【Bプレミア】1カ月強で見えてきたオンザコートフリーの実像と...の画像はこちら >>

Bリーグ「オンザコートフリー」がもたらす影響~後編~

今シーズンからBリーグのトップカテゴリー「Bプレミア」で採用された「オンザコートフリー」。外国出身選手(帰化選手含む)4名が同時にコートに立てることから「オン4」とも略されるそのルールは、日本人選手の出場機会にも影響を及ぼしているが、なかでもサイズの小さいガードポジションは、昨季までより大幅に出場時間を減らす選手も目立つ。

一方で、ルール自体がまだ適用されたばかりで、早計にルールの是非を判断することは難しいが、開幕から1カ月強が経過した時点で見えてきたものに、現場のヘッドコーチや選手の声を通して焦点を当ててみる。
*文中の数字等はすべて10月29日現在。

前編:わずか1人、されど1人ーー「オンザコートフリー」 チーム戦術と日本人選手に与える影響とは

【サイズの小さい日本人ガード陣への影響】

 前編で触れた佐藤卓磨(横浜ビー・コルセアーズ)のように、オンザコートフリーのBプレミアでプレーすることで成長できると考えられる選手がすべてかといえば、そうではないだろう。だが、プロである以上、不満めいた気持ちや苦渋の心境を表立って口にする選手はいないはずだ。

 ただ、ディフェンスで不利となるサイズの小さな日本人ガード陣が総じて出場時間を減らしているという現実は、外野からすれば残酷にすら映る。

 例えば川崎ブレイブサンダースのポイントガード(PG)、篠山竜青(178cm)は昨シーズンの1試合平均19分02秒から今シーズンは同6分37秒と大きく出場時間を減らしている。篠山の場合は38歳という年齢もあるためオンザコートフリーだけの影響とは言いきれないものの、同僚の若手PG米須玲音(177cm)も2025-26シーズンの19分56秒から約6分半も出場時間を少なくしている。

 アルバルク東京(以下、A東京)のPG中村浩陸(177cm)や群馬クレインサンダーズのシューティングガード、辻直人(185cm)も同様だ。こうした選手たちもサイズにより、ディフェンス面で穴となってしまうことが懸念されたのではないか。

 もっとも、オンザコートフリーが採用されたBプレミアでは、どのような選手の組み合わせがよいのか、各チームのコーチたちにとって、まだ「手探り」の状態にあったことも、出番の少なさの一因になっていたと考えられる。現に中村や米須は出場場面を増やしており、米須が先発として20分以上出る試合も増えてきた。

 米須はスイッチディフェンスを多用するチームが増えるなかで「自分たちのチームはそこに対して全然対策ができていないというか、ボールが止まり1対1となってしまってタフショットで終える展開が続いていた」と話した。だが、そこから試合を重ねることで徐々に整理がなされ、彼自身に関しても出場時間の「回復」につながったものと推察される。

 バスケットボール選手をスタッツ上で評価する際にしばしば用いられる「プラス・マイナス」は、選手がコートにいる間のチームの得失点差を示すものだ。前編で琉球の佐土原遼らが指摘したようにディフェンスができることが出場時間に影響する一方、サイズのないガード陣はオフェンス面での貢献で不利を埋め、「プラス」を多くしようとする意識がある様子だ。

【オン4を常時用いることは現実的ではない】

 A東京は開幕の琉球戦から"オン4"を惜しげもなく使ってきた。彼らに対峙した松脇圭志はその景色を「今まであまり経験したことのないような大きさ」だったと振り返る。

 しかし、激しいディフェンスとアップテンポなゲームを志向するチームが増えるなか、長いシーズンを戦い抜くには選手層の厚さが問われる。

 A東京のライアン・リッチマンヘッドコーチは開幕前、「選手のローテーションで最高の仕事をしたチームが、最も大きな成功を収める」とし、オン4を常時用いることは現実的ではないと語っていた。そのうえで、日本人選手たちを信じて送り出すことと、誰がコートにいてもチームが機能するようにすることが肝要だとつけ加えた。

 A東京では平岩玄がにわかに注目されている。昨シーズンまでは外国籍ビッグマンの控えでベンチ時間が長かった身長201cmのCは、今シーズンはほぼ倍の11分35秒の出場時間(1試合平均)を獲得している。

 雌伏の時を経て光を浴びる時間が長くなったが、平岩は現状について、日本人ビッグマンに好機が巡ってきたとは捉えていない。オンザコートフリーにより外国出身選手が必ずしもビッグマンに限られなくなり、ポジションにかかわらず日本人選手は厳しい競争を勝ち抜いてようやく出番を得られるという見方を示している。

「日本人が平等(の立場)になったという捉え方もできるかなと思います」

 平岩がメディアに対してオンザコートフリーについて語ったのは9月下旬、琉球との開幕2連戦を終えたあとだった。

「ビッグマンだけじゃなく、レベルが高くてみんな同じようにコートに立てないという現実も感じています。

日本人ビッグマンだからといってプレータイムが増えているとかそういうことはなく、みんな平等に競争しているのかなと思っています」

 まだ各チームが10試合前後を消化した時点にすぎない今シーズンの順位表を眺めると、A東京、仙台89ERS、広島ドラゴンフライズといった"オン4"を積極的に使うチームが上位に来ている。あるいはこのルールを見越した編成がうまくいっているチームが好調であるように見受けられる。

【厳しくも日本人のレベルアップにつなげる意図】

 川崎のベテラン、アレックス・カークは日本人選手の出場機会で明暗が分かれていることについて「非常に難しいところ」と話した。2016-17シーズンから長く日本でプレーし、2024年に帰化した彼の言葉には、同情的な響きもある。

 もっともカーク自身はオンザコートフリー採用に好意的で、導入直後は若手や中レベルの選手の出場が限られても、発奮することで日本人選手全体の質は向上するはずだと語る。

「結局のところ、これは誰もが従わねばならないルールなんだよね。厳しい状況に置かれる選手がいるのはわかるけど、僕は日本のバスケットボールの将来を気にかけていて、若手選手の成長を見たいと思っている。Bプレミアが始まってすでに向上を見せ、出場時間を大幅に増やしている選手もいる。このルールの採用によって目指すところは日本のバスケットボールやBリーグの発展であり、まだ足を踏み入れたことのないレベルに到達することなのだから」

 年々レベルを上げるBリーグは競争力が高まってきたが、Bプレミアではこれまで以上に順位が変動する可能性を秘めている。オンザコートフリーの採用で、外国出身選手が1人でも故障すればチーム力に大きな影響が出るからだ(インジュアリーリスト入りすれば最低30日間は再登録できない)。

 穴埋めのために新たな選手を獲得するにも、ビザの有無なども含めて容易ではない。千葉ジェッツやアルティーリ千葉、大阪エヴェッサは複数の外国出身選手に故障が発生し(大阪は日本人選手にも多数のケガ人)、苦戦を強いられているのも不思議ではない。

 いずれにせよ、オンザコートフリーの採用で周囲からは賛否を含めたさまざまな反応が見られる。かつて日本のトップリーグでは日本人選手の出場機会を増やすために外国籍選手の数を1にしたり、クォーターごとに変動させるなどしてきた。

 しかし時代は変化した。NBAに次ぐリーグを目指すBリーグは、日本人のレベルアップを促すために外国出身選手の数を増やすという、あえて厳しい道を敷いた。

 この効果や成果がどう示されるか、開幕からの1カ月と少しという期間は標本の大きさとしてはあまりに小さい。

 オンザコートフリーが日本のバスケットボール界にとっての毒となるのか、あるいは発展を促す薬となるのか。それが見えてくるのは、まだもう少し先だろう。

永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka

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