せてもらった藤高さんは、さらに衝撃を受ける。
女性はインフルエンサーを名乗っていたにもかかわらず、なんとフォロワーは1000人ちょっと。開いた口がふさがらなかったという。
「目に飛び込んできたフォロワー数が衝撃的すぎて、英文字のユーザー名を確認する間もなく、彼女には逃げるように帰られてしまいました。
それ以降もたまにSNSにアップしていいか聞かれますが、みんなきちんと料金を支払ってくれますし、感じのいい方ばかりです」
※画像は生成AIによるイメージです
その後も藤高さんが困るような投稿などはみつかっていないそうだが、しばらくは何を書かれるのか恐怖の日々が続いたとのこと。昇進したり知名度が上がったりしてチヤホヤされていると感じたときこそ、自分の言動について振り返る時間が必要かもしれない。
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<TEXT/夏川夏実>
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■無料で食べてもらって投稿を頼むと、“広告”になることも
※画像は生成AIによるイメージです
今回、無料にしてほしいと言い出したのは女性のほうで、藤高さんはきちんと料金を受け取っています。では反対に、お店のほうから「無料にするので、投稿してください」と頼んでいたら、どうなっていたのでしょうか。
消費者庁のQ&Aによると、お店がインフルエンサーを選んで料理などを無料で出し、投稿を頼んだ場合、やりとりの内容などによっては、その投稿が「お店の広告」として扱われることがあります。そうなると、投稿に「広告」や「PR」などと書いて、広告だとわかるようにしなければなりません。
広告なのに、広告だとわからないようにすること。これがいわゆる「ステルスマーケティング」です。何が問題なのかというと、「PR」の文字がなければ、見た人はふつうのお客さんの感想だと思ってしまうからです。
■ルールで問われるのは、投稿した人ではなくお店
※画像は生成AIによるイメージです
意外だったのは、このルールが誰に向けられているかです。同じQ&Aでは、規制の対象になるのは広告主、つまりお店のほうで、頼まれて投稿したインフルエンサーは基本的に対象外とされています。違反すると、お店が消費者庁から「措置命令」という行政処分を受けることがあります。
インフルエンサーに来てもらえるのは、お店にとってうれしいことのはずです。
それなのに、ルールで問われるのはお店のほうだというのは、少し驚きました。
藤高さんのお店には、その後もSNSに載せたいというお客さんが来ているそうです。みんなきちんと料金を払ってくれて、感じのいい人ばかりだといいます。
フォロワーが1000人でも10万人でも、料理を楽しんで、きちんとお会計をして帰る。お店の人にとってうれしいのは、案外そんなふつうのお客さんなのかもしれません。
※画像は生成AIによるイメージです
<再構成/日刊SPA!編集部>
【夏川夏実】
ワクワクを求めて全国徘徊中。幽霊と宇宙人の存在に怯えながらも、都市伝説には興味津々。さまざまな分野を取材したいと考え、常にネタを探し続けるフリーライター。Xアカウント:@natukawanatumi5